村から街へ
秋も本格化し村の発展もかなり進んできた季節。
とはいえ目標の人数か納税額にはまだ届かない。
四年という期限内に目標を達するためにあの手この手を考える。
そんな村も少しずつ街に変わりつつあるようで。
「かなり舗装なんかも進んできたのね」
「ああ、村も発展してきて人手も増えてきたからね」
「村の発展もまだまだ進めていかないとね」
こうした村の舗装に使われるものはベルとその研究室の人達が作ってくれる。
それもあり村の人達の手で舗装も進んでいったという事だ。
「それにしても人もずいぶんと増えたものね」
「オルライトがきちんと領主代行として仕事をしてきた結果だろうね」
「そうね、でも約束の人数にはまだまだ足りないわよ」
「結婚したくないっていうのは理由でもあるのかな」
「結婚したくないというか、勝手に決められるのが嫌なだけよ」
オルライトはこれでかなり我が強い性格でもある。
なので例え相手が親であろうとも勝手に話を進められる事が許せないのだろう。
自分の意志で何かを決めたいという気持ちの強さがオルライトの本質だ。
「ベルは私の婚約者にはなってくれないのかしら」
「また僕を振り回すつもりなのかな」
「そんなつもりはないけど」
「なんにせよ僕はまた別の婚約者を家の方で決められるだろうね」
「貴族っていうのは難儀なものよね」
そんな家の事情もあり、オルライトは我を通し続けているというだけの話である。
それでもいつかは誰かと結婚するのだろう。
その相手を親であろうとも誰かに勝手に決められるのが許せないというだけなのだ。
「もうすっかり村というより街よね」
「そうだね、だけど使える土地はまだまだあるし、人はまだまだ全然入るよ」
「お父様に言われているのは一万人だものね」
「結構な人数を言ってきたよね」
「お父様はそれぐらい言えば諦めると思ってるのよ、私の事を分かってないと思うけどね」
オルライトは嫌な事を避けるためにはとにかく力を尽くすタイプだ。
婚約の話も気に食わないからこそ全力で抵抗したにすぎない。
とはいえ領主代行としては思わぬ才覚を発揮しているようだが。
「それにしてもこの村の近くある伝承の樹は相変わらず立派なものね」
「あの樹はこの領地が出来る前からあるらしいけど」
「それだけ古い樹なのよね」
「あの樹は何か特別な力を持ってるとも言われるけど、本当かは分からないものだよ」
「特別な力ね、でもなんとなく本当の話のようにも感じるわ」
伝承の樹に関する噂は数多くある。
とはいえどれも噂話にすぎないものばかりだ。
それでもそれだけの歴史があるのもまた事実なようで。
「村も舗装が進んできて、本格的に街へと発展していきそうね」
「人も増えてるし、四年目の終わりまでに達成出来る算段でもあるのかな」
「算段は流石にないけど、目標を達成させられるだけの覚悟は決めてるわよ」
「君は昔からそうやって行動で示してきた人だからね」
「あら、行動もせずに信用や信頼が勝ち取れると思ってるような性格はしてないわよ」
オルライト曰く信用や信頼は行動でしか勝ち取れないと考えている様子。
なので村の発展についても行動で全てを勝ち取ってきた。
今ではすっかり慕われているものである。
「それでまた何か新しい事を考えたいんだけど何かないかしら」
「大体のものは揃ってしまったからね」
「そうなのよね、機械なんかも導入して仕事の効率も大きく上がってるし」
「まあやりたい事をやってみればいいと思うよ」
「そうね、村の人達に何か欲しいものがないか聞くのも大切だし」
現場の声を聞くという事は何よりも大切な話だ。
オルライトもそうした村の人達の話を聞いて必要なものを揃えていった。
現場が欲しているものはとりあえず確保するのも大切なのである。
「とりあえずベル、まだまだ作ってもらうわよ」
「分かってるよ、それが僕らの仕事だしね」
「必要なものがあるなら遠慮なく言ってきていいからね」
「ならこれを用意してもらえるかな」
「…相変わらず調子がいいわね」
ベルに用意して欲しいもののリストを渡される。
とりあえずそれを受け取りきちんと用意してあげる事にした。
研究にも資金と材料や道具は必要不可欠なのだ。
「さて、現場の声でも聞きに行ってくるわ」
「僕も研究に戻るとするよ」
「また新しい土地の情報があるといいけど」
そんな村も街へと発展していきつつある。
人がたくさん増えた事もあり、土地の確保がさらに必要になる。
新たな土地の調査が来るのも待たねばならない。
オルライトの領主代行三年目までもう少しである。




