ハイランダーと交渉
盗賊達の事はバルカ達に任せハイランダーとの交渉に向かうオルライト。
ハイランダーの国はヒューゲルベルク領の山の上にある。
それにより馬車では国まで直接行く事は出来ない。
なので徒歩で山を登るか麓にある街から渡し船を使うかになる。
「それじゃ私はここから街に向かうわ、お金は渡したから帰りもよろしくね」
「はい、こっちの宿にいますので仕事を終えたら名前を出してください」
「分かったわ、それじゃ帰りも頼むわね」
そのままオルライトは山の麓にある街へと入っていく。
その街はハイランダーの間で盛んな剣闘が行われるコロシアムもあるようだ。
「麓の街にはコロシアムがあるのね、ハイランダー独自の文化って事かしら」
「お嬢さん、上の街に行く人かい?」
「あ、ええ、あなたが渡し船の船頭ね、街まで頼めるかしら」
「はいよ、少し揺れるからしっかりと踏ん張っておきな」
「ええ、分かったわ」
そのまま小船に揺られ山の上の街へと川を上っていく。
上流に向けて船を漕げるのもハイランダーの強さか。
街に着いてからは船頭にお礼を言い交渉相手の屋敷に向かう。
「失礼します」
「お待ちしていました、あなたがオルライト殿で間違いないですね」
「はい、今回は鉄鉱石や繊維などを売ってもらうための交渉に参りました」
「それなら相応しい者がいます、そこの者にベルクスの屋敷に案内してもらいなさい」
「かしこまりました」
国王曰く国王が信頼する商家の者がいる、それがベルクスという人らしい。
国王からの紹介とあれば交渉にも出てきてくれるだろうと。
そのまま屋敷へと案内される。
「失礼します」
「お待ちしていました、国王から紹介をされたベルクスと申します」
「はい、それで今回交渉をしたいのは主に鉱石や繊維などになるのですが」
「そうですね、取引相手として相応しいかどうかはあなたがどこまで誠意を見せるかですが」
「誠意ですか、では鉱石と繊維をそれぞれ単価でこれぐらいでどうでしょう」
オルライトが示した金額は主な市場価格の約倍の金額。
この手の市場価格などは詳しくないというのは本人の弁。
とはいえ相場の倍を提示してくるのは今に始まった事でもなく。
「安かったですか?」
「いやはや、まさか相場の倍を提示してくるとは、ふっかけるつもりがふっかけられましたね」
「それはつまり?」
「取引相手としては問題はないでしょう、優先して鉱石や繊維をお売りしますよ」
「ありがとうございます」
その提示した金額にふっかけるつもりがふっかけられたというベルクス。
それにより優先して鉱石や繊維を売ってくれるという。
ベルクスは自前で鉱山や綿花の畑を所有していて完全な独自供給が出来るのだという。
「とりあえずは失礼がなかったようで安心しました」
「そうだ、よければ私の知り合いも一緒に連れて行っていただけないでしょうか」
「知り合い?どのような方なのですか」
「ハイランダーの武人なのですが、もっと世界を見たいと言っていましてね」
「なるほど、なら会ってからでもよろしいですか」
一応会うだけ会ってみる事にした。
ベルクスの言うハイランダーの武人。
若者なのか、それなりの歳の人が出てくるのか待っているとベルクスが彼を連れてくる。
「そちらの方ですか?」
「あんたは他国の貴族様か、俺に外の世界を見せてくれるのか?」
「それもあるけど、武人って事は戦いの技術も優秀という事でいいのよね?」
「当たり前だろ、これでもこの国じゃ三番目ぐらいには強いんだぜ」
「なるほど、なら村の人達にその技術を教えてもらう事は可能かしら」
オルライトが持ち出したのは村の守りを固める上での技術を教えて欲しいという事。
それだけの人に教われば少なくとも守りの技術を高める事は可能だ。
それに対して彼の反応は。
「駄目かしら」
「ははっ、面白い女だな、いいぜ、それも面白そうじゃねぇの」
「ならよろしく頼むわね、あと名前を聞いていないわ」
「俺はガウル、よろしくな、面白い貴族様」
「ええ、よろしくね、ガウル」
そんなガウルもベルクスの計らいにより一緒に来る事になった。
この国でも三番目ぐらいには強いという武人。
村の自警団を鍛えるには最適な人材だとオルライトは踏んだようだ。
「そういえばガウルは人に教える事は出来るのかしら」
「出来なくはないと思うぜ、まあ上手く伝えられるかは分からないけどな」
「そう、聖宮騎士団の事もあるし、村の守りはいろいろやらなきゃね」
「強い奴がいたら教えてくれよ、そいつと戦ってみたいしな」
「ええ、分かったわ」
とりあえず話はまとまった。
一日この街に滞在し、明日にはベルクスとガウルを連れて村へと帰還する。
ベルクスは村に滞在して商売をする気らしい。
「ベルクスもお世話になるわね」
「はい、ついでに村の財布の紐も握らせていただきますよ」
「あまり緊縮財政にだけはしないようにお願いするわね」
ベルクスが村の金庫番にもなってくれるということ。
その一方でオルライトは私財をガンガン投入してくる。
それはお金を出せる時には惜しまず、必要な場所への投資も惜しまないという事。
ベルクス自身元々投資によってその財を築いたからこその商家なのだから。




