☆ 第12話 ロックンロール
大音量で鳴り響くギターと割れんばかりの歓声。じりじりと焼きつけるライトに照らされ、喉を張り裂く勢いでシャウトする。
バンド活動を始めて早十年間。ついにドームでライブという目標を達成することができた。しかも、チケットは全席完売。
俺たちの歌を聞くためにこんなにたくさんの人達が集まってくれたのだと思うと、今まで細々と活動を続けてきた甲斐があったと思える。
いつにも増して激しいパフォーマンスに、会場の熱気が呼応する。もっと強く、もっと激しく。
終わりの見えない狂乱に幸福を感じていた。
――ああ……この時間が永遠に続けばいいのに!
“その願い、叶えてやろうぞ”
どこからともなく声が聞こえて来た。
声の主を求め辺りを見回すが、仲間は演奏を続け、観客たちも飛び跳ねたり叫んだりしている。
異変に気付いたのは、そろそろライブも終わりに近付いた頃だった。今日は演る予定のなかった曲の演奏をメンバーが始めたのだ。
止めようとしてメンバーに声をかけるが返事かない。見れば、メンバー全員の目が虚ろになっている。それは観客たちも同様であった。
そこで、はたと気付く。
俺は何を願ったろう?
叶った願いはなんだったろう、と……。




