表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/100

  ☆  第19話 長靴

 真っ赤な傘に、お揃いの長靴。得意げに傘を回して、本人も回る。

 ここは室内だし、外は雨粒一つ落ちていない。むしろ、快晴と言ってもいい位の天気だ。


 どうやら新しい傘と長靴は彼女のお気に召したらしい。

 今すぐにでも家を飛び出さんばかりの彼女に、雨が降るまで待つように言って傘を畳み、長靴を脱がせた。彼女はそれが気に食わなかったのか、大声で泣き叫び始めた。


「ママが泣き虫さんが嫌いなのを知ってて泣いてるのかな? 泣き虫さんには傘も長靴も当たらないのよ?」


 私が悪戯っぽく言うと、彼女はぴたりと泣き止んだ。


「あたち、なきむちじゃないもん!」


 彼女は舌っ足らずに言うと、慌てて涙を拭い、笑顔を見せた。




 待ちに待った雨の日、彼女は私の前をどんどん走って行った。車が来たら危ないよ、と注意したのに、彼女は車道に飛び出してしまった。


 クラクションとしばしの沈黙。


 私はどうすることもできなかった。




 泣き虫は嫌いだと言ったはずの私は、彼女よりも泣き虫になっていた。

 ちょっとしたことで彼女――愛しい娘のことを思い出してしまう。




 あの忌まわしい事故が起きた交差点には、雨の日になると赤い傘と赤い長靴の女の子の幽霊が出るという噂が囁かれはじめた。

 それから、雨の日は娘を探して交差点に通うようになった。


 しかし、霊感のない私に、娘はまだ姿を見せてくれない……――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
応援よろしくお願いします。小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