無事に帰れました
冬夕がこっちに来てから大体10日。
そろそろ元の世界に帰れるようになったかダークエルフに聞きに行く。
スマホに何やら細工をしているようではあるが、恐らく転移の魔法だろう。
もちろんただ帰すだけではなさそうではあるが。
「フユ、帰れるように準備が出来たみたいよ」
「お、マジか、やっと帰れるんだな」
「ええ、それじゃとりあえず話を聞きに行きましょう」
帰れるようになる細工が施し終わったらしいので、まず話を聞く事に。
スマホに魔法をかけて細工していたようではあるが。
「あ、お待ちしていました」
「ああ、帰れるようになったんだろ」
「ええ、このスマホというのは雷の力で動いていたようなので魔法を施すのも簡単でした」
「それでどうやって帰るんだ?」
「転移の魔法を施してあります、起動してみてください」
冬夕がスマホをとりあえず起動してみる。
するとそこにはこっちに来た時にはなかったアプリがあった。
どうやらそれが帰るためのものらしいが。
「この新しいアプリを起動すればいいのか?」
「はい、仕組みは分かりませんが魔法を施せるのは確認済みです」
「…うわっ!?なんだこれ!?」
「無事に起動出来たみたいですね、転移された場所に転移されると思います」
「マジか、とりあえずありがとな、じゃあな」
そのまま冬夕は元の世界に転移されていった。
なおオルライトはダークエルフの技術者がただ帰すだけとは思っていなかった。
本人がいなくなったので改めて聞いてみる。
「ねえ、ただ帰しただけじゃないでしょ?」
「当然じゃないですか、異世界の人なんてこの上ない興味がありますからね」
「…それで何をしたのか聞いてもいい?」
「それは近いうちに分かると思いますよ」
「やれやれね、まあ私も興味があったしまた会えるならそれはそれで嬉しいけどね」
スマホに施した転移の魔法。
それは一方通行で元の世界に帰すだけなどというはずもなく。
ダークエルフの技術者曰く近いうちに分かるそうで、オルライトもなんとなく察したようだ。
「…お、本当に戻ってきた」
「あっ、冬夕じゃん、突然いなくなるから長いトイレでも行ってた?」
「は?確か10日ぐらい行方不明になってたんじゃないのか?」
「10日?何寝ぼけてんの?一時間ぐらいしか経ってないじゃん」
「マジかよ…まあいいや、なんか食いに行こうぜ」
どうやら無事に元の世界に戻れた様子。
なおスマホに施された転移の魔法の事については知らされていない事がある。
それはこんな興味のある対象を逃がすはずがないという事でもあるようで。
「はぁ、やっぱダブチが最高だわ、久々に食うと最高に美味いんだよな」
「久々って、たった一時間ぐらいじゃん」
「でもきちんと探してくれてたんだな」
「一応ダチだし、それに勝手に帰ったりしたらなんか悪いじゃん」
「いいダチだな、アタシは幸せもんだわ」
近くのハンバーガーチェーンでダブルチーズバーガーを頬張る冬夕。
冬夕曰くダブルチーズバーガーこそが至高の味でありジャンク界の神らしい。
こっちではたったの一時間だが、異世界に10日もいたあとの味はまた格別なのだろう。
「あっ、そういえばこれ…」
「そちらはフユ殿の持ち物ですか?」
「ええ、確か向こうの世界の通貨みたいね」
「財布ごと忘れていった…という事はないみたいですね」
「財布は普段から持ち歩いているだろうから、ただ落としていっただけみたいね」
どうやら帰る前に少しお金を落としていった様子。
とはいえ大金ではないので、なくなって困るような金額ではなさそうだ。
異世界の通貨という事もあり、興味は惹かれるようで。
「このお金、もしかして金なの?」
「金ではあるようですが、向こうの世界では金が普通に使われているのでしょうか」
「でも真ん中に穴の空いたお金なんて珍しいわね」
「そうですね、金でありそれも加工の技術が明らかにとても高いもので」
「やっぱり異世界って凄いのねぇ」
落としていったのはどうやら5円玉のようだ。
返すかどうかはともかく、それは調べる対象としてはとても興味を惹かれるのだろう。
なお興味の対象を知るために何もしていないはずは当然なく。
「ああ、そうだ、例の湿地を乾燥させるやつはどうなってるかしら」
「そちらなら近いうちに完成するかと思います」
「分かったわ、その時は報告を上げてね」
以前頼んだ土地の開拓に必要な湿地を乾燥させる道具。
材料はきちんと集まっていたようで、近く完成するという。
それが完成すればまた土地の開拓が進む。
気がつけば一年も半分近く過ぎていた。




