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失念していた四年目の始まり

春の足音が確実に近づいてきた季節の変わり目。

そんな中オルライトは完全に失念していた事があった。

四年目はとっくに始まっていたという事を今思い出した様子。

四ヶ月前にはすでに四年目が始まっていたという事である。


「あぁ~、本当になんで失念してたのかしら」


「オルライト様、何かありましたかね」


「えっと、四年目が四ヶ月前にとっくに始まってたっていう事なんだけど…」


そんなオルライトが完全に失念していた事もあり、四年目が始まりすでに四ヶ月目。


いろいろ忙しく仕事に没頭していたせいで、完全に失念していたという事らしい。


「忙しかったせいで完全に失念してたわ、私にしてはやらかしたわね…」


「つまり、領主の就任はとっくに四年目に突入していた、忙しくて失念していたと」


「ええ、だから私の仕事は今年の10月末までなのよ」


「それでお父様から言われた目標は達成出来そうなんですかね」


「よほどの事がなければ達成は出来ると思うわ、ただ目標目前のブレーキはあり得るから」


オルライト曰く、目標達成が目の前に迫った時ほど強いブレーキがかかるのはあるらしい。

実際商売をしている知り合いの貴族なんかも目標達成目前で急ブレーキがかかった事がある。


だからこそ目標は達成してはじめて安堵するものなのだと。


「ただあと少しで目標は達成なのよ、納税額は確実に達成出来ると思うんだけど」


「せっかくなので両方とも達成してやろうっていう事ですかね」


「そのつもりよ、今の村の住民の数は約9800人、お父様の条件まであと200人なの」


「だからこそ慢心は出来ないって事ですかね」


「ええ、ここまで来たからこそ気を引き締めないと」


目標目前で大ブレーキがかかるというのは世界に関わらずあるという事なのか。

以前冬夕が大記録目前で記録を達成出来なかったスポーツ選手の話をしていた。


異世界の話なので、よくは分からなかったが、つまり目的を達成するまで気を抜くなという事だ。


「でも四年目なのね、あの啖呵を切った日からもう四年目なのかと思うとね」


「この四年間で村は信じられないぐらい発展しましたしねぇ」


「国の開発計画の一環とはいえ、私がここまでやったっていうのは自分でも驚きよ」


「しかしいろいろあったものです、今では四年前の村が信じられませんよ」


「バルカも村長としての貫禄が出てきたわよね」


村の村長はあくまでもバルカである。

オルライトは領主代行である、領主の館があるのがこの村というだけの話。


とはいえオルライトも前の領主も村人には慕われているので、人のよさは確実にあるのか。


「とりあえず四年目は村に建築する施設とかも含めて大詰めになりそうね」


「学校や宿、他にもいろいろやってますよね」


「ええ、もし私がここを去ったとしても大丈夫なように引き継ぎの書類なんかもまとめないと」


「村の人達はオルライト様に続けて欲しいっていう声が多いですよ」


「前の領主も慕われてたみたいだけど、病気なら仕方ないと思うしねぇ」


前の領主は病気の悪化により療養のため仕事を退いている。

それもあり仮にオルライトが領主の仕事を辞めた場合はまた新しい領主が来る事となる。


領主の仕事は基本的に国内の貴族から選ばれる事にはなるのだが。


「でも村の人達はみんないい人で本当によかったわ」


「前の領主様もそうですけど、田舎の村とか馬鹿にせずにきちんとやってくれたのが大きいかと」


「そうね、前の領主が病気の療養に入るタイミングで開発計画が始まったし」


「この村の開発の責任者もオルライト様に任せたわけですからね」


「そう考えると、私の言い分を飲む条件として体よく使われた感じはあるわね」


オルライトが婚約を解消する条件として提示されたのが村の領主代行。

開発計画自体は始まる事は確定していたので、ちょうどいいタイミングだったという事か。


なんにせよオルライトに与える試練として開発の責任者を任せたという事なのかもしれない。


「でも完全に失念してたとはいえ、四年目なのねぇ」


「村の人達はオルライト様が今後も領主を続けてくれるのが一番嬉しいんですよ」


「そうね、約束は出来ないけど、正式な打診が来たとしたらその時は迷わずに受けるわよ」


「約束は出来ないんですね、まあこればかりは仕方ないですか」


「ええ、ただ結果で示せば打診自体は来ると思うけれどね」


オルライトも約束は出来ないが、打診があるのなら喜んで受けるつもりらしい。

それはつまり打診さえ来れば正式に領主になるつもりはあるという事だ。


ただ約束は出来ないという事だけは念を押しておくが。


「とにかく四年目ね、本気で出来る事はやっていかないとね」


「最後のスパートという事ですかね」


「ええ、そのつもりよ、村人や工業なんかも総力戦で行くからね」


そんな完全に失念していた四年目の始まり。

とっくに四年目は始まっていたが、忙しさで忘れていた。


オルライトにしては珍しいミスだが、それでも四年目の動きはとっくに始まっている。


最終年は持てるものや出せるものは惜しみなく出していく事となる。

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