余談 特別控室にて
妹様のフルネームを教えて貰った後、結局その後は特に何か会話をすることはなく、「帰れ(要約)」と言われて戻ってきたはいいが……
「……噓でしょ?」
僕のベッドにメイド服を着た灰色の猫が横たわっていた。
いや……これ猫って言っていいのか?
人型サイズの化け猫って言った方が正確だよな?これ。
いや……彼女がこの姿になれることは知ってるけどさ……なんでここで寝てるの?
とりあえず寝られないので起こすことにするか……
「セッカさん。起きてください。眠れないです」
身体を揺らしてみる。
うぉ……もふもふだ……癖になるもふもふ具合だ……
しかも身体が柔らかいから、沈みこんで手が埋まって感触が最高だ。
ん?これ猫の見た目だから抵抗がないだけで、絵面はとんでもない気がする……
まぁ……起きるまでなら堪能してもいだろう……
「んぅ……」
ちぇっ。もう起きたか。
化け猫メイド長様は逆関節の足を曲げて背筋をぴーんっと伸ばした後、僕の方をジッと向いて口を開こうと……
「あ、喋らなくても大丈夫です」
するのはとりあえず止めておくことにした。
そんな怪訝な顔をしないでください。
前にこの姿のセッカさんが喋った時、とんでもなく鳴き声が低く響くのは……何というか、サイズを考えたら当たり前ですけど……僕の中のイメージが崩壊しちゃうので。
それで、セッカさんはどうしてここで寝ていたんですか?
そう頭の中でセッカさんに言葉をかけると、彼女は二足で立った後、前足?いや、右手で指を指し示してきた。
「あぁ、僕の荷物を運んでくれたんですね。ありがとうございます」
軽く頭をさげると、ぺこり。と、もふもふな身体で首を少し縦に振ってそのまま部屋から出ていった。
……まだ入ったことのないベッドに灰色の毛を残して。
もふもふ




