大豆があるではないか
冬夕もこっちの世界に飛ばされる事はすっかり当然になってきた。
スマホも転送装置になっている関係で今のものを処分せずに新機種を買ったとか。
それにより前に使っていたスマホが完全に転送するための媒体と化している。
とはいえこっちではネットなんて当然繋がらないので、持ち込めるようである。
「そういえばフユの持ち物ってこっちに持ち込めるものはあるのよね?」
「ああ、スマホはどうせネット接続出来ないのと、あとはアナログなものぐらいか」
「つまりこっちでも使える機械類みたいなものは持ち込めないって事なのね」
こっちの世界に持ち込めるものの基準は恐らくアナログなものに限られるのか。
機械類は使い物にならない程度のものは持ち込めるようだ。
「そういえばエルフが育ててる豆があるんだけど、何かいいレシピとか知らない?」
「豆?どんな豆なんだ?」
「えっと、確かここに…ああ、これだわ」
「これ大豆じゃねぇか、大豆って万能な豆の筆頭だぞ」
「ダイズ?これはエルフラージビーンなんだけど」
名前こそ違うが冬夕が見る限り大豆である事は間違いなさそうだ。
冬夕曰く大豆はそれこそ万能な豆なのだという。
様々な食べ物に使えるという某モンスターのイーなんとかのような食材だ。
「実際何に使えるの?こっちだとスープにするかサラダにするとかはあるけど」
「全部説明すると長くなるな、とりあえずいろいろ使えるのは確かだぜ」
「出来そうなものだけでいいから教えてくれるかしら」
「出来そうなものか、豆乳とかきな粉、あとは豆腐とか味噌、おからとか他にもだな」
「なるほど、作れそうなものって何があるかしら」
こっちの世界で納豆や味噌のような発酵食品は作れるのだろうか。
というか納豆には納豆菌が必要なので、試してみないと分からない。
発酵そのものは倉でも立てれば出来るかもしれないが。
「その発酵っていうのはなんなの?」
「意図的に腐らせた食品の事だよ、腐敗は毒だけど発酵は無毒だからな」
「腐らせたって、それを食べても平気なものなの?」
「こっちの世界にもチーズはあるだろ?あれも発酵食品の一つだぜ」
「チーズって発酵食品だったの!?腐ったミルクだったのは流石に知らなかったわよ」
チーズは当然こっちの世界にもあるし、平民でも買える程度には浸透している。
なお発酵食品だと知っているのは生産者だけだし、発酵という概念も言葉が違う。
オルライトもそれには流石に驚いたようで。
「つまりその発酵食品って意図的に腐らせてある食品の事なのね」
「ああ、専用の蔵でも作れば味噌とか醤油ぐらいは作れるんじゃね?」
「とはいえそれの作り方が分からないのよね、知識のある人がいればともかくなんだけど」
「アタシでも流石にそこまでは詳細には知らないからな」
「そうね…うーん、試してみたくなったから人探しから始めないとかしらね」
知識を持つ人がいれば味噌や醤油は作れるであろうと考える。
そういえば以前食べた餃子は醤油を使って食べていたのを思い出す。
大工の人達はそれに関係する知識があるのではないかと考えたようだ。
「それはそうとナットウ?っていうのはどんな発酵食品なの?」
「納豆菌っていう菌を使って作るんだ、藁に大豆をくるんで発酵させたのが始まりらしい」
「藁でいいの?」
「藁で作る納豆はアタシの世界でもまだ作られてるからな、こっちの藁で出来るのかね」
「うーん、試作してみて出来るかどうか調べる必要があるかしら」
その辺は試作が必要になるのは言うまでもない。
ただ納豆は自国民ですら好みが分かれるような食べ物だ。
こっちの世界の人に受け入れられるという保証もない。
「とりあえず試作はやってみるわ、あとは知識…東の国の人ってこの国にもいるのかしら」
「その辺は人探しすれば手がかりぐらいは出てくるんじゃないか」
「そうね、エルフラージビーンは元々たくさん作れてるから使えるならありがたいし」
「味噌や醤油に限らず豆乳とかおから、きな粉なんかも出来るんじゃないのか」
「それも含めて人探し、それか本でも探してみるべきかしら」
なんにせよこっちの世界の大豆でも似たようなものは作れるかもしれない。
餃子の時に醤油は確認している以上、大工の人達は恐らく知っているはずだ。
そこから伝を辿れば東の国の人に行きつけるかもしれない。
「なんにしても情報ありがとうね、いろいろ調べてみるわ」
「ああ、ただ大豆は食いすぎるとホルモンバランスが崩れるから気をつけろよ」
「よく分からないけど、食べ過ぎは駄目って事ね」
大豆に関してはいろいろと知識や技術が必要になってくる。
とりあえず話だけでも聞いてみる事にはする。
その一方で発酵食品に関しても知識が必要なのは確かだ。
簡単そうなのから始めて味噌や醤油などの発酵食品は人を探してからになりそうだ。




