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第5話 火よ

マーク・シュレディンガー

‥‥闘技大会の選手。大気を振動させる謎の超能力を手にする。

ビル・シュレディンガー

‥‥アニリン王立シーラン大学大学院社会学研究科博士課程後期二年。マークの弟。

セシリー・ハンセン

‥‥闘技大会の選手。チーム『カミシグレ』。

ルシア・グレイン

‥‥闘技大会の選手。チーム『カミシグレ』。

ローラ・フィールズ

‥‥闘技大会の選手。刃の超能力者。

マーフィ・ダニトリー

‥‥闘技大会の選手。怪力族。

ダニエル・バール

‥‥闘技大会の選手。チーム『ネオキシス』。アニリン王立ムーア大学大学院理学研究科博士課程前期一年。

ラルフ・バーノン

‥‥闘技大会の選手。チーム『ネオキシス』。

 マーフィとローラが寮へと戻ってくると、闘技大会の選手たちが彼女らを温かく出迎えてくれた。

「マーフィすごかったね!なんか吹っ切れた感じがあってめっちゃ良かった!あの結晶みたいなのを出すやつ私にも教えて!!」

 セシリーは相変わらず興奮気味にマーフィに話しかけた。完全にマーフィの強さの秘密に釘付けとなっていた。対してマーフィは、他人にここまで褒められたことがなかったため、どうやって返答すればいいかわからず、ぎこちない笑顔を浮かべていた。

 マーフィが闘技大会の人間と打ち解けている様子を見守っていたビルに、後ろからおびただしい空気をまとったローラが話しかけてきた。

「ちょっとビル、あんたさっきのどういうつもりよ...?」

 ローラの言う”さっきの”とは、先ほどの試合でローラが自身の体に刃を纏ってビルの接近を防ごうとした際に、ビルがそれに構わずタックルを仕掛けてきたことを指しているんだろうと、さすがのビルも一瞬で理解していた。

「い...いや... ちょ...ちょっと無茶しすぎたっていうか...」

 あまりにわざとらしい言いぶりに、ローラがすかさず追撃をかました。

「ちょっとどころじゃないでしょ!!たまたま無事だっただけで、失明とかしたらどうするつもりだったの!!」

 ローラも、まさかビルが突っ込んでくるとは思っていなかったため、自身の体に纏わせた刃を引っ込めるのが間に合わず、ビルに大けがを負わせてしまったんじゃないかと内心穏やかではなかったのだ。幸い、ビルは手のひらと顔に軽い切り傷を負っただけで済んでいたものの、当たり所によってはローラが懸念する通り重傷を負っていた可能性もあったのだ。闘技大会にかける思いが強いのか、はたまたビルの感性がどこか欠如しているのか。いずれにせよ、自分の体は大切にしなさいと、まるでお母さんかのような口調でビルを延々と説教していた。

 

「マークも随分能力の使い方がうまくなったね。このままいくと本当に優勝しちゃうかもね」

 ビルが隣で延々と怒られている傍らで、マークとルシアが話していた。

「ほ、ほんとか!?」

 マークはあまり信じられない様子であったが、ルシアも本気で言っているようだった。

「おいルシア。あんま適当なことを言ってこいつを調子に乗らせるなよ」

 マークとルシアの会話に割り込むような形で、後ろからダニエルが話しかけてきた。ダニエルも、初参加の人間が決勝戦に進むことになって、内心穏やかではない様子だった。

「私は本気で考えてるのよ。ダニエルも実はそう思ってるんじゃない?」

「馬鹿なこと言うな。ようやくマシになったってレベルなだけだ。マトモな相手とぶつかったらすぐアウトになっちまうよ」

 ダニエルの言うことも一理あった。超能力の扱い方がようやくわかってきただけで、闘技大会屈指の実力者であるセシリーらと比べれば全然使いこなせていない。今回もたまたま初出場のマーフィ・ローラ組と当たったから運よく決勝に進めただけで、組み合わせが違えば初戦で負けている可能性すらあった。だからこそ、ダニエルの主張を覆すためには、彼らと直接対決し、勝利するほかないのだ。


