新たな開拓
寒さも落ち着き始め少しずつ春に向かっていく季節。
とはいえ春本番にはまだ先である。
そんな中マリアナから土地の調査に関する報告が上がってくる。
新たな住民を募る上で新たな土地を開拓する事が必要になる。
「お待たせ、新しい使えそうな土地が見つかったのよね」
「はい、こちらが調査報告書で」
「ふむ、確かにこれはいいわね、使える範囲も広いし」
新たに開拓可能な土地はなかなかに広い空間が使える様子。
なので大きめの施設をメインに建てる事になりそうだ。
「空間が広いって事は住居はもちろんだけど、施設を多く建てられそうね」
「他にも植樹などもしておくと何かと便利かと思いますよ」
「なるほどね、とりあえず土地の開拓を始めるように指示を出しておくわ」
「こちらはまた土地の調査を続けるので、結果が出たらまたご報告させていただきますね」
「さて、また何か考えないとね」
何かと使えそうなものは揃っているが、それらをするには施設が必要でもある。
施設を建ててしまえばあとは人を動員する事になる。
その施設で働く人にきちんとした教育もする必要がある。
「うーん、今建設中の施設の他にまた何かと考えていかないとだけど」
「おや、今日は珍しくお悩みですか」
「あ、バルカ、ええ、少しね」
「相談に乗れる事があれば相談に乗りますが」
「施設の他に何か人を呼べるものを考えていたんだけど」
考えているのは人を呼べるもの。
その上でリピーターになってくれそうなものでもある。
施設の他に観光などにも力を入れていきたいところではある。
「何かないかしら」
「公園とかキャンプ場みたいなのでも作ったらどうです？」
「公園とかキャンプ場ね、でも宿屋とかも建てるつもりなのにキャンプ場ね」
「あとは噴水とかそういうのはどうです？」
「なるほど、とりあえずそういうのは考えておくわ」
出来そうなものは一通り考えとしてまとめておく。
もちろん全部出来るというわけではない。
予算と相談した上でその辺の取捨選択も必要になる。
「あら、なんかいい匂いがするわね」
「お、オルライト様、相変わらず村の見回りかい」
「ええ、それとこの匂いは？」
「こいつはチーズスープってやつだよ、ダークエルフがよく食べているんだってさ」
「へぇ、チーズスープね」
エルフは菜食である一方でダークエルフは普通に動物性のものも食べる。
だからなのか乳製品などもダークエルフは作っていたりする。
肉類を作る他にも乳製品もダークエルフの得意とするものでもある。
「それにしても本当にいい匂いね」
「食べてみるかい？」
「ならいただこうかしら」
「はい、どうぞ」
「…うん、これは美味しいわね、体も温まるし少し焦げたチーズが美味しいわ」
チーズスープは少し焦げたチーズが何よりも美味しいという。
そこに芋や肉などを入れても美味しいのだとか。
芋はエルフが育てているのでそこから譲ってもらっている。
「そういえばフユから教わった料理とかは問題なく作れそうかしら」
「出来そうなものに絞ってるからたぶん問題はないよ」
「ならとりあえずは安心かしらね」
「でもあの子異世界ってところから来てるんだろ？」
「そうらしいわね、なんで突然そんな事が起きたのかしら」
冬夕がこっちに来る直前に大きめの地震があった。
もしかしてその地震のせいなのかとは考えてしまう。
伝承の樹が近くにあるという事もあり、何か奇跡のような事でも起きたのかとも。
「異世界から来たっていう事は、何かしらの理由で繋がったって事なんだろうけど」
「そうだねぇ、でも伝承の樹が何かしらの奇跡を起こしたとかなのかねぇ」
「確かにあの樹は伝承は何かと残ってるけど、実際はどうなのかしらね」
「まあオルライト様にもいい友人が出来たって事ならいいんじゃないかね」
「友人ね、まあ確かにそれも悪くはないものね」
冬夕がこっちの世界に来た理由については分からない。
とはいえ彼女が来るようになってからオルライトも楽しそうだ。
なんにせよ彼女が来る前に起きた地震が関係しているのかもしれない。
「さて、美味しかったわ、ありがとう」
「ああ、また何かアイディアがあったら言っとくれよ」
「ええ、その時はまた頼むわね」
冬夕が持ってくるアイディアの他に村の住民の他種族からも何かとヒントは得られる。
エルフの野菜や穀物料理、ダークエルフの肉や乳製品の料理など様々。
ドワーフやハイランダーもいるので、食だけでも多様なものに触れられる。
土地が広がれば施設の他に畑なども増やしていけるのだから。
