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「私、は……わたし、ワタシ……ハ……?」
ぼくの問い掛けに、式部は答えてくれなかった。
いや、答えられなかったと言った方が正しいかもしれない。だって、彼はバグが起きたように、同じ言葉を繰り返している。
「式部!」
「ワタシ、ワタシ、ワタシハ……マモリマス、アナタ、ソンザイ、ツカワレル、オアイデキマシタ、タメダケノ、ヨウヤク」
それを止めたくて、ぼくは式部の名を叫ぶ。
ぼくが彼の名前を呼んだ途端、式部の身体がぐにゃりと歪んだ。
嘘だ……!まさか、消えたりしないよね……!?
「嫌だ!式部……!」
ぼくは彼を助けたくて、勢いで抱きしめようとした。でもぼくの手を空を切る。
「うそ、触れない……!」
何度触ろうとしても、式部に触れることが出来ない。
こうしている間にも式部はどんどん歪んでいって、彼の形を保てなくなっている。
「いやあっ!誰か!誰か助けて!!」
「アイタカッタ、ワタシノ、エ─────」
『芋煮成世様』
突然、ぼくの頭の中に男性の声が響き渡る。
知らない声。でもよく知っている声にも聞こえた。
「お願い!式部を助けて!」
誰でも良い。とにかく式部を助けたくて、ぼくはその声に助けを求める。
『第二章に突入しました。図書館が解放されます』
「は、はあ!?図書館!?」
予想外すぎる返答にぼくは思わず情けない声を出してしまう。
図書館なんて今は求めてない!
確かにゲームのファンクロでは第一章をクリアーすると、図書館機能が解放されたけど……!
「そんなのいいから、式部を……!!」
『芋煮成世様を、ただいま図書館にお連れ致します』
「え!?今から!?」
考える暇もなく、ぼくと式部は光に包まれて……
「な、何なのこれーーーー!!!!」
その場から、消えた。