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屑虫

作者: Rinmahora

『屑虫』



( )))))ゴソゴソ


モゾモゾ_(-ω-`_)⌒)_ _(⌒(_’ -ω-)_モゾモゾ



今日も彼、いや…奴はコタツの中に住んでいる。


真原智樹13歳 男の子

自称ピチピチお肌の純朴な中学1年生だ。


冬は極寒の某田舎に住む奴は、コタツが昔から大好きだ。


今日も学校から帰ってきたら、コタツに突入

|ω・`)ノ |Юお邪魔します


手足が長い奴は、コタツの端々から手や足を出す。

見た目巨大な甲羅か殻を被った亀かカタツムリ。

そう、奴は一体化することで


(:3[コタツムリ]


コタツ虫に変身する。



トイレ以外は、そこで生活する。

手洗いうがいもしないし。

風呂も食事も家族に散々言われないと入らない。

食べない。


常に寝転がって分身のスマホ片手にゲームの世界にリアルダイビング


(^ω^)ニコニコ

(「゛・∀・)「゛ピコピコ

やってると思ったら。


(_`Д´)_クソガッッッ!!!


と急に怒って情緒不安定。


ゲームで、勝てんからって、周りに当たるのは辞めろよな。

ホンマ迷惑な奴や。


同じコタツ虫になっていた妹(小5)が、ε((・ω・))モソモソ起きて、コタツ虫(中1)の頭を踏んで、台所に一直線。

グウゥゥゥ...( i ~ i )ハラヘッタ

と常に腹を空かせている腹ペコ青虫。

自らも虫でありながら、体内に寄生虫サナダムシを飼っている恐るべき11歳。

時々排便時に千切れたサナダムシが便器に浮いていて、大水量でゴゴゴゴゴゴォと流すのが、快感至極狂淴。


ゴロンチョしていたのに、突然頭を踏まれた奴は怒る。


「ヽ(`Д´)ノフザケンナゴルァ!


(゜#)ω゜)イタイヤロガ!!!


殺すぞ!!」


まぁ怖い。



そして、心を閉ざしコタツの奥底に( )))))ゴソゴソ入って冬眠するコタツ虫。




…勉強もしないで、スマホゲームばっかり



奴は周りからチクチク言われるのが、嫌いだ。

怒られたり、自分の思い通りに行かないと、黙りだ。


居心地がいい殻に閉じこもる。


学校を休む。

友人が来ても無視。


スマホピコピコ


怒る父親


「死ね!殺したろか!

黙りやがって、なんで何も言わんねん!


もう、2度度帰って来んな!

出ていけ!

