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エリス



仮眠をとったクレイとアリシア。アリシアには寝る場所がないので必然とクレイの家に来て一緒に(場所は別)寝たのだが、どうしてもクレイと一緒のベッドに寝ると聞かなく説得するのに時間がかかってしまった。


そして翌日。朝から町を出て歩を進めた。アリシアが一緒にいることで魔法を使えたので、移動時間を大幅に短縮できたのは嬉しい誤算だった。


そして着いたのが、都市クーヨ。クレイが住んでいた町ヴィラダとは正反対の場所であり、王都に1番近い都市部の富裕層地帯である。


「景色すごいねー」

「キラキラし過ぎて目が痛い」


自分たちが普段見ている景色が如何に貧相だったのかわかる壮大さだった。どの建物を見ても高級さが溢れ出ている。空気までもがまるで違うものに感じるようだった。


「で、エリスはどこにいるんだ?」

「そんな具体的なことは知らないよ。ここにいるって聞いただけ」

「まあ仕方ないか。人から情報収集するしかない。て言うかまず、俺らは目立ちすぎる」


問題点。自分たちは周りと違い過ぎる格好をしていた。一目見れば金がなく低級階級以下の人物だとわかるだろう。さっきからじろじろと蔑んだ視線をちらほら見かける。


特に準備もしないまま来たので当然。そもそも準備をしたところでロクな服もアクセサリーなんてもっていないのだが。


「これじゃ聞こうにも周りがビビって聞けやしない」

「じゃあ無理矢理吐かせる?」

「こんな大っぴらは勘弁。でも悪くない案だ。ちょっとこっち行くぞ」


クレイとアリシアは人通りが少ない小道に移動する。


「こんなとこでも悪党はいるってもんさ」


気づけば囲まれていた。後ろに3人、前に3人。ここに来た時から目を付けられていたのはわかっていた。豪奢な衣装に身を包んでいるが、素行の悪そうな雰囲気は隠せていない。リーダーぽい男がクレイに話しかけてきた。


「貴様ら見ない顔だな。どこから来た?」

「そんな人に話すほど良い育ちじゃないですよ。それより俺ら少し聞きたいことがあるんだけど」

「いいだろう、聞いてやるよ。有り金全部と横の彼女を置いてけばいくらでも話してやる」


決まり文句のような言葉にクレイは心の中で思わず笑ってしまった。


「ねえねえクレイ、彼女だって! いや~やっぱりそう見えるのかな♡」

「知らん。お前ら親切心ってある?」

「貴様らみたいな貧相な輩に持ち合わせる親切心などない。お前たち、女の方は傷つけるなよ」

「はあ。金で太った連中も思考回路は変わんねえな」

「なにごちゃごちゃ言ってんだ。さっさと言うこと──」


背後からクレイの頭を鷲掴みにしようとした男の腕の骨を折る。悲鳴を上げる前に顔面に肘を喰らわせた。


「なっ! テメェ!」


別の男がナイフで斬りかかる。しかし見惚れる指捌きでナイフを強奪し、宙に舞ったナイフをそのまま男の腕に刺し貫く。


「があ──ぶへっ」


こっちも大声を発する前に昏倒させた。


「魔法でも使えば? 使えるか知らんけど」

「使えないっぽいよ。魔力を全然感じない」


すぐ側でアリシアが告げる。その足元には3人の男が寝っ転がっていた。身体強化、雷魔法を使い、クレイの一部始終の間にやってのけてしまう。


「あいつからは少し感じる」

「ん?」

「何なんだよクソッ! やってられっか!」


最初に啖呵を切ってきた男が逃げ出していた。あんなにイキっていた自信は恐怖に負けてしまった。仲間への敵討ちを考える性分ではないらしい。


「お前ら覚えとけよ! このレートラル家の長男の俺に逆らったらどうなるか思い知らせてやる!」

「いや誰だよ」

「だっさ」

「まあそう言ってやるなよ。までも、情報は聞き出さないと、な」


ナイフを投擲。狙い通り男の太腿に刺さり転ぶ。


「このっ……」

「これからは親切心を持つようにしろな」


クレイが無理矢理立ち上がらせ、壁に背をつけさせる。


「ま、待ってくれ! 頼む殺さないで!」

「はいはい殺さないから。俺だって面倒ごとは嫌いだ。今回は仕方なく。でも……そうだな。聞くついでに有り金全部と服よこせ。これはお前らが撒いた種だ。誰かに言いふらしたらお前の臓器でも売って依頼料ぶん取るからな。まあ、俺みたいな、貧相で、低級の下民風情の奴にやられたって、言いふらしたらしたでお前の権威はどん底に落ちるだろうけど」

「わかった、わかったから……何を聞きたいんだ?」



         ────



太陽が陰り月が顔を出す。真夜中という時間帯にはまだ早く、富裕層の地帯であるここは一際賑わっている場所をちらほら見かける。


そんな場所とは程遠い静寂に満ちた夜道を歩く1人の人間。亜麻色の髪をした穏やかな女性。そんな人が暗い夜道を1人でなんて危ないと思うかもしれないが、彼女を知る者はそんなこと微塵も思わない。


なぜなら彼女は──



「誰ですか?」



誰もいない空間に突然呟きを放つ女性。しかし彼女は独り言など言っていない。背後にいると感じたのだ。


「1人……いや、2人ですか? こそこそと追いかけて回してないで出てきてください。私を奇襲して拉致するなどといった蛮行は、私には通用しません。堂々と正面から出てきたらどうです?」


強く冷ややかな言葉。相手に舐められたら駄目だと知っている。だから女性は強気な姿勢を崩さない。彼女にとってこういうのは初めてではない。既に腰にある剣を抜く準備はできていた。


「いやー流石だねー」


闇から現れた2人の人影。光がないせいでよく見えないが、豪奢な服装に身を包んでいる。しかしそれがただ着飾っているに過ぎないことは、女性には一目でわかった。


「来ましたね。潔く出てきたその度胸は認めてあげましょう」

「おっとと、待て待て。付け回したのは悪かったが、別に俺たちは誘拐犯じゃない。あんたが1人になるのを待ってただけだ。衛兵のあんたは仕事が多いようで大変だな」

「……あなた方は誰なんですか?」

「ただの貧民だよ。ちょっと話を聞いてくれればそれでいい。なあ……"元勇者候補のひとり"────」




「勇者ヘラクレスの妹、エリス=アーサー」



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