花の蜜のお茶
すっかり春本番になった様子の季節。
村も暖かくなり、花なども咲き始めた。
そんな中花に関しての知識があるエルフが花も育てているのを知る。
花を何に使うのかというと。
「あら、何をしているのかしら」
「あ、オルライト様、ちょっと花を育てるのに使う水を」
「花?エルフって花なんかも育てていたのかしら」
オルライトも報告は受けていたはずだが、知らなかった様子の花の話。
どうやら完全に個人でやっている事だから報告がなかったという事らしい。
「それでなんで花なんて育てているのかしら」
「えっと、蜜を採るために育ててるんです、その蜜を使ったお茶は美味しいんですよ」
「お茶に使う蜜、その蜜って花から採ったものを使うの?」
「はい、お茶に蜜を加えると程よい甘さになって美味しいんですよ」
「へぇ、ちょっと興味があるわね」
そう言うとエルフはせっかくだから飲んでみないかと言ってくる。
エルフが飲んでいるという花の蜜のお茶。
そのお茶は美味しいのかどうか気になるところだ。
「でも花の蜜のお茶なんて、エルフらしいわね」
「せっかくですから飲んでみますか?」
「いいの?ならいただいてみようかしら」
「分かりました、ではこっちに来てください」
「ええ、ごちそうになるわね」
そのままエルフの家に招待される。
そこでお茶を淹れた後その花の蜜を加える。
甘い匂いがこちらにも漂ってきた。
「これがその花の蜜のお茶なのかしら、いい香りがするわね」
「花の蜜もそうですが、エルフは茶葉なんかも育てますからね」
「そういえばそうだったわね、茶畑もあったし」
「そのお茶に花の蜜を加えるんです、どうぞ飲んでみてください」
「ええ、いただきます」
そのお茶を一口飲んでみてその美味しさに驚くオルライト。
お茶そのものも美味しいが、花の蜜が加わる事で適度な甘さが加わっている。
甘すぎないながらもその甘さはしっかりと感じる事が出来る。
「でもこんな美味しい飲み方があったのね」
「ええ、まあエルフが個人でやっている事で、商売にはしていないんですよ」
「それは花の供給が追いつかないとかそういう事かしら」
「そんなところです、商売にするとなると相当大きな畑が必要になるので」
「なるほど、産業にどうかと思ったけど、規模的に難しそうね」
産業に出来たら面白いとは思ったが、今回ばかりは断念とする。
だがエルフの作る茶葉はすでに産業として各地に流通している。
エルフの作るお茶は美味しいと評判でもあるからだ。
「それはそうとお茶の方は人気みたいよ、各地から仕入れたいって話が来てるの」
「そう言ってくれると嬉しいものですね、エルフの作る茶葉は自慢のものの一つですから」
「でもエルフの作る茶葉って何か秘密とかあるのかしら」
「そうですね、発酵のさせ方に秘密があります、これ以上は秘密ですけどね」
「なるほど、独自の発酵のさせ方があるとかそういう事なのね」
どうやらエルフの作る茶葉は独自の発酵のさせ方があるようだ。
それにより独自の美味しさを実現しているという。
それ以上は企業秘密という事のようだが。
「でも花の蜜を加えるだけでこんなに美味しくなるなんて凄いわね」
「この花は蜜が美味しい花なんです、エルフ独自の作り方で作った蜜なんですよ」
「へぇ、そういう蜜があるのね、花の蜜、はちみつとはまた違う美味しさだわ」
「この花は大量生産が出来ないので、個人で楽しむ範囲でしかないんですが」
「そういう花なのね、大量生産出来ないって事は何か理由があるのかしら」
花が大量生産出来ない理由は土にあるらしいとのこと。
特殊な土でしか育たない花らしく、村で育てるのも個人でやるのが精一杯なのだとか。
だからこそ大量生産出来ないという事のようで。
「こんな美味しいのに、たくさん作れないっていうのはもったいない気がするわね」
「こればかりは仕方ないですよ」
「でも美味しかったわ、ありがとう」
「いえ、個人で飲むぐらいならいくらでもご用意しますよ」
「あら、嬉しいわね、ならまた飲みに来ようかしら」
エルフ曰く個人で飲むぐらいならいくらでも飲みに来ていいとのこと。
それはあくまでも個人で楽しむ範囲でならの話である。
花をたくさん作る事は出来ないからこそではあるのだが。
「でもエルフって植物の知識は大したものなのね」
「エルフは動物性の食べ物が苦手ですから」
「食べられないっていうわけではないのかしら」
「エルフでも食べる事は出来ます、ただ体に適応させないといけませんが」
「何かと大変なのねぇ、エルフって菜食とは聞いてたけど」
エルフでも肉や魚も食べられないわけではない。
ただそうなるまで体を慣らさなくてはいけないという。
実際外の世界に出たエルフは動物性のものも食べるようになるとか。
「とりあえず美味しかったわ、また飲みに来させてもらうわね」
「ええ、いつでもどうぞ」
「さて、それじゃ仕事に戻るから、畑とかしっかりとお願いね」
思わぬ美味しいものを知ったオルライト。
花の蜜のお茶は程よい甘さで、エルフの作るお茶とよく合っていた。
エルフの作る茶葉は今では人気の輸出品だ。
エルフのお茶はそれだけ美味しいらしい。




