茶葉を作る
冬も本番は過ぎ去り春に向けて気候が穏やかになり始めた。
それもあり村の方も少しずつ暖かくなり始めた様子。
春は近くまで来ているので、それに向けての準備なんかも進み始める。
全ての本番は冬が過ぎ春になった二年目からだ。
「ねえ、少しいいかしら」
「これはオルライト様、また何か無茶な要求でも?」
「あのねぇ、少し相談があって来ただけなんだけど」
エルフに相談があるという事はまた何かを考えたのだろう。
とりあえず出来る出来ないは置いておき、話だけはしてみる。
「茶葉って作れないかしら」
「茶葉ですか?」
「ええ、今もお茶には困ってないけど、茶葉は作ってないのかなと思って」
「そうですね、茶葉は作れるとは思いますよ、エルフの作るお茶は評判ですし」
「なら村でも茶葉って作れないかしら」
オルライトが相談してきたのは茶葉は作れないかということ。
エルフの人が言うには茶葉を作る事自体は以前からしていたという。
産業として茶葉も使えないかという相談だ。
「それで村でも作れたりしない?」
「土地があれば作れると思います、幸い水や土は悪くないですから」
「なら茶畑って作れたりする?」
「作れるには作れますけど、今担当している仕事から何人か外さないといけませんね」
「数の問題ね、なら他の生産に影響が出ない程度の人数では出来るかしら」
規模は大きくなくていいというのがオルライトの提案だ。
用意してもらった人数からして、もう少し産業を増やしてもなんとかなると踏む。
ただなんにでも手を出せば生産力は当然低下する。
「とりあえず、という事で頼めるかしら」
「分かりました、しかしなぜ茶葉なんですか?他にもいろいろあるのに」
「フユから聞いたんだけど、茶葉って発酵?の具合でいろんなお茶になるらしいのよ」
「そうなんですか?」
「ええ、だから茶葉を生産出来れば多様なお茶を作れないかと考えたの」
茶葉は同じ茶葉から発酵具合などで多様なお茶に変わる。
なので茶葉の生産が上手く行けば、多様なお茶を産業として一気に手に出来るのだ。
それを踏まえた上での相談である。
「それで頼んでもいいかしら」
「構いませんよ、まあその多様なお茶の作り方についてはあとから聞くとして」
「ええ、お茶の可能性は結構大きいみたいだから」
「しかし発酵ですか、貴族などには紅茶が人気ですけど」
「他にもお茶はいろいろあるってフユが言ってたのよ」
冬夕の吹き込む事も嘘は言っていないものは多い。
それがこっちの世界で出来るかはいろいろと検討になるが。
それでもやらないよりはやってみようという事になるのがオルライトだ。
「お茶は茶葉の状態によっていろんなお茶になるらしいから、そこからね」
「つまり研究をしてみる価値はあるという事ですね」
「ええ、緑茶っていうものとか烏龍茶とか他にもいろいろあるらしいわ」
「そういえば異国の地ではお茶の文化が発達した国もあると聞きましたね」
「そうなの?だとしたらフユの世界もそんな感じの世界なのかしら」
エルフの人が言うにはお茶の文化が発達した異国があるとのこと。
世界は広いので、そういう国があるのも当然だろう。
こっちの世界にも東方の国があるという事なのかもしれない。
「私達は紅茶を当然のように飲んでるけど、他にもお茶ってあるものなのね」
「お茶の文化が発達した国では食事に合わせてお茶を飲む文化があるとか」
「へぇ、外国の事はそれなりに勉強したつもりだったけど、知らない事もまだあるのね」
「恐らくフユ殿が言っていた多様なお茶とはそうしたお茶の事かと思いますよ」
「それもそうね、それなら納得だわ」
冬夕自身が日本人である。
なので近隣の国の文化なども入ってくる国に住んでいる。
お茶の文化があるのは言うまでもない。
「それにしてもお茶の文化ね、食文化はその国の象徴みたいな感じなのかしら」
「食文化というのは国や人の礎とも言えるものですよ」
「確かに他の領地ですら食文化は変わるから、国が変わればもっと変わるわよね」
「ええ、我々エルフの食文化も歴史などがあるものですし」
「だからお茶も当然その食文化に組み込まれている、なるほどね」
とりあえず茶葉の交渉はまとまった様子。
あとは上手くいく事を願うのみである。
春になれば全ての本番である二年目が始まる。
「それじゃ茶葉の方も任せるわね」
「はい、仰せのままに」
「ええ、それじゃ私は仕事に戻るわね」
そうして新たに茶葉の生産も始める事に。
二年目から本格的に始まるものの上手くいく保証はない。
それでもやれる事は出来る限りやってみるのがオルライトだ。
茶葉の生産は上手くいくのだろうか。




