第7話 戻った村で
「見えてきたぞ!」
ようやく黄色の屋根が見えてきた。
馬車を飛ばして戻ってきたが、それでも数時間かかってしまった。
アアアーシャが察知した魔力の乱れは人と魔獣のものだった。
どういうことだ。村を襲ったのは盗賊ではなく魔獣!?
その魔力も少し前から感じなくなっている。
ジンメイ達が魔獣を倒したのか。それとも……。
「セナ、先に行きますっ!」
「おいセナ!」
村の入り口付近まで来たとき、セナが馬車から飛び降りた。
状況が分からずいてもたってもいられなかったのだ。
「ちょ、待てって! 一人じゃあぶねぇぞ!」
アアアーシャも後を追うため馬車から降りようとする、そのわずかの間。
突然、村から馬に乗った男が出てきた。
そしてセナの腕を掴むと担ぎ上げてしまう。
「は……!?」
あまりに手早く、鮮やかでさえある手際。
偶然出くわして捕まったのではない。男達は待ち構えていたのだ。
「セナ!! くそっ! なんだオマエ!」
アアアーシャは走るが間に合わない。
セナを担ぎ上げた男はそのまま村に戻っていく。
「ちっくしょう!」
さすがに走って馬に追いつけるわけがない。
アアアーシャも馬車へ引き返す。
健太郎は荷台から状況を見ていた。
「ちょ、今の……何ですか。村の人がセナさんを?」
「いや違う。セナを連れて行った男。あいつだ。アタシ様たちを襲った盗賊。赤布の男だ!」
「え……」
「くそが!」
馬車に飛び乗ると村の入口へ急ぐ。
アアアーシャ達の位置からは見えなかったが、村の入口、門は吹き飛ばされていた。外壁の破損も酷い。
そこから視界に入る家屋、壁や扉、柵なども全壊という状況だった。
あれは物見矢倉だろうか。一体どういう攻撃を受ければ真っ二つに裂けるというのか。
これは剣や弓などによるものではない。
人外の力、人間以上のもっと巨大な力で攻撃された跡だ。
「……これ、まさか魔獣がやったんですか!?」
「おそらくな……だがこいつをやったのはハンパな数じゃねぇ。もっと多い……!」
いや、数だけじゃない。
小型魔獣が群れになってもこんな状態にはならない。
中型魔獣……もしかすると大型魔獣も含まれている可能性すらある。
しかし、サイズの異なる魔獣が群れとなって村を襲うなどあるのか!?
そしてセナを連れ去った赤布。
あの男がいたという事は、やはり盗賊が村を狙っているという情報は本当だったのか。
だがアアアーシャが察知した魔力の乱れは人間と魔獣が戦うときのもの。村人は魔獣と戦ったはずだ。
ダメだ、分からないことが多すぎる。