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お菓子の魅力

村にも春が訪れ気温も上がり始めた季節。

そんな中移住者はまた少し増え、目標の数まであと少しと迫る。

そんな移住者の中に以前王都で菓子作りをしていたという人がいた。

村でも菓子類を作れたりしないかとオルライトは考えた様子。


「失礼、少しいいかしら」


「これは領主様、私なんかに何かご用ですか」


「お菓子作りをしていた人の話を聞いたのよ、それで少しね」


移住者の中にいたかつて菓子作りをしていたという人。


そこでちょっと相談を持ちかける事にした。


「お菓子作りをしていた人はあなたでいいのよね?」


「そうですよ、まさかこの村で菓子を作ってくれというのですか」


「ええ、村でもお菓子を売り出したいなと思っていてね」


「それは構いませんが、菓子作りには砂糖が欠かせません、砂糖は高級品ですよ」


「私が提案したいのは塩味のお菓子なんだけど」


オルライトが提案しているのは甘い菓子ではなく、塩味の菓子。

以前冬夕から聞いた日本にあるお菓子の話。


日本には塩味のお菓子というのも珍しくなく存在しているという話だ。


「とある異国には塩味のお菓子があるらしいの、それを作れないかなと思ってね」


「塩味のお菓子ですか、確かにそれなら砂糖を使わずに作る事も出来るとは思いますが」


「塩味のお菓子にもいろいろあるんだけど、村の食材で気になったものはあるかしら」


「菓子作りは基本的には小麦なのですが、米は面白そうだとは思いましたね」


「お米、それならお煎餅とかみたいな米菓がいいかしら」


米菓、文字通り米を使って作る菓子だ。

日本で言うところの煎餅やあられやかき餅といったもの。


そういうものを作れないかという話になっていくようではある。


「それで実際に作れそうかしら」


「やってみないと分かりませんが、やり方さえ理解すれば出来るとは思います」


「なら米菓に決まりね、とりあえず試作品が出来たら持ってきてね」


「とはいえどのようにして作るのでしょう」


「聞く限りでは焼き菓子らしいわよ、炊いたお米を成形して焼くんですって」


煎餅は焼き菓子である、成形した米に味付けして焼いて作る。

なので焼くのに使う設備が必要だ。


とはいえオーブンで焼くものとはまた違うのだが。


「お米のお菓子とかは作った経験は流石にないのよね?」


「経験はないですけど、やっているうちに覚えていくとは思いますよ」


「でも王都でお菓子を作っていた人がなんでこの村に来たのかしら」


「少し客と揉めてしまったんですよ、それでオーナーにクビにされまして」


「客と揉めたって何があったのかしら、殴ったとかかしら」


彼が客と揉めた事で店をクビになったという。

揉めた原因については分からないものの、何かしらのトラブルなのは確かだろう。


それもありこの村に来たのだという。


「揉めた理由については無理に話せとは言わないけど、少し気になるわね」


「この件に関しては相手に落ち度があると思っていますよ、そういう事です」


「相手が貴族とかの上客だったという事なのかしら」


「少なくともこっちは注文を受けただけなので」


「ふーん、こればかりは難しそうね」


その菓子職人が客と揉めた理由はあえて聞かない事にした。

彼曰く、注文通りに菓子を作っただけだという。


恐らくドタキャンでもされたのかという事ではないかと思うが。


「あと一人でやらせるのは流石にきついと思うし、人手が必要なら言ってね」


「分かりました、教えれば覚えてくれそうな人を用意してもらえれば助かります」


「ええ、とりあえず食材については言われれば用意するからね」


「それにしても塩味の菓子ですか、菓子は甘いものだと思っていたので驚きましたね」


「塩味のお菓子ってあまり聞かないものね」


こちらの世界でも異国に行けば塩味のお菓子はあるらしい。

とはいえこの国において塩味の菓子は珍しいものである。


なんにせよ、煎餅などが作れるようになればまた新たな名物が出来そうである。


「それにしてもお菓子を作れる人が来てくれるなんて、嬉しいわね」


「まあクビになった人ではありますけどね」


「でも落ち度はないんでしょう」


「少なくとも私はそう思っていますよ、あれは完全に相手が悪いです」


「やっぱり作ってからいけなくなったとかなのかしら」


なんにせよ村でもお菓子作りが始められそうではある。

砂糖も用意は出来るが、あえて塩味の菓子を選択する。


塩味の菓子というのはこの国では珍しいからこそ、イケると踏んだのかもしれない。


「設備なんかはもうあるから、いつでも始められるから」


「設備だけはもうあるんですか、なら話は早いですね」


「まずは試作品作りね、いろいろやってみるわよ」


そうして次の計画の名物の菓子作りが始まる。

とはいえオルライトの任期も今年いっぱいで終わる。


それまでに出来る事は全てやろうという覚悟だ。


塩味の菓子は海辺の村だからこそ、美味しい塩が確保出来るのもあるのだろう。

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