第4話 美少女剣士、その名はセナ
「お願いします! 私達の村を助けてくれませんか!」
先ほどまで顔をそらしていた少女が、健太郎をまっすぐに見て言う。
やはり厄介事のようだ。
「……どういうことでしょう?」
「村を助ける? なんかヤバいのか?」
「はい……」
少女は言葉を続けようとしてはっとなった。
「ごめんなさい、名前、言ってませんでした。私はセナっていいます」
「ご丁寧に……僕は伊波健太郎です」
「ケンタロー、さん……」
「はい」
「セナ、か! いい名前じゃねぇか!」
「あ、ありがとうございます、魔人さま!」
「二文字ってのがいいよな、思い切りがあっ」
「セナさん。話を続けてください」
アアアーシャが余計な事を言いそうだったので手のひらを差し出して話の続きを促す健太郎。
セナもうなずく。
アアアーシャは不満げだが、確かに余計な話をしている場面ではないと思い直した。
「実は村の水源にツノオオダコが住みついてしまって……」
「……ツノオオダコ?」
「マジかよ! 大型魔獣だな。でっかいし、めちゃくちゃつえーぞ」
またツノだ。この世界の魔獣は基本ツノ付きなのだろうか。
大型と言ったあとにでっかいと言ったのも気になったが、とりあえずスルーした。
「ツノオオダコのせいで水量も水質も落ちてしまい、農作物に被害が出ているんです……」
村の話をしてから、みるみる元気が無くなってしまったセナ。
かなり追いつめられているようだ。
しかしセナが言いたい事は分かった。
「……なるほど、つまり」
「そのツノオオダコを倒して欲しいっつーハナシだな!」
「っ! ……は、はい……」
ツノザルを倒した時の炎ビームを見て、
この威力ならツノオオダコを倒せるのではないかと思ったというわけだ。
「おっしゃ! 任せろセナ! アタシ様にかかればツノオオダコなんて敵じゃねーぜ!」
討伐宣言と共に右腕を力強く突き出すアアアーシャ。
ツノオオダコがどれくらい大きいのか知らないが、あのえげつない威力に耐えられる生き物がいるとは思えない。
「そうなると、僕にではなくアアアーシャさんへのお願いになりますね」
「え……?」
「先ほどあなたを助けた攻撃、あれは魔剣の能力です。僕はただ剣を持っていただけですよ」
「そ、そうだったんですか!?」
セナは慌ててアアアーシャの方を向くと勢いよく頭をさげる。
「そうとは知らず……魔人さま、助けてくれてありがとうございました!」
「おう! 気にすんなよ!」
アアアーシャはセナの頭を撫でる。
ちょっと乱暴だが優しい撫で方だった。
セナも笑っている。ちょっと微笑ましい二人である。




