第7話 恐れて逃げた
アアアーシャが怒ったのか、理由の分からないルルルシアは悲しそうだ。
その肩にボスがそっと手を乗せた。
「気にするなルルルシア。オマエは間違った事を言っていないよ」
「えーんゼシィ~~」
顔をあげたルルルシアがボスに飛びつく。
「願いの価値は人それぞれだ。デカいも小さいもない……でもな、それを欲する力は違う。俺のはデカい。デカいぜ! だからルルルシア、オマエは俺の願いだけ叶えていればいい!」
「分ったわ! 私はゼシィの願いだけを叶える!」
頭をボスが優しく撫でるとルルルシアの表情がパッと明るくなった。
美形の二人だけあってなかなか絵になる図だが、その実は親が子を、もしくは兄が妹をなだめているようである。
「なんだよボスさんよ、独り言は終わりか?」
「ああ、すまんね。俺の力を見せるつもりだったのにさ。アンタの力が想像以上に凄かったんで思わずはしゃいでしまったよ」
「はしゃいでたのか? 随分と個性的じゃねぇか」
はしゃいでいた、というよりは自分の世界に入っていたような感である。
「シカトしてたわけじゃないんで、嫌いにならないでくれよな」
「バカか、そもそも好きじゃねーよ」
「おや残念」
肩をすくめるボス。
余裕な態度は変わらない。
「今やっと分かったぜ。盗賊どもがさっさと引き上げたのが疑問だったが、合点がいった」
「……そうか……あのとき盗賊たちは魔剣の力を恐れて逃げた……」
「分かってんじゃねぇか健太郎。ボスがマホルなら盗賊も魔剣の力を知っているだろうしな」
アアアーシャは盗賊たちの行動を思い出していた。
魔人の姿の時はナメくさった態度で絡んできた盗賊たちが、魔剣の姿に戻ると何も盗らずあっさり引いていった。
そう、あれは引いたのではない。健太郎が今言ったとおり逃げたのだろう。
「ああ、そのとおり。少しでも魔剣の力を知っている奴なら戦おうなんて思わないさ」
二人の考えが正解だとボスが認めると後ろにいる盗賊達もうなずいている。
中には「戦わなくてよかった……」と呟く者や「あんな攻撃、反則だろ!」とヤジを飛ばす者もいた。
ボスが言った「想像以上」という言葉の通り、盗賊団が認識していた魔剣の力よりもアアアーシャの攻撃が凄かったということだ。
おそらく魔剣『エーツファレオ』の攻撃力を基準にしているはずである。
「ふん、逃げたのは正解だぜ。アタシ様も無駄に人は殺したくねーしな」
健太郎も場の雰囲気に即した神妙な表情をしているが、
アアアーシャの「殺したくねーしな」という発言に内心ホントかなぁ……と思っていた。




