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冬が始まる

季節は流れ村にも冬の訪れが来た様子。

とはいえまだ始まったばかりで寒さの本番はまたここからになる。

ただ冬が始まった以上様々な事が冬仕様になる事にはなる。

それでも冬だからこそ出来る事もあるのだ。


「もう冬なのね」


「はい、一年目が終わるのももう間もなくかと」


「出来る事は大体はやったけど、まだ出来る事は済ませないとね」


そんなわけでいつものように村に視察に行く。


土地の開拓はだいぶ進んだが、鉄骨の完成や建材の完成は来年になりそうだ。


「あ、ベルーゴ、どうしたのかしら」


「オルライト様、今報告に行こうと思っていたのでいいところに」


「何かあったの?」


「この辺りは開拓しても問題ないと調査結果が出ました、特別な何かも必要ないかと」


「本当?なら近いうちに開拓に着手させるわ」


どうやら新たに開拓可能な土地の調査が終わった様子。

とはいえ開拓も広くやり過ぎると時間が足りなくなる。


なので領主館のある場所を中心としてその周囲を三区画程度を開拓する事になっている。


「冷えてきたわねぇ、あら?いい香りが」


「おっ、オルライト様、匂いに釣られて来たのかい?」


「これは?」


「あのフユっていうお嬢ちゃんに教わったオデンっていう料理だよ」


「フユ、いつの間に教えてたのかしら…それでどんな料理なの?」


ここは海沿いの村なので魚は充分すぎるぐらい穫れる。

なのでだしを取るという事は出来るはずだ。


土地の調査を頼むついでに水質調査を頼んだ結果、この村の辺りは軟水だと判明している。


「オデン、使ってるのは魚とか野菜とか?」


「ああ、魚のすり身を団子にしたものとかだね、食べてみるかい?」


「なら試食させてもらうわ」


「熱いから気をつけて食べなよ」


「…美味しいわね、魚もそうだけど野菜やこれは何かしら」


村では大豆などの生産も始まっていてそれの試作品を使っているという。

エルフの技術を使って改良された土のおかげで作物の成長が早くなった。


また元々漁村でもあった事が幸いし、魚を使った新たな食べ物の開発にも積極的だ。


「これはいいわね、冬にはありがたい食べ物だわ」


「魚も有効に活用出来るからね、魚の加工品は新しい産業としても充分さ」


「フユには感謝ね、魚の使い道が一気に広がったわ」


「他にもいろいろ試してみるつもりだから、その時は試食をお願いしますね」


「ええ、任せておいて」


知らないところでレシピを伝授している様子の冬夕。

物理的な持ち込みが出来ないという事は確定しているため記憶して持ち込んでいる。


こっちの世界で不可能な事はスパッと諦める事もそうした事に繋がっているのだろう。


「あ、シュカイン、寒くなってきたのにしっかりとやってくれているのね」


「オルライト様、まあ寒いのなんて貧しい育ちも多い我々には慣れたものです」


「でも暖はしっかりと取ってね、寒さに慣れてても油断は出来ないんだから」


「はい、あと冬野菜の収穫なども始まるので美味しい野菜が食べられそうですよ」


「夏の頃に種を蒔いていたのね、それも楽しみにしておくわ」


盗賊達も今ではすっかり立派なこの村の住民だ。

なぜ盗賊が生まれるのか、それを知ったからこそ雇用の事も考えねばならない。


何も出来る事がないのなら教えればいい、教える事もせずに何かが出来はしないのだ。


「それにしても盗賊って冬を越せていたのね」


「最低限の生きる知恵はありましたから、暖の取り方などもある程度は知ってましたし」


「貧しさから盗賊になるしかなかった、この国には見えない部分があるものね」


「結局はそうしたものは見えなくしたいんでしょう、観光客はスラムには来ませんから」


「どんなに国が豊かになろうともそうした貧富の差は必ず生まれてしまうものなのね」


盗賊達の事情はどんなに国が栄えても決して国民全てが豊かにはなれないという現実。

貧富の差は必ず生まれるし、富める者と貧しい者は必ず分かれてしまう。


そして国を支えているのは貴族や王族だけでなく、労働者も当然含まれるという事。


「なんにせよ無理はしないのよ、何事も体が資本なんだから」


「そういうオルライト様も適度に休んでくださいよ」


「ええ、まあ昔から体だけはやたら頑丈って言われてきたけど、休みはきちんと取るわ」


「ははっ、そりゃいい、寧ろ領主様に倒れられたらこっちが困りますしね」


「さて、またまとめる事は多そうだわ」


オルライトは昔から体だけは頑丈という話。

今でこそ勉学も相応に出来るが、幼馴染のベル曰くあれは野生児だと言われていた。


だがその野生児とすら称される行動力は多くの人を惹きつけてきたのもまた事実だ。


「オルライト様、移住を希望する人達が約500人ほど届いておりますが」


「500人ね、とりあえず近いうちにまた家が完成するから今月の半ばって伝えて」


「かしこまりました、では居住可能な家などが揃い次第受け入れの許可を出します」


人が増えればそれだけ揉め事も多くなるものだ。

とはいえこの村では発展のために人手が何より求められる。


なので仕事のない人達からすれば自分達に仕事を与えてくれる環境でもある。


そうした産業と村の発展のために人こそが何よりも求められるものでもあるのだ。

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