第6話 魔剣ホルダー、略してマホル
「本当に嬉しいです……! 最初、強き冒険者が集うとウワサのプシャレスって街に行ったんですが、そこではツノオオダコの名を出しただけで誰も話を聞いてくれなくて……」
冒険者。探しものから魔獣討伐まで依頼があれば何でもこなす、街の便利屋みたいなものだ。
大きな街には特定の依頼に特化した冒険者組合が存在し、プシャレスには腕自慢の冒険者が所属する魔獣討伐専門ギルドなどもある。
「ちっ! ひでぇヤツらだな!」
「……それだけ強敵なんでしょうね。ツノオオダコは」
「魔獣討伐も冒険者の仕事だろ!」
いきり立つ魔剣の魔人。
気のせいか、燃えるような赤い髪がさらに赤くなっている。
「……すぐに出発するのですか?」
「おう! 餅は磯部だ!」
善は急げ、と言いたいのだろうか。
しかしこの世界の言葉かもしれないので健太郎は黙って流した。
「では、ここでお別れですね」
「は? なんで?」
「あ、でも換金所の場所は聞いておきたいです」
「だから、なんでお別れなんだよ?」
「……セナさんの願いを叶えるために彼女の住む村へ行くんでしょう?」
健太郎はここでアアアーシャ達と別れるつもりだった。
魔獣討伐なら魔剣の能力があれば充分だ。
いてもいなくても何も変わらない、自分の力など不要だと。
そう思っていたのだが。
「いや、オマエも行くんだぜ?」
「……ふぁ?」
アアアーシャは当然のように言うので変な反応をしてしまった。
「魔剣はな、マホルである人間が持たねーと力を発揮できねーんだよ」
「……マホル……?」
「魔剣を抜いた者の呼び名。魔剣ホルダー、略してマホルだ」
「え、ダサ」
「オマエそのマホルだぞ?」
「ええ……」
もう少しマシな名称はなかったのか?
「……え? つまりそのマホルが持たないと炎ビームは撃てないってことですか?」
「そういうこと。魔剣の破壊力はすげーが、実際アタシ様だけじゃ出来る事は限られてるのさ」
「……なんでそんな面倒な仕様に……」
「そりゃ武器は人間が使うもんだから、だろ?」
そう言われると、確かにそうかもしれない。
人差し指を健太郎に向けて、くるくる回すアアアーシャ。
炎ビームを撃つ真似事のつもりだろうか。可愛い仕草だ。
「あとは相性だな。アタシ様とオマエ、すっげー相性良いんだぜ」
「……はぁ」
相性? いいのか? これで?
健太郎は全く思わなかったが。
「ウサギやタヌキを狩っていたとき何時間も戦えただろ? 普通はあんなに長く魔剣の力は使えねーんだよな」
「……そうなんですか」
「ああ。滅多にいねーよ、オマエみたいな相性のいい奴はさ」
これはマホルがどうとかカンケーねぇんだぜ、とアアアーシャは言う。
何となく、魔剣の力というのは無尽蔵というか限界はないのかと思っていたが。
「というわけで!」
アアアーシャが少々乱暴な勢いで肩を組んできた。
サラッサラの髪、大きな瞳に長いまつ毛、つやっつやの肌と唇を近づけて言う。
「オマエが必要だ! 健太郎、一緒にきてもらうぜ!」
「……」
まただ。気持ちが高まる。
代わりはいくらでもいると言われ続け。
誰でもできる作業をこなすだけの、感謝も尊敬も尊厳もない毎日。
だから、誰かに必要とされるなんて、そんな事は本当に久しぶりだ。
やはりこの世界は今の自分に必要な場所なのかもしれない。
「それにまだ、オマエの願いを叶えてねーしな?」
「ふぅ……アアアーシャさん。アナタも相当の欲張りですね」
「へっ! まぁな!」
魔人は右手の親指で鼻の下をこすった。
このポーズにどういう意味があるのかは分からないが、アアアーシャ達と一緒に行くことにした健太郎だった。




