ドワーフの冬の過ごし方
冬真っ盛りな中仕事にも精を出すオルライト。
先日新たな移住希望者を受け入れ、村の人口も少しずつ増えてきた。
そんな中冬の寒さ対策として建材などの開発も言ってある。
また異種族の人達も独自の冬の過ごし方があるようだ。
「外はすっかり寒さが本番みたいね」
「雪の気配がないだけいいという事ですね」
「そうね、それじゃ仕事は終わらせたから、少し行ってくるわ」
寒い日であっても村の巡回はサボらない。
寒いからこそ何か仕事のヒントでも見つかるかもしれない。
「あら、相変わらずお酒を飲んでいるのね」
「これはオルライトの姉さん」
「ドワーフって季節とか関係なくお酒を飲んでるものなの」
「ドワーフにとって酒っていうのはそれだけ大切なもんさ、酒好きの種族だからな」
「私にはお酒の美味しさはよく分からないのよね、言われれば飲むけど」
オルライト曰くお酒の美味しさはよく分からないという。
ただ飲めないというわけではなく、社交場などでは飲む事もあると。
ただ自分から進んで飲むようなものでもないとのこと。
「お酒ってそんなに美味しいものなの?」
「オルライトの姉さんは酒の美味しさは分からないタイプか」
「ええ、はじめて飲んだ時は想像してたのと違うとも思ったし」
「まあ本当に美味い酒ってのを経験する事はあまりないだろうしな」
「本当に美味しいお酒ねぇ」
ドワーフ曰く本当に美味しいお酒を知らない人はそういう事を言うものらしい。
ドワーフの酒はそれだけ自信を持って作っているものとも言える。
ただオルライトはお酒をそこまで好かないという事だけだ。
「でも冬は特に飲んでない?」
「酒ってのは体を暖める効果もあるからな、冬は酒を飲んで暖まるのさ」
「それって理由をつけて飲みたいだけじゃないの」
「まあいいじゃねぇさ、ドワーフにとって酒っていうのは日常なんだ」
「仕事はきちんとしているみたいだから、そこは大目に見るけど」
ドワーフにとっての酒というのは日常である。
だからこそ安物の酒で満足するような事は決してない。
いい酒の美味しさを知っているという事でもあるのだ。
「お酒の美味しさはよく分からないけど、その熱意は本物なのね」
「まあな、ただ酒ってのは人によっては酔った事で迷惑もかけちまう、そんなのは許せねぇ」
「お酒が好きだからこそ酔い潰れるために飲むみたいなのが許せないのね」
「当たり前だろ、酒ってのは楽しく飲むもんだ、酔うために飲むのは酒じゃねぇ」
「ドワーフなりのお酒へのこだわりって事なのね、好きだからこそかしら」
ドワーフが言うには酒というのは酔うために飲むようなものではない。
その美味しさを味わい、楽しむものなのだと。
実際ドワーフはワインや果実酒、ウイスキーやブランデーなどを好む傾向にある。
「でも確かに大衆酒場で飲まれてるビールみたいなお酒は作ってないわよね」
「ああいうのも立派な酒の仲間とは認めてるけどな」
「だけど本当に美味しいお酒はがぶ飲みして酔うために飲むようなものではないと」
「当然だろ、本当に美味しい酒ってのは楽しく飲むもんだ」
「ドワーフなりのお酒に対する矜持って事なのかしらね」
酒好きだからこそ酒に対して本気で取り組む。
それは鍛冶や細工と同じぐらいドワーフにとっての大切なものであるという事だ。
ドワーフにとっての酒というのは文化であり、歴史なのだ。
「お酒に対する熱意は本物なのね」
「冬は体も暖まるしな、酒ってのは仕事に対するご褒美なのさ」
「職人らしい考え方ね」
「当然だろ、いい仕事をしたら褒めてやる、それは自分も他人も同じってもんだぜ」
「まさに職人っていう考え方ね、いいものが作れる理由が分かったわ」
ドワーフは職人である。
だからこそ鍛冶や細工、酒造りも全て本気だ。
そしていい仕事をしたら褒めてやる、自分も他人もそれは変わらないのだと。
「私もお酒の事は勉強かしらねぇ」
「ならこいつを飲んでみな、フルーティーな果実酒だ、飲みやすいと思うぜ」
「そうね、酔わない程度に飲ませてもらうわ」
「感想も聞かせてくれよな」
「ええ、それは飲んでからね」
果実酒をもらって領主館に戻ってきたオルライト。
夜にでも飲んでみようと思い追加の仕事に取りかかる。
来年以降の夏や冬の建物についても考えねばならない。
「別の作ってた建材はそろそろ完成しそうね」
「暑さ対策や寒さ対策も考えねばなりませんしね」
「建材とは別の物を作らせた方がよさそうね、その辺も検討しなきゃ」
建物を作るという事についてもいろいろと考える。
村の発展のためにはそれだけのものが必要になってくる。
建材はもちろん、家以外にも様々な建物を建てる事になるからだ。
土地の調査も引き続き進めてもらっているのだ。




