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 ☆ ☆ 第21話 電柱

「別になんてことない交差点なんだけどね、すごくよく事故が起こるの。その辺に住んでる人は『魔の交差点』なんて呼んじゃってるらしいわ」


 ある日の雨の夜のドライブ中、彼女が突然語り始めた。ビビリの僕が震えるのを見て彼女は笑うのだ。

 それが気に食わなかったので、虚勢を張ってふうん、と素っ気ない相槌を打った。

 彼女は少し驚いたような様子を見せたけれど、意地悪く微笑んで再び口を開く。


「どうもね、その交差点に立ってる電柱が怪しいらしいの。その電柱によく車がぶつかるらしいのよねぇ……。で、不審に思った地元の人達がその土地の歴史とかを調べたらね、出てきたのよ。黒い歴史が!」

「へぇ?」


 平静を装ってみたが、背筋には冷たいものが走り心臓はバクバクと暴れていた。彼女はつまらなそうに、毒々しい位に赤い唇を尖らせる。


「それがね、人柱だったのよ。人柱! しかも、それが最近作られたものらしくって。もしかしたら、あの電柱がそうだったりして。ほら、花が供えてあるわ……」


 キキーッ。


 僕は思わずブレーキを強く踏んだ。

 車体が大きく揺れる。雨で濡れた路面で車がスピンしたのかもしれない。僕はハンドルに埋めた顔を上げることができなかった。

 彼女の悲鳴が聞こえ、凄まじい衝撃が僕らを襲った。




 彼女は即死だった。

 僕の方は、視力は完全に失われてしまったが辛うじて一命を取り止めたらしい。

 光を失った僕の網膜には、事故の直前に見えた電柱から伸びる手が鮮明に焼きついている。

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