雪解けの季節
冬も明け始め山の方では雪解けも始まった季節の変わり目。
寒さはまだ続くが、これから少しずつ暖かくなる。
それに伴い全ての本番でもある二年目が始まる。
下地は可能な限り整えてきたため、ここから人集めやさらなる開拓が始まる。
「山の方では雪解けも始まっているそうよ」
「ほう、こっちの世界はもうそんな感じなんだな」
「ただ本格的に暖かくなるのはもう少しかかるけどね」
そんなこっちは春が近づく一方で、冬夕の世界は秋が近づいているらしい。
なお残暑で暑さはしばらく続くとか。
「そういえばお米が結構採れて輸出とかも考えてるんだけど」
「こっちの世界って米を食うのか?パンを食ってるイメージなんだが」
「エルフが基本的に菜食だから、小麦だけじゃなくお米も作ってるのよ」
「マジか、菜食って米なんかもありなんだな」
「お米を使った何かいいアイディアとかないかしら」
エルフの菜食文化もあり、小麦の他に米も結構な量が採れるという。
茶葉の生産も着手したので、二年目からは茶葉も余裕が出来そうだ。
いろいろ産業として作っているが、人手の問題もありなんでもやるわけにはいかない。
「フユの国は米食文化って聞いたから」
「なら米の食い方を広げればいいんじゃねぇの?お茶漬けとかおにぎりとかあるだろ」
「おにぎりは分かるけど、オチャヅケ?」
「要するに米にお茶をかけて食うんだよ、あと梅とか鮭とか海苔があるといいな」
「魚と海苔はたぶん確保出来るけど、梅ってプラムの事でいいのよね?」
その辺は簡潔に説明する。
その上で意外と出来そうだという事も理解する。
茶葉の知識が広まれば緑茶なんかも確保する事は出来るであろう。
「ふーん、なかなか面白い食べ方をするのねぇ」
「あとは混ぜご飯、要するに具を混ぜ込んで炊く食い方もあるな」
「つまりお米を炊く前から肉や野菜なんかを一緒に入れて炊くって事かしら」
「そうそう、あとは雑穀米とか五穀米みたいな健康食品的な米もあるな」
「なるほどね、そういう料理ならたぶん難しくないと思うわ」
ただこの村には出汁の概念がまだ完全に定着していない。
それが定着すればさらなる料理における発展が見込める。
五穀米などについては簡単に説明しておく。
「その雑穀米とか五穀米っていうのは一から作らないと厳しそうね」
「まあその辺は出来るならやればいいさ、元々取捨選択してやってんだろ」
「ええ、ただ料理というのはいろいろ出来そうだわ」
「でもなんで料理に力を入れるんだ?」
「美味しい食文化というのは人の定着や外からの誘致には強い力になるからよ」
食文化は人を惹きつける要素としてみているオルライト。
実際冬夕の住んでいる国もその食文化による外国からの来客も多かったりする。
人がやってくる理由は様々だが、美味しい食があるというのは大きいのだ。
「とりあえず食には力を入れるとして、住民が増えればその分労働力も増えるもの」
「なんでもやるわけにはいかないって言っててもそれは人の数次第だもんな」
「ええ、もう少しで5000人に届くから二年目からもっと募っていかないとね」
「貴族様の苦労ってのはアタシにはさっぱりだ、住んでる世界が違うよなぁ」
「なんにせよ食に力を入れれば人は集まると思うから、食の安定は何より大切なのよ」
オルライトは食の大切さを考えているのだろう。
きちんと食べていけるというのは人を集める上でかなり重要になる。
またそうして集まった人に労働環境を与える意味でも様々な事を手広くやるのだ。
「労働環境の提供と食の安定は人を集める上では何よりも大切だと思ってるから」
「でも分かる気がするわ、待遇のいい労働環境があるなら誰だってそこがいいしな」
「そうでしょう?その辺を整えておけばある程度は向こうから来てくれるもの」
「オルライトってすげぇんだな、貴族ってもっと傲慢で偉そうな奴だと思ってたぜ」
「あなたの思っている貴族ってどんな人なのよ」
冬夕の思う貴族観は自分の世界の政治家などを見てきたからなのかもしれない。
貴族にもドラ息子もいれば国の中枢で国のために働く人もいる。
貴族や金持ちにもガチの外道から国のために身を粉にする人まで様々という事でしかない。
「なんにせよお米のアイディアはありがとうね、相談していろいろ試してみるわ」
「ああ、その時はまた試食でもさせてくれよな」
「豊かな食文化の国の人の意見って何かといいものね」
お米を使ったアイディアはきちんと活用させてもらう事に。
これから春になり二年目が始まっていく。
目標の四年目までに目標は達成出来るのか。
試行錯誤は目的を達するまで続くのである。




