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怪奇短編集 ―Mysterious Worlds―  作者: 牧田紗矢乃


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  ☆  第23話 日めくり

 日めくりカレンダーをめくる。何気ない日常のひとコマだが、キャラクターや格言などのついたものであれば次の日が待ち遠しくなるだろう。

 けれども、私は一年で最初に日めくりをめくる、一月二日に「あえて」めくり忘れる。あの時に起きた奇跡が、再び訪れることを待ち望んで――。




 二月の半ばに差しかかった頃だった。私は例年の如く、日めくりカレンダーをめくり忘れて出社した。

 その日一日は妙な感覚につきまとわれた。周囲の会話や出来事に覚えがある気がするのだ。そこで気付く。雑談の内容も、上司の小言も、窓の外のサイレンも、昨日とそっくりそのままだ。


 まるでもう一度同じ日が訪れたようだ、と携帯を開く。ディスプレイに表示された日にちは、昨日のものだった。

 最初は携帯が故障したのだと思った。会話の符合も、きっと偶然だろう。

 ところが。新聞を見ても、テレビをつけても昨日と同じ。私は釈然としないまま一日を終えた。


 その後も何度かタイムスリップをした。それが決まってカレンダーをめくり忘れた時だったので、カレンダーが原因らしいとわかった。

 それ以来、私は会議などの嫌な日を飛ばし、楽しかった日を何度も満喫した。




 しかし、一度めくってしまったカレンダーは二度と戻らない。ついにカレンダーはクリスマスを終え、年の瀬の物悲しい薄さになってしまった。

 もしかしたら、と同じメーカーの商品を探した。けれど、類似品こそあれど同じものは見つからなかった。類似品では奇跡は起きない。


 あれから十余年。毎年数十単位で日めくりカレンダーを買い込んでいる。それでも、私はまだ奇跡に出会えていない――。

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