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藪の中  作者: 秋本そら
血塗れになった文字の記憶
10/11

10.遺書

 どこまでちゃんと言葉にできるか分からないけれど、ひとまず、遺書のようなものを書いてみようと思います。

 私が死のうと決めたのは、もう、この現実に耐えられなくなったからです。

 事実があるのにみんなに真実を作り上げられて、偽物の「自分」ができてしまうことも。けれど嘘の真実を作られるきっかけを生み出しているのも結局は自分なので、私は被害者ともいえるし加害者ともいえることも。自分でもなにが本当でなにが本当でないのかが分からなくなってしまったことも。なにかを伝えるためにあるはずの言葉が意味をなさないこと、考えていることを全て言葉に変えられないことや、変えられたところで相手に伝えることができないことも。相手がなにを考えているのか分からないことも。偽物の自分に向けられた感情を私が受け止めて勝手に一喜一憂してしまうことも。

 なにもかもに、耐えられなくなりました。

 なにも分からなくて迷子になってしまったので、迷子らしく急に消えてしまおうと思いました。

 もう、本当の気持ちも、この現実も、いろんな物事の経緯も、なにもかも、気にしないことにします。だって、そんなものがあったとしても、それらすべての「事実」は誰にも、私にも見えないもので、勝手に作られて偽られていくものなんですから。

 だからどうか、私が死んだ理由も勝手に解釈して「真実」を作ってください。どうせ私には作れないものですから。「真実」を作る権利はすべて皆様が持っていってください。私なりの「真実」を書いたこの遺書は、血濡れになって読めなくなる予定ですから、安心して、事実なんてものは捨て去って、ご自由に考えてみてください。

 そしてどうか、心行くまで考えたら私への興味関心は捨てて、さっさと私のことを忘れてください。そうしてもらえたら、私はこの世界からすんなり、綺麗にいなくなることができますから。私は、すっとこの世界から消えてしまいたいんです。

 では、最後に一言だけ、言わせてください。


 じゃあね。

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