第3話 残り48ヶ月 「道を開く者」
召喚から2ヶ月が経過した。
高倉翔の超加速農耕のおかげで、王都近郊の食糧事情は劇的に改善していた。
空腹で倒れる子供の姿が減り、
兵士たちの顔色も良くなった。
佐藤美咲の合成スキル『触診即断+任意薬剤即生成』は、
負傷者や病人の治療を革命的に変えた。
「感染症? 触ればわかる」「抗生剤? 今生成するわ」──
彼女の言葉一つで、かつて死に至ったはずの病が次々と治癒していく。
王宮の会議室では、
各国代表の目が輝き始めていた。
「占い師殿の導きは本物だ」
「次は……戦士を呼んでくれ!」
あなたは静かにスキルを発動させた。
星の流れが、穏やかだが確実に語りかける。
「……道を拓き、壁を築く魂。
人々が繋がらなければ、どんな食糧も薬も届かない。
インフラ・土木のチート持ちを呼ぶべきです。」
代表たちが息を飲む。
「道……? 橋か? 城壁か?」
あなたは頷き、タスクを提示した。
• 大陸の主要な河川から「最も強い流れの石」を1つずつ集めよ
• 召喚陣の周りに、鉄の棒を48本(残り月数を象徴)立てよ
• 儀式前夜に、全員で「未来への道を拓く」との誓いを立て、互いの手を握れ
「これをこなせば、精度が上がります。
今回は……人々を繋ぐ力が強い人が来るはずです。」
準備期間はまた29日。
あなたは再び奔走した。
河川の急流に飛び込み、石を探す。
山岳地帯で鉄鉱石を掘り、鍛冶師に頼んで棒を鍛えさせる。
高倉と佐藤も協力してくれた。
高倉は汗を拭きながら言った。
「俺は土掘りなら得意だぜ。
お前、最近顔色悪いな。
無理すんなよ。」
佐藤はあなたの手を触診し、静かに言った。
「ストレスと疲労が溜まってるわ。
薬を生成してあげるけど……根本は休養よ。」
あなたは苦笑した。
「ありがとうございます。
でも、俺が止まるとカウントダウンが止まらないんです。
死にたくないから……みんなを巻き込んでるんですけど。」
召喚日。
光が力強く広がり、
現れたのは──
ヘルメットをかぶった、がっしりした体格の男性。
年齢は30代半ば。
彼は周りを見回し、すぐに状況を察したらしい。
「……マジかよ。
俺、今トンネル工事の現場で重機乗ってたのに……
ヘルメットもそのままか。」
あなたはすぐに近づき、深く頭を下げた。
「本当に、ごめんなさい。
俺が召喚しました。
あなたは今、仕事中だったんですよね?
家族や仲間が待ってるのに、突然引きずり込んでしまって……」
男性──田中健太は、ヘルメットを脱いでため息をついた。
「まあ……しょうがねえか。
俺、前世で土木・インフラエンジニアやってた。
橋、道路、トンネル、ダム……何でも作ってきた。
今朝は家族に『今日も安全に仕事してくる』って言って出たばっかだよ。」
彼の声に、少し寂しさが混じっていた。
あなたはさらに頭を下げた。
「申し訳ありません。
この世界は48ヶ月後に巨大な厄災で滅びるんです。
俺も転生者で、死にたくない。
食糧も医療も揃ってきたけど、人々が繋がらないと意味がない。
だから、あなたの力が必要でした。
……許してください。」
田中は少し考えて、ゆっくり頷いた。
「……許すとかじゃねえよ。
俺は元々、道を作って人を繋ぐのが仕事だった。
ここでも同じだろ?
……それに、家族にはまた会えるって信じてる。
生きて帰るために、頑張るさ。」
あなたは顔を上げた。
「ありがとうございます……!
あなたの合成スキルは……?」
田中は自分の手を握りしめ、呟いた。
「前世との合成スキル:『構造即解析+任意建築加速』……
見ただけで構造の弱点と最適設計がわかる。
さらに、必要な資材があれば、建設速度を10倍以上に加速できる。
……ここじゃ、完全にチートだな。」
広間がどよめいた。
王族の一人が興奮して叫んだ。
「これで、河川の氾濫も、険しい山道も……!」
田中はヘルメットを被り直し、笑った。
「まずは地図見せてくれ。
どこから道を拓く?
俺はもう、動き出したい気分だぜ。」
高倉が肩を叩き、佐藤が微笑む。
あなたは胸の奥で呟いた。
(ごめん……そして、ありがとう。
みんなが来てくれるから、俺はまだ諦めない。)
残り47ヶ月。
道が、少しずつ繋がり始めた。
(第3話 終わり)