「いや~僕は今回『マーク&ビル』チームが優勝すると予想してますよ~」

 ダニエルの隣に全く知らん人が座っていた。あたかも彼らの知り合いですよ、みたいな雰囲気で話し出したため、この場にいる全員が困惑していた。すると食堂の入り口のほうから、大慌てで走ってくる金髪ボブの女性がやってきた。

「こらっジーモン!ダメでしょ勝手に入ってきちゃ!!」

 女性はジーモンという男の世話係のようであった。ジーモンの見た目はまだ十代前半といった若さで、対する世話係の女性のほうは三十代前半程度の年齢に見えた。この摩訶不思議な男女のペアに困惑していたが、女性の着る制服を見てセシリーが興奮気味に話し始めた。

「あっ!!もしかして、海軍の方ですか!?」

「ああ、そうだよ!みんなごめんね、この子闘技大会ってなるとすぐ周りが見えなくなってどっか行っちゃうんだよね」

 どうやら男女二人はアニリン王国の海軍本部から派遣されてきた兵士のようだった。闘技大会が始まって以来、多くの超能力者が集まったことをかぎつけて、海軍本部の人間が数名で視察に来ることが恒例行事となっていたらしい。ジーモンの世話係に任命されているこの女性はエリーという名の少尉とのことだった。

「ほかにも何人か視察に来てるから、もしよければこの食堂に案内してもいい?」

「はい!!ぜひお願いします!!」

 セシリーはほかの人間に許可を仰ぐまでもなく、即座に快諾した。


 食堂へ入ってきた海軍本部の人間は、エリーとジーモンを含めて6名であった。

「私はゲラルト・ガウスだ。海軍本部で大将を務めている。以後よろしく頼むよ」

 最初に紹介したのは、190cm近くはある体格の大きい男であった。工務店で力仕事一筋で生きてきたマークにとって、彼の役職の重さを全く理解していなかったが、横にいるセシリーの顔を見て、その重大さが何となく感じられた。

 そもそもアニリン王国には、海軍に加えて陸軍、空軍で構成されている。各軍で50以上の基地が配置されているが、その中でも本部基地は選りすぐりの兵士が所属しているためトップクラスの力を有している。さらにその中で最上位に近い役職である大将に君臨しているため、ガウスの実力は計り知れないものがあった。

 ガウスの横に立っていた七三分けの髪形をした男がダニエルと目があった。

「おお、ダニエルじゃないか。そういえば闘技大会に出ているって言ってたな」

 あまりに不可解な状況に、周囲が困惑していた。なぜダニエルが海軍本部の人と知り合いなんだ?と。ダニエルも知り合って日が浅そうな様子ではなく、まるで職場の上司に挨拶をするかのごとき落ち着きようであった。ダニエルに声をかけた男は、ロバート・カンバーという名の中将であった。つまり、ガウスの次に位の高い役職についている人間である。

「ダニエル...あんたどういうこと!?海軍中将の方と知り合いだなんて...」

 ルシアも以前から海軍本部の視察を受けて何人かと知り合いになっていたものの、中将などの高位な役職の人間と会うのは初めてであったため、その中将と既に顔見知り状態となっていたダニエルを慌てて問い詰めていた。

「い...いや...実はうちの研究室と海軍が共同研究で超能力の研究してたから...」

 どうやら海軍本部にもいくらか超能力者が在籍していることから、その性質や利用方法を明らかにするために、以前から複数の研究室で海兵を貸し出して実験を行っていたらしい。今回行った視察もその一環であり、超能力者が一体どのような能力を持っているのか、そしてその超能力をどうやって戦闘に利用しているのかを見るのが目的のようだった。

