医者が集まる
村もすっかり春本番になったようで、暖かい風が吹き抜ける。
そんな中村にやってきた人達のコネで集められる人もいる。
そして以前話した医者の若者が呼んだ医者達も村に着いたという。
早速挨拶に行く事にしたようで。
「本当に集めちゃったのね」
「これはオルライト様、ええ、オルライト様の評判も届いていたようですよ」
「まだ小さな診療所しか用意してあげられないのに、感謝するわ」
そんな医者達は村で働くために準備を始めていた。
彼の同期の医者達にもオルライトの評判は届いていたようだ。
「それで何人ぐらい来てくれたのかしら」
「全部で20人ぐらいですね、みんなオルライト様の事を知ってるみたいでしたし」
「私の評判って結構遠くまで届いてたのね」
「みなさんオルライト様の下で働けるのなら喜んでとも言ってましたし」
「そこまで言われるとなんか照れるわね」
医者達はオルライトの事を信用しているようでもある。
とりあえずその人達に挨拶に行く事にした。
今使っている診療所の建物にいるとの事だ。
「失礼するわよ、みんなが今回集まってくれた医者の人達かしら」
「これはオルライト様、わざわざ挨拶に来てくれたんですか」
「ええ、それにしても本当によく来てくれたわね」
「はい、オルライト様の事は聞いていたので、ここで働けるのなら光栄ですよ」
「とりあえず病院の建設は進めてるから、それまでは我慢させる事になるけど」
病院の方は今は建設中である。
オルライトの任期が終わるまでに建設が終わるかは今は分からない。
しかし任期があるうちは出来る限りはする事に決めているのだ。
「でも医者が村にいてくれるだけでも全然助かるわよ」
「そう言ってくれると光栄です、とりあえず医療器具などは持ってきたんですが」
「なるほど、村で用意出来るものがあるなら遠慮なく言ってきていいわよ」
「ありがとうございます、とりあえず薬などをまずは用意していただければ」
「薬ね、あとは簡単なものならすぐに用意出来るから」
消毒用の薬や病気の時に使う薬などはすぐに用意出来るとのこと。
またエルフなどの異種族が使う薬などにも医者の人達は興味を示している。
まずは一般的に使っている薬などを用意して欲しいとの事だ。
「薬とかは手配しておくわね、他にも何かあれば遠慮なく言ってきていいわよ」
「はい、ではまず処置に使う建物などを用意していただけると」
「病院が建つまでの仮の施設って事ね、分かったわ、任せておいて」
「ありがとうございます、では僕達は準備があるので」
「ええ、村のためにも何かとお世話になるわね」
そんな医者達も若い医者が多いのは、知り合いという伝だからなのか。
王都の病院の偉い人たちもいい経験になるだろうと思ったのかもしれない。
本当なら大きな病院で働ける程度には優秀な人達でもある。
「みんな人もよさそうで安心したわ」
「あの人達も本当ならもっと大きな病院で働けるんですよね」
「それなのに来てくれたなんて、あなたも人望があるのね」
「単にオルライト様がそれだけ信用されてるんだと思いますよ」
「誠実にやるっていうのは大切なものねぇ」
オルライトが誠実にやってきたからこその信用でもある。
村で働けるというだけでも名誉なのだと彼は言う。
そんなわけでまずは処置に使う簡単な建物を用意する事にした。
「でも医者が来てくれただけでも全然違う事になりそうね」
「小さな村なんかだと医者は近くの大きめの街や領地に行く必要がありますしね」
「だからこそ頼りにしてるわよ」
「はい、お任せください、必ずや役に立ってみせます」
「頼もしそうでとりあえずは安心かしらね」
医者達はまずは小さな診療所から始めていく事になる。
とはいえ医者はボランティアではない事もまた事実。
そこだけは村の人達にも分かってもらわねばならない。
「それにしてもあなたも人望があるのね」
「確かにそうかもしれませんが、僕はただのしがない医者ですよ」
「でも人望がないとあなたの呼びかけに応えて何てくれないわよ」
「それはそうかもしれませんけどね」
「だからあなたは人望があるのよ、私はそう思うけどね」
きっかけとなる医者の青年は人望もあるという話。
人望がなければそもそも呼びかけに応えて医者が来てくれるとも思えない。
彼はそんな誠実さがあるからこそ人を集められたのだろうと、オルライトは思った。
「医者の存在ってやっぱり大きいと感じるわね」
「前の領主様のところで働いていた医者も頼りにはなるんですけどね」
「前の領主様がいなくなってからも村で働いてくれていた事には感謝よ」
「おかげで引き継ぎもすんなり出来ましたしね」
「やっぱり医者になるぐらいの人だと優秀なのねぇ」
医者になるぐらいだからこその優等生。
村に来た医者達も多くは大学を出たり、貴族だったりと優等生が多い。
医者になるというのはそういう事だ。
「とりあえず何か要望があれば、いつでも来てね」
「はい、その時は遠慮なく頼ませていただきますね」
「医者ってやっぱり優秀な人が多いものなのね」
医者になるというのは簡単な話ではない。
貴族が医者になるというのは珍しい話でもないとか。
医者になれるというからにはお金や学ぶ環境があるからこそ。
貴族は民のために尽くすという精神もあるからこそなのかもしれない。




