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藪の中  作者: 秋本そら
人々の記憶
2/11

2.ひとりめの友達

 ――え? あの子が自殺?

 そう、なんだ。なんで死んじゃったんだろう。まあ、自業自得なんじゃないのかな。

 ……なんで、って。

 あの子、人の悩みを鼻で嗤える子だからさ。

 知らなかった?

 じゃあ、教えたげる。


 多分、一か月くらいは前の話なんだけどさ。

 進路のことで、すっごく切実な悩みがあったんだ。

 ほら、うちらってもう高校三年生じゃん。もう行きたい大学も決めて、早い人はもう進路が決まっててさ。そんな中、成績が伸び悩んでたんだよ。……うん、分かるよね。つまり、このままだと志望校の合格ラインには届かない、っていうところで停滞しちゃってたわけ。いくら勉強しても上に進めないのが苦しくって、だから、それをあの子に話したんだよ。あの子ってそんなに頭よくないから、同じような悩みを持ってるんじゃないかって思ってさ。当時はまだ、仲もいい方だったし。

 でもさ、ひどいんだよ。

 あの子、うちが話してる途中で、笑ったんだよ。

 ふん、って。鼻で。

 最初は聞き間違いだと思って、話し続けたんだ。でも、そうじゃなかった。本当に、嗤ってたんだよ。

 うちのこと、馬鹿にするみたいに。

 ……信じられる? こっちはすっごく切実なのに。苦しくて苦しくて仕方なくて、だから、誰かに話さなきゃやっていけないってくらいに追い詰められてたのに。それをくだらないって言うみたいに、何度も、何度も……。

 しかもね、うちが話し終わった後、あんなに嘲笑ってたくせに真面目な顔して心配そうに「それはしんどいよね」「大丈夫?」って言うんだよ。今更取り繕ったって遅いのにさ。気遣うような言葉をかければごまかせるって思われたんだ、って。そう思ったらイラっとしてさ。

 もうあんたのことなんか知らない、って言って、縁を切ってやった。

 それ以来、話してない。

 何度かむこうから「なんか、ごめんね」って話しかけられたけどずっと無視してる。謝るくらいなら嗤わないでよ、って思わない?


 だから、さ。

 もしあの子に切実な、それこそ死にたくなるような悩みがあったとしても、絶対に話は聞かないって決めてたんだ。もし相談を持ち掛けられたら、思いっきり鼻で嗤ってやろうって考えてた。

 へえ、悩みがあるんだ。どうせくだらない内容なんでしょ?

 人に相談するまでもない、どうでもいいようなちっぽけなことなんでしょ?

 そう言って、追い返してやろうって。

 あんたはそうやってうちの心をずたずたに傷つけたんだよ、だから自業自得だよ、って。

 まあ、そんなことは起こらなかったんだけどさ。


 ……正直、ね。

 ざまあみろ、って思ってる。

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