神と奇跡
冬の寒さも本格化し暖まるための薪や料理が必要になる季節。
それでも村の視察などはしないといけないのが辛いところである。
そんな中オルライトは先日聞いた異種族について調べていた。
なんとか会いに行けないかと考えているようではある。
「こんにちは、神父様」
「おや、領主様、こんな我々の様子を見に来るとは」
「神官やシスター達は村に出ているのかしら」
どうやら神官やシスター達は村に出て仕事をしている様子。
問題児とは言われても仕事はしっかりとしているようだ。
「それにしても寒いのに偉いわね、感心しちゃうわ」
「彼らなりに村への恩返しなんだと思いますよ」
「恩返しね、そう言ってくれると嬉しいわ」
「それで何かご用では」
「ああ、そうだったわ、神様って本当にいると思う?」
オルライトの唐突な質問。
神様は本当にいると思うかという事らしい。
神父様も少し戸惑っているようだが。
「神様の話はフユからいろいろ聞いてて少し考えていたのよ」
「神様がいるかどうかは分かりません、ですが神はいるものだと信じるのが信仰ですよ」
「なるほど、聖職者らしい考え方ね」
「神の話だと少し気になる話は聞いた事はありますね、所謂奇跡についての話です」
「奇跡?何か普通じゃ考えられない事という事かしら」
神父曰くかつて国の調査隊をある場所に何度か派遣しているという話。
その派遣された先には神の奇跡が眠っているらしいという嘘か本当か分からない話。
しかし調査隊が帰ってくる事はなかったという、つまりその場所で何かがあったという事だ。
「国がその場所に調査隊を送った、神の奇跡が眠っているという噂を信じて?」
「ええ、ですが送った調査隊は全て帰還する事はなかったという事らしいですよ」
「つまり奇跡を求めた調査隊は何者かに壊滅させられた、という事かしら」
「その可能性はあるでしょうね、神の奇跡が本当にあるという可能性にもなりますが」
「その神の奇跡を守っている存在がいて、調査隊はそれによって壊滅させられたのかしら」
調査隊が帰還しないという事はつまり、その場で一人残らず殺されたという事になる。
何度か派遣した調査隊は全て帰還しなかった。
つまりそれはその場に何かがいるという事になるのだろう。
「そんな話があったなんて知らなかったわ」
「神を信じるのが我々聖職者です、当然神の奇跡も信じているわけですからね」
「その調査の話も信じているって事かしら」
「完全に信じ切ってはいませんが、奇跡は実在するから帰らなかった、そうも受け取れます」
「でも結局奇跡ってなんなのかしら」
奇跡の正体までは誰にも分からないままである。
だが調査隊が帰ってこなかったという事は奇跡が存在する証拠なのではとも考える。
神父曰く神の奇跡は人が触れていいものではないのかもしれないと。
「でも神様が本当にいるのなら無慈悲な話よね」
「神がいるとしたらその眷属もいるという事になるでしょうからね」
「神の眷属、天使とかそういうものなのかしら」
「かもしれませんね、我々聖職者は神を信じるからこそ成り立つ職業なので」
「奇跡が眠ると言われる場所、帰らなかった調査隊、結論はどうなのかしらね」
なんにせよ国がかつてそうした事をしていたという話。
神の奇跡を求めた理由は国の繁栄や強国になるためという事なのか。
そこまでは分からないが、何かしらの思惑があったのは確かなのかもしれない。
「神様がいるかは分からないけど、いると信じるのが信仰、それもそうよね」
「我々は神を信じるからこその宗教なのですよ」
「神様への考え方も複雑なものね」
「そうですね、宗教というものは時に戦争すら引き起こしますから」
「神様をどのように捉えているか、そこは宗教的な話になってくるものね」
神様がいるかどうかは分からなくてもいると信じるのが宗教である。
神父様の考えは神様を否定しないが不確定なものとも考えている。
神様を信じるという事は宗教における基礎にして最初の一歩なのだとも。
「とりあえず話を聞かせてくれてありがとう」
「いえ、答えられる事ならまたいつでも聞きに来て構いませんよ」
「ええ、それじゃ風邪には気をつけてね」
そんな神父様なりの宗教観。
神様がいるかどうかは分からなくてもいると信じるのが宗教であるという事。
国は奇跡を求め調査隊を送っていた事がある。
神とその奇跡は実在する可能性はある。