この家から出ていけ!!」



更に殻に閉じこもる奴は、どうでもよくなって、父親の相手をするのが面倒くさくなってきたからか、もっそりコタツから出て、玄関から外に出る。


「ほな、出てくわ」


勿論奴に行く宛てなど無い。


だが、全てが面倒くさいのだ。


学校も、親も、姉妹も。


自分でさえ。



自分の中に産まれてくる、グルグルぐちゃぐちゃした感情を抑えることができない。

なんと、浅はかな13歳という。思春期という生き物。


ほんとに面倒くさい生き物



ガチャ ||.c( ΘϖΘ|


奴が無言で、靴も履かず外に出る。


何となく、このままでは奴が何をしでかすか分からない。( ๑"・・)ヤバイ...と思っていたのか、父親は奴の祖父に電話をしていた。


ということで、出ていこうとした奴は

事前に待ち構えていた祖父に

玄関先で捕縛された。


そのまま車に拉致され、祖父の家に連れていかれた。



奴の父親は自分で息子を止めようとはしなかった。


自分の父親が助けてくれるのを知っていたから。

何時だって、自分の味方で助けてくれた父親。


父親が来て、奴を連れて行ってくれた。

安堵する奴の父親

『孫と過ごせて幸せだろう』

『逆に俺は親孝行』

と自分の都合に合わせて解釈。

結論づけて終わらせた。



奴の父親にも思春期はあったかも知れないが、環境に恵まれていた彼に、自分の息子の気持ちや状況を想像することなど、出来るはずが無かった。


事ある毎に

「俺は中学生の時はこうだったのに。」

「俺はこんなんじゃなかった。」


しか言えないのだ。



奴も奴なら、奴の父親も父親だ。


お互いの相乗効果で、周りの迷惑この上なし。





正に、こんな周りに迷惑を撒き散らし、自分の殻に閉じこもる輩は、コタツ虫。


カタツムリでも、雨が降れば嬉しそうに殻から頭を出して外の世界を眺めるのに…


カタツムリにさえ心負けしてしまえば、一生底から這い上がれない『屑虫』に成り下がってしまうだろう。



『屑虫』


奴はその1歩手前。

思春期の不安定さは善と悪、光と影、どちらにも簡単にその身を変える。

簡単に染まる。


変わるキッカケなど些細な事が多い。



ある日、なんの前触れもなく思春期が終わる時がやってくる。


段々終わっていく時もある。


親は戸惑い、不安になり、悩む。


子供に暴言を吐かれた日。

壁に穴を開けられた日。

物を壊された日。

学校を休まれた日。



自分の子育てが悪かったのか?


葛藤する。


子供は、そんな親の心労など気付きもしないで、殻に閉じこもり自分の事ばかり。

今の状況を他人のせいにする。

第三者の状況、周りの状態を想像できない。

主観的な生き物になる。

客観的になれないのだ。

精神が未熟だから。


そして、親も主観的にしか考えない。


何故、言う事を聞かない?

何故、学校に行かない?

何故、他の子は普通なのに、我が子はこうなのか?



親もかつて、思春期の時代があり乗り越え、大人になり今の自分があるはずなのに。


想像できない。

子供がどうして、そんな状態になるのか、慮ることができない。



親も未熟だ。


いや、人間こそ未熟な生き物だといえよう。


何年生きようが、どんな経験を積もうが人間は常に未熟なのだ。

完熟することはない。


生きている限り、身体は衰えても、心は成長し続けるから。


未熟故に成長するのだ。




では、人間は永遠に思春期か。



思春期は身体的・認知的発達、 人間関係の変化により、いろ いろな感情が起こってくる。

例えば「理由は分からないけど、イライラする」

「他 の人と比べて落ち込む」

「他の人と同じは嫌だけれど、 違うのも嫌だ」というような気持ちだ。

こんな風に思春 期は、感情の不安定さ、矛盾する気持ちが同時に存在 することが特徴だ。






★★★★★★★★★★★★★★★★★



((・ω・))モソモソ


今日も今日とて奴はコタツ虫。

部下のぬいぐるみ(ハリネズミのハリー、柴犬のコロ丸、ブタの豚さん)を引き連れ、抱きしめご満悦。


奴は懲りない。

反省しない。

振り返らない。

聞く耳もたない。


コタツがある限り。

逃げれるからだ。

誰にも邪魔されない檻に。




…じゃあ、春が来てコタツを片付けたら、どうなるのだろうか。



春が来たら、彼は中学2年生になる。

後輩ができる。


彼は果たして、コタツ虫のままでいられるのか?


環境の変化は否応なしにやってくる。


それが奴にとって、自分の殻から飛び出すハンマーになるのか、それとも更に塗り固めるセメントになるのか…



それは、誰にもわからないのである。




母親は願う。


コタツ虫が、『屑虫』にならぬようにと。



☆☆☆☆☆☆




他人が自分をけなしても、それで自分の価値が下がるわけでもなく、褒めても自分の価値があがるわけでもない。


そもそも自分の価値のあるなしすら、わからないのが人間ではなかろうか、


ただ自分は自分でしかないのだ。



──神谷美恵子『人間をみつめて』(河出書房新社)





 神谷美恵子の言葉2 -

『苦労して得たものほど生きがい感をもたらす、ということはひとつの公理ともいえる。生きがいを感じられないときは、他者へ貢献できることを探してみればいい』



『人生では、努力だけではどうにもならないものがある。自分は幸運でも、自分の家族や大切な人が不運を味わう可能性もある。だから「自分だけ幸せになればいい」という態度では、本当に幸せになることはできない。自分だけでなく、他の人のことも考える必要がある』




終わり



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