「いったいどうしたんですか?大将や中将ともあろうお方がこんな闘技大会を視察するなんて...」

 ダニエルは職位の高い人間が闘技大会に集まっていることに疑問を呈していた。それもそのはずであり、単純に闘技大会の視察をしたいのであれば末端の兵士を派遣して調査報告書を書かせれば済むことだからだ。それをせずに、本人が訪れるということは、何か裏があるんじゃないかと勘繰っているというわけである。

「単純に超能力者がどんなふうに過ごしているのか気になっただけさ。あとは試合を見て、みんなが超能力をどうやって使っているのかを見ておきたくてね...」

 ガウスの回答は当り障りのないものであった。たしかに理屈は理解できるものの、それをわざわざ大将や中将がする必要はないだろうと言いたかったが、あまり質問しすぎるのもよくないと思ったのか、ダニエルは言葉を飲み込んだ。

「ダニエル君はどうだい?噂だけど闘技大会ではかなり強いと聞いたんだけれども」

 カンバーが何気ない疑問をルシアにふっかけた。普段お世話になっている共同研究先のお偉いさんがダニエルの実力を推し量ろうとしており、思わず顔に緊張が走っていた。変なこと言うんじゃねぇぞとルシアに目で訴えかけていたが、そんな心配をする必要もなくルシアが正直に答えてくれた。

「かなり強いと思いますよ。それに真剣に闘技大会に取り組んでいます」

「お~まさに研究室で見るダニエルそのままだなぁ。ここならもっとはっちゃけたダニエルが見れると思ったんだけどなぁ」

 カンバーの軽口にダニエルが「余計なお世話ですよ」と突っ込みを入れていた。その見た目とは裏腹に、カンバーの物腰は柔らかく闘技大会の選手たちとフランクに接していた。


 海兵らと会話している傍らで、食堂から退出しようとするジンの姿が見えた。マークが「もう行ってしまうんですか」と声をかけたところ、

「俺はもういい。皆で好きにやっていてくれ」

 とそっけない返事を返されて、すぐにいなくなってしまった。

「...海軍にあんま興味なかったのかな...?」

 苦笑いを浮かべていたのは、大佐を務めるミクという名の女性だった。見た目は若く、二十代後半から三十代前半に見えた。

「ああ、彼は昔アヅチ帝国の空軍にいたらしいですよ。なんかトラウマで空軍やめたみたいですし、海軍の人間が苦手なんじゃないですかぁ?」

 ミクの疑問に答えたのは、椅子に座って頬杖をついているオーウェンであった。ジンが退役軍人であったという事実は、セシリーら古参の人間も初めて知ったようだった。アヅチ帝国は極東に位置する国であり、アニリン王国とは安全保障上の同盟国という関係である。そのためアニリン王国の軍とは頻繁に軍事演習を行っており、ひょっとしたら視察に訪れた海兵の中に知り合いがいて気まずかったのではないかと勘繰っていた。

「あんたは本当に興味なさそうよね」

 一方でオーウェンはマークたちのように海兵たちと話すわけでもなく、ジンのように退出するわけでもなくただ一人遠くから彼らの会話を眺めていただけだったため、ルシアが半ば呆れ気味にオーウェンに向かって声をかけた。

「いやぁ?俺はここでちゃんと聞いてるぜぇ?」

 ガウスとオーウェンの目が合うのが見えた。海軍本部で最上位の役職の人間に対して、オーウェンはまるで冷笑しているかのような目線を向けていた。失礼じゃないのか?とマークは不安に思っていたものの、ガウスもスルーしていたため特に問題ではないのだろうと解釈した。

「それで、ダニエルが出るのは次の試合かな?」

 カンバーは早くダニエルの出場する試合が見たいようであった。期待しているよ、とダニエルに声をかけたものの、その重すぎるプレッシャーにダニエルはため息をついていた。


 もう一つの山の準決勝が開始された。対戦カードは、最高火力を誇るダニエル・ラルフによる『ネオキシス』チームと、技巧派ペア、セシリー・ルシアによる『カミシグレ』チームであった。視察にやってきていた海兵たちは、最前列の観客席に陣取っていた。ガウスがどっしりと座る横で、カンバーが選手名簿を眺めて各選手の持つ超能力の特徴及び使用方法の確認を行おうとしていた。

