食パンの食べ方
オルライト達の世界は今はすっかり冬模様。
寒さの中でも体を暖めるのはやはり食であるという事。
そんな寒い日に冬夕が伝えた料理の知識なども研究されている。
料理というのは材料の使い方でもある。
「これがフユの言っていた食パンなのね」
「はい、言われた通りに作ったので間違いないかと」
「なるほど、試作品は出来たとして何か美味しい食べ方とかないかしら」
食パン作りはとりあえず成功したとの事。
様々な種族がいるからこそいろいろ作れるのである。
「それでこの食パンってどうやって食べるのかしら」
「フユさんが言うには好みの厚さに切って焼いて食べるのが美味しいと言っていましたね」
「焼いて食べるの?」
「はい、表面がサックリする程度に焼くのがいいそうです」
「ならとりあえず焼いてみましょうか」
とりあえず六枚切り程度の厚さに切って焼いてみる。
とはいえオーブントースターなんてものは当然ない。
なのでフライパンで焼いている。
「こんな感じかしら」
「だと思います、あとはバターやチーズ、ジャムなど好みのものを使うとか」
「とりあえずバターでも塗ってみましょうか」
「バターが面白いように溶けていきますね、そして染み込んでいきます」
「ではいただいてみましょうか」
焼いたパンにバターを塗って食べてみる。
オーブンで焼いたのとは当然違うので、食感なども違う。
とはいえそこまで不味くはないようで。
「ふむ、意外と美味しいわね、でも焼き方はなんか違う気がするわね」
「フユさんが言うには食パンはトースターとかいうもので焼くと言っていましたが」
「トースターがどんなものが分からないけど、パン焼窯の要領で出来ないかしら」
「ふむ、一応試行錯誤はしてみます」
「それにしてもダークエルフはパンの食文化でエルフは米の食文化なのね」
エルフは米食文化の種族である。
動物性のものが食べられないという事からエルフに米が広まったのだろう。
なのでエルフの育てる米は美味いのだ。
「食パンは焼いて食べるのが美味しいと言ってもフユの言うトースターはないものね」
「それについてはダークエルフの技術でなんとかしてみます」
「ええ、それにしてもフユって普段からこんな白パンを食べてるのね」
「フユさんの世界はそれだけ裕福な世界なのでしょうね」
「白パンが当たり前に食べられてる世界なんて大したものよねぇ」
こっちの世界では白パンは当然お高いものである。
なので冬夕の出してくるパンのレシピは基本的に白パンを使ったものばかりだ。
そこは世界の違いを感じさせると言える。
「でも白パンを安く提供出来るようになったらそれこそパン屋は大変よねぇ」
「少なくとも庶民や平民に出せる金額では売れないでしょうしね」
「この村の観光名物みたいな料理として出すしかないのかしら」
「それなら白パンでも安く提供出来るとは思いますしね」
「ええ、そういうのも観光としては使えそうではあるもの」
食パンも当然白パンである。
なのでこっちの世界からしたらそれは当然高級品になる。
そんな高級な白パンを安く提供したらパン屋は大赤字になってしまう。
「食パンが白パンなのもそうだけど、ふわふわなパンっていうのも凄いわよね」
「パンの作り方がそもそも違いますからね、黒パンは保存食でもありますし」
「白パンは保存に向かないって事よね、その辺もフユの国の環境とかもあるのかしら」
「なんにせよこれは量産は出来ても安くは売れないですよね」
「白パンは高級品とはいえ、それを食べられるっていうタレコミは出来そうだけどね」
白パンを安く提供するというのは世のパン屋に喧嘩を売るという事だ。
黒パンが中心のこの国でそれはなかなかに厳しい。
なので妥協点としては村の名物として提供する形になる。
「とりあえず白パンで出来そうな料理を考えないとね」
「野菜や肉を挟んだサンドイッチはシンプルではありますが、無難かと」
「レシピに関してはフユに聞いた方が早そうではあるわね」
「この村で白パンを使った料理などを提供出来るようになれば名物にはなりますしね」
「そうね、そっちの方向で進めていくわ」
とりあえず食パンを使って名物などの方向は決まった。
食パンというパン自体がこっちの世界にはないものだ。
しかも白パンというのだからまさに挑戦となる。
「とりあえず食パンの型はドワーフにもっと作ってもらおうかしらね」
「成形パンというのもそれはそれで面白いですしね」
「箱に詰めて焼く、食パンって不思議なパンだわ」
食パン自体は問題なく作れる様子。
ただ白パンなので当然高級品になる。
村で出すだけならとりあえずは問題はない。
流通は正直厳しそうだ。




