暑い世界と寒い世界
冬も近づき、寒さ対策を準備し始める季節。
先日の海賊はまだ来る様子はなく、しばらく様子を見る事にしている。
そんな中冬夕の世界では今は夏がもうすぐという事らしい。
こっちは寒くなり始め、向こうは暑くなり始めているのである。
「フユ、あなた薄着になったのね」
「アタシの住んでる国は高温多湿だから、薄着じゃないとやってられねぇんだよ」
「高温多湿って事は蒸し暑いっていう事よね」
冬夕の住んでいる国は高温多湿な国である。
そして冬は低温乾燥の気候なので、冬も夏もとにかくきつい国なのだ。
「それにしても薄着になると分かるけど、あなた意外とスタイルいいわよね」
「まあアイドルやってて体も絞ってるしな」
「フユの住んでる国って夏はそんなに暑くなるのよね」
「ああ、というか夏になる前からクソ暑くなる、夏は最高気温40度とかあるぞ」
「それ人間が住む環境じゃない気がするけど、よくそんな環境の土地に国があるわね」
極端な環境の土地だけにオルライトも驚くほかない。
夏は蒸し焼きにされるかの如く高温多湿なので、不快感も凄い暑さなのだ。
こっちの世界は今は冬の前だが、それでも冬夕の世界に比べれば暖かいという。
「フユの世界の話は何度か聞いてるけど、本当に暑い国なのね」
「昔はもう少し涼しかったらしいけどな、今は平均気温が上がったんだろうな」
「気温って要するに暑さや寒さを数値化したものっていう事よね」
「こっちはそういうのはないのか?」
「あるにはあるけど、それが分かる人は勉強とかしてる人ぐらいよ」
気温の数値化が分かる人はこっちでは珍しいという。
平民でも学校に通える国ではあるが、その辺は教えていない様子。
教える事をある程度絞っているという事なのか。
「それでフユの住んでる国は40度になるっていうけど、それ生きていられるの?」
「外に出たらまさに溶けるような暑さだから、冷房が効いた室内に引きこもるのが普通だよ」
「つまり冷やす技術はあるっていう事なのね」
「それはあるな、その暑さの中で屋外で活動してたら熱中症でマジで死ぬよ」
「熱中症?それって暑さでなる病気とかそういうのかしら」
こっちの世界は暑くても冬夕の世界に比べれば全然涼しい。
なので熱中症になるという事はほぼないのだという。
異世界の気温事情というのが伝わってくる。
「フユの言う暑さってそれこそ溶けるような暑さなのね、恐ろしい話だわ」
「夏はクッソ暑いし、冬はクッソ寒いし、春なのに夏みたいに暑いしな」
「外に出ると溶けてしまいそうなぐらい暑いのよね」
「ああ、熱中症っていうのは要するに暑さにやられてなる症状の事だしな」
「暑さと寒さの恐ろしさが伝わる話なんだけど、私にはピンと来ないわね」
冬夕が言う寒さと暑さの話はオルライトにはピンと来ないものだ。
数値上はよく分からないが、冬夕の体感では5度程度の差があるのは確かな様子。
夏も冬も地獄の冬夕の世界の気温は過酷なのだ。
「フユって暑さや寒さには強かったりするのかしら」
「強くはないと思うけど、多少は慣れちまってる気はするな」
「その環境に慣れすぎたという事なのかしら」
「でも人間暑さよりも寒さの方がたくさんの人が死ぬらしいぜ」
「それはつまり夏より冬の方が人がたくさん死ぬって事なのね」
冬夕曰く暑さよりも寒さの方が人はたくさん死ぬという。
それはつまり熱中症より凍死の方が数が多いという事だ。
とはいえ冬夕の世界はそれだけ暑くて寒いという事でもある。
「フユの住んでる国の環境って過酷すぎない?」
「まあ過酷だよな、北は豪雪地帯だし、夏は台風が来るし、火山や大雨もあるからな」
「よくそんな環境の土地で暮らしていけてるわね、自然災害が凄すぎるというか」
「実際アタシの国の歴史に、海を越えて攻め込もうとしたら台風で沈んだ話とかあるしな」
「自然災害がそんなに多いのに、その土地に住み続けてるとか凄すぎるわよ」
オルライトも驚く冬夕の住むニホンという国の話。
自然災害大国であるそんな土地に何千年と住んでいるのである。
歴史というのは面白く、暑さ寒さも彼岸までという事なのかもしれない。
「こっちに来ると快適そうにするわよね、フユは」
「夏はいい感じだし冬も寒すぎないからな」
「環境ってそれだけ影響するのね、凄い話だわ」
オルライトも感心してしまう冬夕の暑さと寒さの事情。
ニホンという国は自然災害大国であり、殺人級の暑さ寒さが襲い来る。
そんな土地に住んでいるという時点で驚きなのである。
異世界というのはお互いから見ても凄い世界だと感心するばかりである。