「俺は手出ししないほうが良いかな?」

 ダニエルのペアであるラルフが、海軍本部の人が見に来ている試合で華を持たせるべく対戦相手二人をダニエル一人に譲ろうとしていた。ダニエルにとってはいらぬ気遣いである。しかしここで強敵セシリー・ルシアを一人で倒せば、ガウスやカンバーといった大物に自身の名を売るいい機会になるため、断るにも断れない様子であった。

 試合開始とともに、ダニエルがフィールド中央へ歩き始めた。それと同時に、ダニエルの右手から手のひらサイズの炎が出るのが見えた。小さな炎は瞬く間に巨大な炎へと成長し、その圧倒的な熱量は十メートル以上離れたマークたちの座る観客席へと簡単に伝わってくるのが感じられた。ダニエルは、『火の超能力者』であったのである。

 右手に抱えた巨大な炎は、ダニエルが腕を大きく振りかぶって前方へ投げたことで大爆発を引き起こした。その熱量により会場全体の空気が一気に膨張し、観客席に向かって高温の熱風が押し寄せてきた。あまりの熱さにエリーは思わず体を強張らせたが、隣に座るカンバーとガウスは余裕そうな表情であった。

「なかなかの威力だな。ダニエルのやつめ」

 海兵として十年以上生き抜いてきたカンバーでさえ、ダニエルの放った火球の威力を認めざるを得なかったようだった。

 一方のマークは、規格外の威力に驚くとともに、こんなものを正面から食らってセシリーとルシアは大丈夫なのかと心配していた。火球の着火とともにフィールドに燃え広がっていた炎のカーテンが引くと、そこには大きな水の塊が浮かんでいた。よく見ると、その水の中には人間が二人収まっていた。セシリーとルシアであった。二人はダニエルの放った火球から完全に身を隠しており、無傷の状態で生還していたのだった。セシリーは余裕そうな表情であったが、その後ろのルシアは水を飲んでしまったようで若干むせているようだった。この水の塊を作り出したのは、セシリーであった。セシリーは、水を生み出し、かつ水の中においても呼吸をすることができる『水の超能力者』であった。

 ダニエルは一撃で彼女らをフィールド外へ突き落すことができず焦っているようだった。再び炎を放とうとしたところで、セシリーが手のひらサイズの大きな水滴を生み出し、ダニエルに向けて高速に撃ち出した。大振りのモーションをしていたダニエルは水滴を避けることができず直撃してしまった。すかさずダニエルは扇上に炎を放つものの、セシリーが水のカーテンを作り出したことでほとんど効果をなさなかった。

「ダニエルは威力一辺倒に見えるな。その威力自体は申し分ないんだが...。相性が悪い相手に対する展開が単調になってしまっているな。対してセシリーは威力こそダニエルに劣るものの、技量でその分を補っている。水の超能力をうまく扱っているな」

 ガウスがダニエルとセシリーの戦い方を分析していた。いくらダニエルが闘技大会で屈指の実力だからといっても、完全無欠の超人というわけではないのだ。特にダニエルは、火の超能力の凄まじい威力に頼っている節があった。闘技大会最初期の試合ではそれで対戦相手をなぎ倒してきたものの、段々と相手も対策を練り始めてきたため、一筋縄ではいかなくなっているのが現状である。そう考えると、超能力の全容が未だ明らかとなっていないマークたちにもまだ勝機があるのかもしれないため、ジーモンは今回の闘技大会の優勝チームを『マーク&ビル』に推していたというわけである。

