自然災害に備えよ
ハイランダーとの交渉も纏め上げたオルライト。
一通りの産業に関する交渉は終え、あとは村の守りも固める事を考える。
そんな中まだやらねばならない事を考える出来事が起こる。
人間の力ではどうやっても勝てないその相手との戦いだ。
「さて、執務は終えたから村の視察に行ってくるわね」
「ええ、必要なものはお父様に報告として上げておきます」
「少しは安定もしてきたし、ここからが本番ね」
そのまま村の視察に向かうオルライト。
建物も増えてきた事に加え、土地もある程度広がってきたため出来る事も増えたのだ。
「バルカ、村の様子はどうかしら」
「ええ、みなさんしっかりと働いてくれていますよ」
「ならいい…ん?今揺れなかった?」
「揺れですか?そういえば…いえ、大きいですよ!」
「地震!?とにかく不用意に動かないで!」
その時に起こったものは地震だった。
規模としてはそこそこ大きいが、建物が大きく倒壊するほどの規模ではない。
とはいえそれでも村にそれなりの被害を出すには充分な規模だったようだ。
「収まったみたいね、大丈夫だった?」
「ええ、なんとか、それにしても結構大きかったですね」
「そういえばお父様がローゼンブルクはそこそこ地震の多い地域だと言っていたわね」
「自分も小さい時にそれなりに大きいのを経験してます、あの時は死ぬかと思いましたよ」
「とりあえず村の様子を見てくるわ、バルカは村の安全を確認してきて」
安全確認をバルカに任せオルライトは村の様子を見に行く。
一通り見て回り大きな被害がない事を確認しとりあえずは安堵する。
その上で地震の事だけでなく、自然災害への備えを検討せねばならなくなった。
「ベル、いるかしら」
「ああ、オルライト!君も無事だったんだね」
「それより相談があるんだけど」
「さっきの地震の事かな」
「それもあるけど、それだけじゃないのよ」
オルライトが持ち込んだ相談はただ地震の事だけではない。
場合によっては他の自然災害が襲ってくる事も含めての想定だ。
なので頼む事は決まっている。
「建材の強度を大きく高める事って出来るかしら?並の揺れでもビクともしない程度に」
「出来るとは思うけど、建材の素材そのものを変えないと無理かな」
「素材そのもの?」
「うん、今使ってるのは主に石や砂なんだけど、その注文だと金属が必要になるね」
「金属…ならハイランダーと交渉して買ってる鉄鉱石とかはどうかしら」
先日交渉したベルクスとの契約で鉄鉱石以外にも銅や銀なども買っている。
それらの金属で新たな建材を作り、それを自然災害への対策に使おうという事だ。
それはつまり建築の常識を大きく変える事にもなってしまうのだが。
「地震がそれなりにあるのに私は経験というか、記憶がないのよね、なんでかしら」
「僕は研究所時代に何回か経験してるけど、どういう事だろうね」
「ローゼンベルク領にいたと思うんだけど、揺れが小さな地域にいたのかしら」
「確かに地震の揺れは地域によって差があるらしいから、もしかしたらそうなのかもね」
「まあなんにしてもあの規模を経験した以上対策はしておくに越した事はないわよ」
なおさっきの地震は震度で言うと震度3ぐらいだ。
それでも対策はしないと次はもっと大きいのが来るかもしれない。
なので地震だけでなくそれ以外の自然災害にも備える必要があるのだ。
「揺れに強い健在だから、強風とかでもビクともしないものをお願いね」
「確かに強風でも脆い建物は揺れるし、石材だと削られてしまうからね」
「金属でどこまで出来るかは任せるけど、とりあえず揺れに強いのは必須条件よ」
「分かった、その注文で開発に取りかからせてもらうよ」
「頼むわよ、時間はかかってもいいからしっかりとしたものを作ってね」
オルライトの要求は開発に時間はかかっても構わないので、しっかりしたものだ。
まず必須条件は揺れに強いという事。
そして可能ならば他にも耐性をつけてしまって構わないという事だ。
「ベルクス、少しいいかしら」
「おお、ご無事でしたか、それで何かお入用ですか」
「お金はもっと積むから、建材の開発用に鉱石を多く回してくれるかしら」
「ほう?なかなか面白い話ですね、いいでしょう、その話引き受けさせてもらいます」
「ありがとう、見積もりはあとで持ってくるわ」
ベルクスとの話は速攻でまとめるオルライト。
ベルクスもそれをいい商売の機会と踏んだのか、本来の用途とは別に用意してくれる事に。
その上でバルカから今はとりあえず安全と聞き、一旦は落ち着いたようだった。
「あれ?ここどこだ?は?圏外?どこの田舎だ?」
「しかも森の中って…誰か人とかいねぇのかよ」
「スマホは圏外で完全に駄目か、仕方ねぇ、誰か探してみるか」
オルライト達が一旦落ち着いていた頃森の中に何やら人がいる様子。
彼女は何者なのか。
人を探して森の中を歩く彼女。
その森は村のすぐ脇なので人は見つかるはずである。




