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【完結】美人でヤンキーな魔剣の魔人が願わない社畜の願いを叶える物語  作者: 浅田椎名
第一章 魔剣で魔人で美人で超ヤンキーで。
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第4話 魔人はちょっとチョロかった

「さぁ稼ぐぞ。次はオマエも戦えよ」」


 剣の姿のアアアーシャは、その剣先で地面に刺さった木刀を指し示した。


「この木刀がありゃここいらの魔獣は一撃で倒せるしな」

「……この木刀も魔剣なんですか」

「いや、こいつはフツーの武器だ。見たまんま。木製の刀だな」


 木刀の一撃で倒せる敵に対してさっきの炎を放ったのか。

とんでもないオーバーキルである。


「魔剣じゃねぇが……こいつにはアタシ様のスキルで特殊効果が施してあってな。魔獣を呼び寄せるんだよ」

「……それって呪いとかじゃないんですか? なんでそんな武器を使うんですか」

「そりゃ、魔獣が出ないと稼げないだろ。あ、ほら! 次の得物が来たぞ!」


 木刀の特殊効果なのかは分からないが、ツノウサギがこちらに向かってくる。

その隣にはどうやらもう一匹いるようだ。

見た目はやはりウサギに似ているが、ツノが一本だ。


「おっ、イッカクツノウサギも来たぞ」

「何か違うんですか」


 というより「イッカク」とはツノが一本という意味のはず。

それなら「イッカクツノ」とはどういう事だ?

しかし問題はそこではない。


「一本ツノは気性が荒いんだよ。あとツノもカタいな。鉄の防具も貫くぜ」


 アアアーシャは「前言撤回、あれはちょっと強いな」なんて言っている。

鉄の防具がどの程度の防御力があるのか健太郎には分からないが、それを貫くのであれば人体ではひとたまりもないだろう。

急に難易度が上がった感じだ。


「だけど木刀なら敵が近づく前に攻撃できるからな。タイミングさえ間違えなければ問題なく勝てるだろ」

「……」

「…………」

「………………」

「いや! だから持てよ武器を!」

「でも……」


 人間らしさを取り戻せるという希望をこの世界に感じた健太郎。

だからと言っていきなり剣を振り回して戦おうという気にはなれなかった。

戦いに限らず、積極的に行動できるようになるにはまだ時間がかかると思われた。

すり減った心がそう簡単に回復するわけがないのだ。


「くそっ、アタシ様を振れ!」


 それくらいなら出来る。

健太郎は素直に右手を動かして魔剣を振った。

魔剣から凶悪なほどの炎が放たれて魔獣を吹き飛ばす。

ちょっと強いらしいイッカクツノウサギもあっさり撃退してしまった。


「健太郎! オマエ何してんだよ!」


 魔剣は健太郎の右手からすり抜けると、魔人アアアーシャに姿を変えた。


「ザコだからってな、ナメてると怪我するぞ! コイツを持て!」

 

 アアアーシャは地面に刺さった木刀を抜くと、逆手に持った。

そして柄の部分を健太郎に突きつける。


「いや、あのめっちゃすごいビームみたいな炎、勝手に出るんでしょう? 僕は必要ないのでは」

「はぁ? すげぇだと? 言っとくけどなぁ!」


 自分が何もしなくても敵を倒せる。

ビームみたいな炎が勝手に出る。

そう、思ってしまったのがいけないのだろうか。

二回目の攻撃は、最初の時のように心は動かなかった。


「あんなの全然大したことねぇし! アタシ様が本気を出せばもっとすげぇんだぜ!」


 あれ、この魔人もしかしてちょっと良い気分になっていないか?

特に褒めたつもりはないのだが。

木刀を両手で持って、バットのように素振りしている。

魔人の姿のアアアーシャはまた宙に浮いていたが、文字通りふわふわしていた。


「アアアーシャさんの攻撃、綺麗で素敵でした。もっと見たいです」

「ちょ、オマエ、マジか! そんな、マジか~~仕方ねぇな!」


 魔人はちょっとチョロかった。

また魔獣が集まってくる。

アアアーシャはまた魔剣の姿になると炎のビームを放ち、魔獣をどんどん倒していった。

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