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服屋の挑戦

秋も落ち着き始め少しずつ寒くなってきた季節。

海賊の話はあれから聞かないものの、油断はしないでおく事にする。

そんな中服屋のヴィクトリエルが新たな挑戦をしてみようという話が出た。

その挑戦とはあるものの再現らしいが。


「何かあったのかしら」


「これはオルライト様、ちょっと試作品が出来たので見ていただきたくて」


「試作品?とりあえず見せてもらえるかしら」


そう言ってディミトリアスが持ってきたのは冬夕が着ていた学生服だった。


見せてもらってから型紙を作り、実際に作ってみたという。


「これは凄いわね、フユが着ていた学生服まんまだわ」


「はい、流石に同じ繊維や糸は手に入らなかったですけど」


「それでも同じデザインで作れるなんて凄いじゃない」


「そこで相談なんですけど、手始めに貴族なんかに売ってみません?」


「それが本題ね?売れるという保証はないけど、それでも挑戦するのはいいと思うわよ」


どうやら本題はこの学生服を王都にある貴族の学校で採用してもらえないかという事。

そこに売り込んでいってもし採用されればそのまま他の学校にも売り込みたいという。


つまりそれは貴族の学校に制服を広められないかという事でもある。


「要するに貴族の学校に採用させて、その制服を産業にしようっていう魂胆ね?」


「はい、どうでしょうか?」


「なかなかいい話ね、もし採用されればそこからもっと広まっていくかもだし」


「貴族相手なら多少値段を高くしても問題ないですしね」


「あなた、意外としたたかな商売人よね」


もし最初の一つが採用されればそこから一気に広まるかもしれないという考え。

そうして広まっていけば制服を生産する服屋としてブランドも確立出来る。


ディミトリアスに商売人らしいしたたかさを垣間見た気がした。


「ならやってみるといいわ、もし成功したらそれがそのまま産業になるし」


「ついでにブランド化も出来ますしね」


「それに加えて元々平民でも買える服屋という店の貴族向け商品になるものね」


「ええ、うちは元々平民でも買える服がキャッチコピーですからね」


「そんな中でも貴族向けの服もしっかり売っていたのだったかしら」


ヴィクトリエルドレッサーは平民でも買える服がキャッチコピーである。

その一方で貴族向けにもしっかりといい服を売っていた。


要するにターゲットを明確にしたブランド構築をしていたという事だ。


「それでまずはどこに売り込むつもりかしら」


「そうですね、まずはそんなに大きくないところに売り込んでみようかと」


「ふーん、いきなり大物を狙いには行かないのね」


「まずは食いつきそうなところを狙うのもまた戦略ですよ」


「あなた、実はやり手の経営者よね?」


ディミトリアスが最初に狙うのは中規模な学校なのだという。

そこでもし制服が採用されれば、そのまま口コミや学校の評判から広まっていく。


それは産業としての確立やブランド化を目指すという魂胆からでもある。


「もし採用されたら、今後の新入生なんかも気に入ってくれるのかしら」


「そうですね、今年からいきなり採用させるのは無理なので次の新年度からですが」


「まあそうなるわよね、実際に採用されればこの村の産業としても確立されるし」


「ええ、オルライト様は産業作りもしているようですから」


「なるほどねぇ、考えてくれるじゃない」


オルライトはこの村に産業を作るという事にも力を入れている。

そこでヴィクトリエルドレッサーは産業として学生服を作ってみようと思ったのだと。


挑戦ではあるが、もし上手く行けば大きな産業になるという確信もあるようだ。


「ならやってみなさい、責任は私が取るから」


「はい!必ずや売り込んでみせますよ」


「それにしても学生服のデザインをそのまま作るとは、大したものね」


「生地こそ手に入らなかったものの、デザインを真似るぐらいは出来ますからね」


「そこは流石の服屋という感じがするわねぇ」


ディミトリアスの制服の売り込みが成功するかは今は分からない。

だがそこは服屋としての戦略があるのだと思っておく事にした。


学生服は新たな産業になるのか、服屋の営業の手腕が問われる事になりそうだ。


「とりあえず、採用が決まったら報告はしてね」


「はい、早速うちの営業担当に売り込みに行かせますよ」


「産業になったらそれはそれで面白そうな話ね、ふふ」


そうしてヴィクトリエルドレッサーの営業が王都の学校に売り込みに行く事になった。

学生服が採用されればそれは新たな産業になる。


今までの地味な感じのものではなく、新たなデザインの学生服。


女物の制服も、男物の制服も新たなセンセーションは起きるのだろうか。

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