第2話 セナの理由とチームワーク
セナが一人で行動している理由が気になるアアアーシャと健太郎。
剣と魔法の世界といえば治安レベルが低いイメージもあるし、魔獣も生息している。
一人の行動はリスクが高いだけなのではないか。
犯罪に巻き込まれる、魔獣に襲われる等のトラブルは容易に想像できるし、実際セナはツノザルに襲われていた。
「あぁ、言いたくないなら構わねーぜ。ただ、セナくらいの娘が一人で行動するのが危険だってことくらい、分かるだろ」
「……いえ……はい」
アアアーシャから見ても一人で行動するのは危険なのだ。
セナもそれは分かっているようである。
それなら、その理由は何か。
「……セナたちの住むバイハド村は、兄のジンメイが中心になって作った村なんです」
少し間を置いてセナは自分の村の話を始めた。
「へぇ。じゃあ兄ちゃんが村長なのか」
「はい。再興した、が正しいかもしれませんけどね。戦火に巻き込まれ滅びた村だったんです」
ジンメイはかつてとある領主に仕えていた騎士だった。
治める者のいなくなったその地にはジンメイと同じ年頃の若者達が集い、壊れた家屋を直し、地をならし、水を引き、畑を耕した。
「いつしかそこには多くの人が集まるようになりました。戦で大きな傷を負った人や住むところを無くした人。兄は皆を受け入れました」
「兄ちゃん良い奴だなぁ」
「はい……!」
兄への敬意が、好意が、セナの声から伝わってくる。
「バイハドは滅びた村の名前。新しい名前を付けてもよかったんですけどね。兄はその名にしたいと譲らなかったんです」
変なところで頑固なんですよ。そう言うセナは楽しそうだ。
剣の稽古も兄につけてもらった。
気付いたら兄に次ぐ剣の腕、村で二番目の剣士になっていたとセナは笑った。
「まじか! すげぇじゃん! 才能あったんじゃねーの」
「兄の教え方が上手かったんですよ」
「いや、その歳で大したもんだぜ」
セナは背負った剣に視線を送る。
「でも。村の剣士達で結成したツノオオダコの討伐隊、セナは参加させてもらえなかったんです」
「……セナ、剣の腕が立つからと調子に乗っていたんですよね」
「こっそり着いて行って……でも全く歯が立たなくて」
「……兄が……セナを庇って、ケガをしてしまって……」
セナの声がだんだん小さくなっていく。
アアアーシャは一言、「そっか」とつぶやいた。
それでも、その戦いでセナの兄ジンメイはツノオオダコを斬り付け、傷を負わせたという。
大した実力者だ。
「……少しでも兄や皆の力になりたくて、セナは村を抜け出したんです。助けてくれる人を探してくると書き残して」
しばらく続いた沈黙のあとに、セナはそう言った。
それを聞いてアアアーシャは特別明るく答える。
「へっ、やるじゃねぇかセナ、オマエは見つけたんだぜ! 最強の助っ人をよ!」
「……アーシャさん……」
「兄ちゃんに教えてやったらビックリするだろうな! 楽しみだな!」
「……はいっ!」
いやどうなんだろうそれは。
眠気と戦いながらも健太郎は話を全部聞いていた。
子供に言うのも何だがセナの行動は短絡的で思慮に欠けるものばかりだ。
勝手に村を出てお兄さんが心配していないわけがない。
こういう人がチームワークを乱す。
健太郎の会社にも思い当たる人物が何人もいる。だいたいが上司や先輩だ。
そう、例えばあの人とかあの人とか……と、顔を思い浮かべていたら笑ってしまいそうになった。
チームワーク、そんなものあの会社になかったではないか。
どいつもこいつも、人の都合も作業量も納期も考えていやしなかった。
自分がやりたくない事や面倒事を押し付けていたにすぎないのだ。
自分勝手。会社の連中もセナもそこは同じだ。
しかしセナのは誰かの事を思っての勝手なら、うちの社のクソどもより何億倍も素晴らしいというものだ。
「……ん!?」
不意にアアアーシャの表情が険しくなる。
「アーシャさん? どっ、どうしたんですか?」
「この魔力は……何人かの人間がこっちに来るぞ」
「え?」
「しかもあんま良くねぇ感じだな。こいつは盗賊の類か」
「盗賊!? まさか……!」
セナが後方を確認すると、馬に乗った一団が追って来ているのが見えた。




