第5話 石を数えるだけの簡単なお仕事
「さすがに疲れた! ちょっと休憩な!」
「そうですね」
「スキルも解除だ!」
魔剣はまた魔人アアアーシャの姿に変身すると、その場に座り込む。健太郎も一緒に座った。
スキル効果で魔獣は次々と襲ってきたが、その度に魔剣の炎のビームで蹴散らしていった。
「しかし、オマエ意外と根性あんじゃねーか」
アアアーシャは健太郎の背中をバシバシ叩いた。
健太郎は剣を振っているだけだったが、それでも二時間も続けるとなるとそれなりに大変な作業だ。
魔剣も片手で持てる重さではあるが決して軽いというわけではない。
「そういう過剰なスキンシップはやめてください」
「んだよ、つれねぇなぁ」
「ていうかこの魔石一個でどれくらいの価値があるんですか」
二時間くらいの魔獣討伐だったが、集まった魔石はかなりの数だ。
「そうだなぁ、オマエの国のカネだと、ちょうど一個500円くらいだな」
は……? 目の前のこの石が一個500円!?
それがいくつあるんだ。
健太郎は思わず立ち上がると無造作に転がっている石にすばやく目線を走らせる。
「つーかコレ数えんのめんどくせーな。えーと、いち、に、さん……」
「……だいたい360個ですね」
「マジで!? 数えんの早くね!?」
「昔、ひたすら石を数えるだけの仕事をやってましたから。目算でだいたい分かります」
「どんな仕事だそれ」
二時間で360個ということは一分で三個手に入る計算だ。
体感的にもそんなものだった。
「一個500円……360個で18万円ですか……」
「みんな同じような大きさだしな。そんなもんだろ」
二時間で18万円。
つまり時給九万円。
「……なんか、ふざけてますね」
「あん? なにがだよ?」
九万円を稼ぐのがどれだけ大変だと思っているのか。
しかもそれを一時間で稼ぐとしたらマトモな仕事では無理だ。
「マトモじゃない量の仕事をしていた僕でも時給九万なんてありえないですけどね……ふふ……」
「はぁ?」
「あ、いえ何でもないです。言ってて悲しくなりました」
とはいえ物の値段が分からない。
この世界での九万円は大した価値がない可能性もある。
「当面生きていくためのカネとの事でしたが、いくら稼ぐんですか?」
アアアーシャの目標額を聞いておきたい。
「特に決めてねぇなぁ。健太郎、いくらあればいい?」
「ええ……この世界の物価を知らない僕にそんな事を聞かれても」
「そりゃぁまぁ、そうか」
「とりあえずこれで良いのでは。足りなくなったらまた稼ぎましょう」
「そうだな、じゃあ換金所にいくぞ!」
おそらく換金所があるのだろう方向を指さし高らかに叫ぶアアアーシャ。
「っと、その前に一つ問題があった」
「なんですか?」
「……これ、どうやって運ぶかな」