豆が苦手
オルライトの領主としての任期が終わるまでもう少し。
家からの連絡なども最近はちょくちょく来るようになった。
現状を報告しつつも、今後の事は考えている。
もし正式に要請が来たのならその時は迷う理由はないからだ。
「農地もかなり広くなったものね」
「そうですね、様々な野菜や穀物が育てられるのは大きいですよ」
「でも輸出もして村でも消費してるとなると規模はもう少し大きくしたいのよね」
オルライトも畑や農地の規模はもう少し広げたいと考えている。
とはいえ数を増やすのはきつくなってきているので、面積を広げる形になりそうだ。
「でも野菜の美味しさは私にはよく分からないのよね、食べられないという事はないけど」
「そういえばオルライト様って豆が苦手でしたよね?」
「そうなのよ、豆は煮るとブニュッとするし、炒めたりすると少し粉っぽいし」
「豆は豆で美味しいと思いますけどね、つまり食感が苦手という事ですか」
「そんな感じね、あの食感だけは苦手なのよ」
オルライトは豆が苦手という話。
特にグリーンピースが苦手であり、豆のスープなども苦手だ。
なので豆を使った料理は基本的に避けている様子。
「豆ってなんというか、美味しいと感じられないのよね」
「豆を使った加工品なんかも苦手という事ですか?」
「ええ、でも何かの味付けがしてあれば少しは食べられるわ」
「味付け…なら少し試食して欲しいものがあるので、少し待っていてください」
「ええ、それは構わないけれど…」
エルフが試食して欲しいというもの。
少し待っていると出てきたのは団子の様子。
そこに緑色のペースト状のものが乗っていた。
「これは?お団子なのは分かるけど、この緑色のものはなんなの?」
「フユさんから聞いたずんだと呼ばれる豆を使ったものですね」
「ずんだ?豆から作ったものがこの緑色のペーストっぽいものなのね」
「はい、甘くしてあるので、食べられると思いますよ」
「食べないのも失礼だし、とりあえずいただくわね」
ずんだの乗った団子を恐る恐る口に運ぶ。
その味は思っているよりも甘く、豆のつぶつぶ感もそこまで感じない。
ずんだは枝豆から作り、主にデザートの材料として用いられる。
「想像よりずっと美味しいわね、本当に豆から作ってるのよね?これ」
「はい、紛れもなく豆から作られたものですよ」
「豆ってこんなに美味しく加工出来るものなのね」
「団子や餅、他にもデザート類によく使うんだそうですよ」
「へぇ、デザートに使うなんて面白いわね」
ずんだは分かりやすく言うとあんこの仲間である。
うぐいすあんなどのように緑色をしているのが特徴だ。
作り方によっては豆の食感が少し残る感じにもなるらしい。
「でもずんだって美味しいのね、豆が苦手な私でも食べられるわ」
「あんこの仲間らしいとは言っていましたよ」
「あんこって確か、東の国で食べられてる甘く煮た豆のやつよね?」
「ええ、使い方はそれに煮ているという事らしいので」
「なるほど、でも豆を甘くしてお菓子に使うというのは意外ね」
オルライトも冬夕からあんこの事は聞いている。
とはいえずんだは今回が初体験の様子。
豆が苦手なオルライトでも食べられる味付けのようだ。
「豆って甘く煮るとこんなに美味しくなるのね」
「オルライト様が豆を苦手と感じるのは、恐らく口の中で潰した時の食感かと思いますし」
「つまり最初からこういう感じにしておけば、食べられると思ったのね」
「ええ、あのつぶつぶ感がなければ食べられるかなと考えました」
「それでずんだなのね、考えたものだわ」
ずんだやあんこはオルライトでも食べられる豆の加工品の様子。
つまりオルライトは味よりも食感が苦手という事はほぼ確定なようだ。
潰れるような食感が苦手という事のようではある。
「豆にもこんな美味しい食べ方があったのね、私が苦手に感じたのは食感なのね」
「恐らくはそうだと思います、オルライト様はつぶつぶ感を苦手に感じたのかと」
「そう言われるとなんとなく分かった気がするわね」
「まあ人は誰しも苦手なものぐらいありますよね」
「そうね、だから私は豆は食感が苦手だったのね」
オルライトが豆を苦手にしていた理由は食感。
いい豆というのはそれだけ美味しいというものでもある。
とはいえ貴族のオルライトなので、豆もそれなりにいいものを食べていたはずだが。
「豆の美味しさは少しは分かった気はするけど、いい豆は美味しいのよね」
「ええ、いい豆は普通に美味しいですよ」
「私が食べてた豆も品質は悪くないはずだったんだけど」
「でも理由が分かったのならよかったです」
「私がなんで豆が苦手なのか、味より食感っていう事よね」
豆が苦手な理由が分かったオルライト。
いい豆は普通に美味しいとエルフも言っている。
安い豆はそんな美味しくないとも言えるのか。
「とりあえず美味しかったわ、ありがとう」
「ええ、豆が苦手なのは克服出来そうですかね」
「調理法次第ではありそうな気はするわね」
オルライトにとっての豆は食感が苦手なものだった。
なのであんこやずんだに加工すれば普通に食べられる。
高級な豆は普通に美味しいものでもある。
安いものはやはり相応の品質なのかもしれない。