 セシリーに押され始めていたダニエルであったが、一気に攻勢へ転じ始めた。まず初めに、ダニエルは目の前に数本の炎の槍を生み出し、セシリーに向けて間髪入れず放った。対するセシリーは水の盾によりかろうじて防いだものの、その熱量により水の盾は一気に蒸発してしまい、次なる攻撃に対する防御手段を失ってしまった。その隙をダニエルは見逃さず、炎を纏わせた右足で蹴りを入れて、その爆発力をもってしてセシリーを場外へと突き落としたのだった。

「火力でゴリ押したかぁ。いいねぇ。若さって感じがするな」

 カンバーはダニエルの、押してダメならさらに押せばいいじゃないという、脳筋戦法が気に入った様子であった。


 突き落とされたセシリーは、自分で泳いでプールサイドへと上がっていた。試合から脱落したセシリーを、二人の係員が迎えていた。出迎えた係員はオベイとトラビーの二人であった。

「セシリーさん、外傷はありませんか?」

 オベイがセシリーの状態を確認していた。セシリーは、炎の着弾時に水膜でガードしていたため、特に火傷を負うことなく生還していた。セシリーは超能力の特性上、フィールドから脱落しても勝手に泳いでプールサイドに上がってくるが、泳げない人間であったり気を失った状態でフィールドに落ちた場合には、迅速に救助するためにオベイとトラビーが常に準備しているのだ。闘技大会において超能力者というのは試合内容を盛り上げる貴重な人材であるため、大怪我によって欠かすことのないように細心の注意を払う必要がある。その役割を、オベイとトラビーが担っているというわけである。


 その規格外の戦いに、マークは茫然としていた。自分たちが今までやってきた試合と、明らかにレベルが違うのがヒシヒシと伝わってきたのである。今戦っている2チームのうちどちらかに勝たなければ、優勝することができないのだが、勝てるイメージが全くつかめないでいた。

 構図的には二人残っているダニエル・ラルフに対して、炎に対する防御手段を持たないルシアは圧倒的に不利な状況であった。しかし、ダニエルは険しい表情を浮かべていた。

 ルシアがフィールドから完全に姿を消したのである。もしかしたら、先ほどのセシリーとルシアとの戦いに巻き込まれて場外に落ちてしまったんじゃないかと考えたものの、ダニエルの様子を見る限りそうではないようだった。ダニエルが周囲を見渡していたところに、突如背中に衝撃が走るのが分かった。まるで、見えないなにかに蹴りを入れられたかのような感覚であった。間髪入れずに今度は横っ腹が蹴られたような感覚に陥った。その様子を見ていたマークは不可解な状況に混乱していたが、すぐにそのからくりが理解できた。

 ダニエルは何かに蹴られたような感覚に陥っていたのではなく、本当に蹴られていたのだ。突如、ダニエルの背後からルシアが出現したのである。ルシアは姿を自在に消すことのできる、『透明化の超能力者』だったのである。

 再びルシアが姿をくらましてしまった。さすがにこの状況では、姿が分からないルシアのほうが圧倒的有利な立場にあると思っていたが、その点についてはダニエルのほうが一枚上手であった。

 ダニエルは手に炎を作り出すと、それを床にばらまき、フィールド全体を再び炎の海に包んだ。守りに徹するつもりなのか、と誰もがそう思っていたが、ダニエルの目は獲物を捕らえようとする猛獣のそれに近かった。あたり一面が煙に包まれていたが、よく視線を凝らしてみると、煙の立ち上り方が不自然な場所が見つかった。まるで、誰かが煙を手で払っているかのような動きであった。つまり、そこでルシアが身を潜めていたのである。ルシアの居場所を突き止めたダニエルは、即座に炎を打ち出し、ルシアを場外に突き落とすことに成功したのであった。


 こうして、闘技大会屈指の実力者であったセシリー・ルシアの二人組を、ダニエルがたったひとりで倒したのである。マークは、これが自分たちが次に戦わなくてはいけない相手なのか、と改めてその壁の高さを実感したのであった。

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