寒い日に暖まるには
すっかり冬本番に突入し寒さも増してきた。
村の発展のための仕事は続けながらも村の住民達の寒さ対策も考える。
そんな今日は冬夕が来ているので村の巡回を終えてから少し話す事にした。
寒さ対策は同時に暑さ対策ともセットで考える話でもある。
「フユの教えてくれたこのショウガユっていうのいいわね、ぽかぽかするわ」
「生姜ではないけどな、成分が似てるから代用出来るだけだ」
「でも今はフユの世界は夏なのよね」
どうやら冬夕の世界では今は夏なのだという。
なので薄着でこちらに飛ばされ寒さに面食らったようだ。
「そうだ、そっちの世界だと寒さ対策とかどうしているのか聞いていい」
「寒さ対策か、暖房器具は何かとあるけどそれが再現出来るとは限らないだろ」
「それはそうよ、でも暖炉を全ての家に設置は出来ないもの」
「そうねぇ、なら熱を部屋全体に行き渡らせればいいと思うぜ」
「熱…つまり熱を広範囲に広げるという事よね」
冬夕の世界の暖房器具は室内を暖める際は熱を部屋の広範囲に広げる感じが多い。
それにより室内を暖かくするものが暖房器具の多くである。
こっちの世界でもそれが出来るかはともかくとして。
「熱を発する事自体はダークエルフに頼めば出来ると思うけど」
「あとは建物の材質かな、断熱性、つまり熱が逃げない素材で壁とかを作るんだ」
「なるほど、熱が逃げなければ熱は自然と部屋の中にこもるわね」
「ただ熱が逃げないっていうのは夏場にはそれだけ室内が暑くなるって事でもあるからな」
「うーん、そう言われると難しいわね、魔法でその辺は解決出来ないものかしら」
冬夕の世界には当然魔法なんてものはない。
ただこんな言葉もある、充分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかないと。
なので魔法は存在しないが魔法を実現したのが科学とも言える。
「魔法でなんとかなるならその辺は共同開発でもしてみようかしら」
「今年中は無理でも次の冬や夏に備えるのもいいんじゃないか」
「それもそうね、産業としても利用出来そうだし」
「充分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない、アタシの世界の技術者の言葉だよ」
「充分に発達した科学は魔法と区別がつかない、技術が進めばそれは魔法に見えるのかしらね」
だからこそ冬夕にとって本物の魔法はそれだけ新鮮に見える。
その一方でオルライトが感じる科学技術は未知のものが多い。
どっちも魔法であり、魔法もまた技術なのだという事なのだろう。
「でも寒さ対策と暑さ対策ってセットで考えないといけないのね」
「寒い時は熱が逃げると暖かくならない、でも暑いと熱がこもるともっと暑くなるからな」
「その辺は技術でなんとか出来ないものかしら」
「魔法があるけど出来ない事もあれば、技術があっても出来ない事もあるもんだろ」
「それもそうね、その辺は協力して研究開発させてからでも間に合うわ」
オルライトもそうした事に私財を投じる事に躊躇いはない。
そもそもの発端は結婚したくないからとはいえ、出来る事は全てやる。
その辺はオルライトが加減を知らない人間でもあるという事なのか。
「それと他に何か暖まる方法ってないものかしら」
「他にねぇ、アタシがよく言われるのは体の芯から温めるって事だな」
「体の芯から?」
「ああ、その生姜湯もだけどスープやホットミルクを飲むとか風呂に入るとかだな」
「なるほど、それならそんな難しくもないし手軽に暖まれるわね」
寒い時はシンプルに体の芯、それか体の中から温めるのが一番効く。
冬夕も寒い日には自動販売機でコーンスープやお汁粉を買うらしい。
なので寒い時は体を内側から温めるのがシンプルにして一番効くのだろう。
「体を内側から温める、スープやホットミルクなんかでいいのよね」
「ああ、あとは生姜は生姜湯に限らず体を暖める効果があるんだと」
「ならショウガユに限らず料理にそれを使うのがいいのかしら」
「そのまま食うよりすり下ろしてスープにしたり料理にしたりした方がいいぞ」
「すり下ろす…そういう食べ方もあるのね」
一応この世界にもおろし金は存在する。
とはいえ一般家庭にはそうそうあるものでもなく、料理人が使う道具という認識だ。
それを使うというのは料理において便利ではあるのだが。
「とりあえず寒さ対策についてはいろいろ知恵をありがとうね」
「まあ寒くない部屋はそれだけ暑いって事だな」
「そうね、とりあえず話は持ち込んでみるわ」
こうしてベルの仕事がまた増える事に。
とはいえ建材の完成はもう間もなくだと報告も受けている。
ついでに調理器具などもドワーフに頼んでおく事にした。
その冬夕は正午頃に元の世界に帰っていった。




