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桜の蕾

すっかり春の陽気になった村の景色。

そんな中エルフから見せたいものがあるという事で呼ばれた様子。

何かとお前ばそれは以前の枯れ木の事だ。

いろいろ手入れをした結果が出たという。


「お待たせ、木の様子はどうかしら」


「ええ、すっかり回復しました、見てください」


「葉がついてて花の蕾もついてるわね」


木には葉がつき、花の蕾もついていた。


桜の木が咲き誇るのはもう少しかかるとの事だが。


「でもあの短期間でこんなに復活するものなのね」


「はい、地質や土壌は問題なかったので、あとは木に栄養を与えればいいだけなので」


「なるほどねぇ、でも桜が咲くのはもう少しって事かしら」


「そうですね、あと二週間ぐらいで満開になるかと」


「ならあっという間かしらね」


桜の花が咲くのはまだもう少しかかるとのこと。

とはいえ春に咲き誇る桜が見られそうではある。


雨などが降らなければ満開の桜になりそうとのことだ。


「そういえばフユが言ってたけど、桜の葉っぱって塩漬けにしてお菓子にしたりするらしいわ」


「桜の葉は食べられるんですか、それは意外というか」


「でも桜って咲いてる期間は短いんでしょ?」


「ええ、少なくとも一ヶ月しないうちに散るかと」


「ならそれをしっかりと見ておかないとね」


桜の花が咲いている期間はとても短いもの。

だからこそ美しく、綺麗なものという事なのだろう。


桜の花とは散りゆく花の美しさも含めてこそである。


「フユの国は桜の花がたくさんあって、お花見っていうパーティーをするらしいのよね」


「お花見ですか、桜の木の下でやるとかそういう事でしょうか」


「あと桜の花の美しさはその散り様なんだとも言ってたわね」


「花がなぜ美しいか、それは花が散るからである、という事ですね」


「ええ、桜が美しいのは満開なのは言うまでもなく、散る姿もまた美しいんだとか」


桜の花が美しい理由はその散る姿も含めてのものである。

日本の桜が美しいと言われる理由はその散る姿があるからこそ。


雨で散ってしまった桜にもまたその美しさがあるのだから。


「でも桜が復活するなんてね、流石はエルフだわ」


「いえ、我々だけの力ではありませんよ」


「それはそうなんだけどね、でも植物に詳しい人は大切なのよ」


「なんにせよもう少しで桜が開花すると思いますよ」


「その時がとても楽しみだわ」


桜の花が咲いたらぜひともこの目で見たいとオルライトは思う。

しかし植物を蘇らせるだけの栄養素はどうしたのか。


エルフの秘伝などがあるのかというのは気になるところ。


「そういえばこの短期間で木が蘇ったのは何か特別な事とかしたの?」


「ええ、エルフに伝わる秘伝の肥料や植物用の栄養剤があるんですよ」


「へぇ、そんなものがあるのね、エルフは薬とかあまり頼らないイメージだったわ」


「人間の使う薬とはまた違いますよ、エルフが使うのはそういうものなので」


「つまり薬草的なものから作る栄養剤や肥料という事なのかしら」


エルフが言うには人間の使う薬剤などとはまた違うものなのだという。

ただそれでもエルフにはエルフだけに伝わる薬などもあるという。


それを使って木を蘇らせたという事のようだ。


「そういうものがある辺りはエルフっていう感じもするわね」


「少なくとも人間が使う薬とは確実に違いますよ」


「それを使ってこの短期間で蘇るなんて、相当に効くものなのね、驚きだわ」


「エルフだって薬ぐらいは使いますからね」


「とはいえ桜が咲くのが楽しみだわ、わくわくするわね」


オルライトも花には興味がないわけではない。

貴族の嗜みとして花の知識はそれなりには持っている。


桜が咲いたときには、その姿を目に焼き付けたいところだ。


「桜の葉っぱの塩漬けっていうのも少し気になってるのよね」


「お菓子にするという事ですよね?」


「ええ、桜あんみたいな食べ方をするらしいわ」


「あんこって確か豆を甘く煮たものの事でしたか」


「それの桜味が、桜あんっていう事みたいよ」


桜味とは桜の葉の塩漬けの味が大きい。

なので桜味は塩味のそれに近いとも言える。


なおあんこはここでは珍しい食べ物らしいが。


「でも桜が蘇ったのは流石はエルフだわ、大したものね」


「植物に関する知識ならエルフにお任せくださいね」


「でも四年目に桜が咲くのは何か運命みたいなものを感じるわね」


「桜は散る姿もまた美しいと言っていましたが、散るからこそ美しいとも言えますよね」


「花が散る姿に美しさを見出すのは流石なものよね」


そんな散る姿もまた美しいのが桜の花。

やはり花は散るからこそ美しいとも言えるのか。


桜は咲いている期間が短いからこそ美しいのかもしれない。


「それじゃ経過とかがあったら教えてね」


「分かりました、何かあれば報告しますね」


「桜の蕾が開くのが楽しみだわ」


そうして桜の花はまもなく咲き誇る。

エルフの技術により蘇った枯れ木の桜。


とはいえそこには他の人達の協力もある。


桜が咲いた日はいい日になりそうな気がする。

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