魔界の王襲来
マテリアルハンドのメンバーも村に入り二年目が本格的に始動した。
そんな中新たな施設や村の開拓なども調査や建設が進んでいく。
村もだいぶ賑やかになり人も増えてきているためその辺の調整もする必要がある。
そんな村に意外な来訪者がやってきたようで。
「バルカ、何事なの」
「オルライト様、実はやたらと強い女の子が暴れてまして」
「やたらと強い女の子?とりあえず行ってみるわ、ありがとう」
その騒動の起きている方に向かうオルライト。
そこでは明らかに子供に見える子が自警団をのしていた。
「あなた!一体何をしているの!」
「む?お前がこの村の領主か」
「一体何をしているか聞かせてもらえるかしら」
「この村が面白そうなので立ち寄ったのだ、そうしたら囲まれたので相手をしただけだ」
「立ち寄った?つまり自警団達が勘違いしたって事?」
その女の子は頭に角が生えている事から人間でない事は窺える。
するとその女の子はオルライトを見て不敵に笑う。
オルライトも要求は一応聞く事にした。
「あなた、何が目的なの?」
「別に敵意はないぞ、そうだな、お前、私と勝負をしないか?」
「勝負?こっちにはそんな義理はないわよ」
「もしお前が勝てば、なんでも要求を聞いてやる、どうだ?」
「そうね、なら相手をしてあげるわ、約束は守ってもらうわよ」
とりあえずその要求に応え周囲を広く空けてもらう。
なんか面白そうな事をしていると聞きつけ村人たちも集まってくる。
そしてオルライトと謎の女の子のガチファイトが始まる。
「ふぅっ…はあっ!!」
「ぬうっ!?くははっ、面白い!人間にしては面白いな!」
「ふっ!はっ!そのまま投げる!」
「甘いぞ!それぐらい対処出来ぬと思ったか!」
「こっちだってそれぐらい想定してるわよ!」
衝撃波が飛んでくるようなオルライトと謎の女の子のガチファイト。
そのままお互いに決め手を欠いていたが、オルライトがその一瞬を見逃さなかった。
刹那の間にオルライトの渾身の拳が女の子の顔を捉えそのまま叩き込まれる。
「どう!」
「くははっ!まさか人間風情がこの私の顔に拳を入れるとは、面白いな」
「…観念したのかしら」
「約束は約束だ、要求を言うといい」
「とりあえず何者なのかをまず聞かせて」
その女の子が言うには魔界の王なのだという。
魔界の話自体は聞いた事があるオルライト。
とはいえまさか魔界の王がこんな幼い女の子だというのは想定していなかったようで。
「本当に魔王なの?からかってないわよね?」
「本当だぞ、しかし人間にこんなに強い奴がいたというのは実に面白い話だ」
「こっちだってコンマ数秒の判断を誤ってたら負けてたわよ」
「ふむ、ならばお前を気に入った、この村を見る限り村の開拓をしているな?」
「ええ、そうだけどそれが何か?」
その女の子は魔界の王である。
もし援助や協力を取り付けられれば村の発展の役に立つだろうと考える。
無理を承知で聞いてみる事に。
「ねえ、嫌じゃないなら村の発展に力を貸してくれない?」
「私がか?村の発展を手伝えというのか?」
「ええ、もちろん無理にとは言わないわ」
「ふむ、いいだろう、私を負かしたのならばそれに従おう、人も貸すし資源も売ってやる」
「いいの?本当に?」
女の子曰く強い相手には従うのが魔族の流儀らしい。
オルライトはそんな自分の顔に拳を叩き込んだはじめての人間なのだと。
ならばその強さに敬意を表し、それに従うのだと。
「なら約束よ、あと一応契約なんだから書面にサインしてもらうけど」
「人間とは面倒だな、だが強き者に従うのが魔族の流儀、構いはせぬ」
「ならこっちに来て、あと名前を聞いてなかったわね」
「ミラール、ミラール・ミラーダだ」
「分かったわ、よろしくね、ミラール」
そのまま領主館に行き魔界との援助についての契約を交わす。
それにより魔界からの人材契約と資源などの売買契約が締結される。
ミラール曰く近いうちに魔族と資源を扱う商人を派遣してくれるとのこと。
「そういえば魔族って仕事とかは何が出来るの?」
「基本的にはなんでも出来るぞ、必要な仕事を任せてやればいい」
「そう、あと資源は主に何があるのかしら」
「魔界は鉱物資源が豊富でな、あとは必要なものがあれば伝えてくれればいい」
「分かったわ、ならよろしく頼むわね」
魔族達はミラールが魔界に帰ってから数日のうちに派遣出来るとのこと。
賃金もきちんと払ってくれるのなら問題なく働いてくれるだろうと言う。
魔界の資源は主に鉱物資源が豊富で、他にも様々な資源が採れるとか。
「とりあえずは契約成立ね」
「私は一旦魔界に帰る、数日のうちに魔族達が来るであろうから好きに使ってやれ」
「ええ、感謝するわね」
そうしてミラールは魔界に帰っていった。
契約にあった通り人と資源を使わせてもらえる事となる。
ミラールとの勝負も一瞬の判断の差でオルライトが勝てたに過ぎない。
それぐらいミラールは強かったとオルライトは後に語っていた。




