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春になったら

少しずつ暖かくなり春の足音が聞こえ始めてきた季節。

とはいえまだ冬の寒さは続くので油断は出来ないもの。

来月にはもう春が始まり、四年目の始まりはすぐそこまで来ている。

四年目が終わった時にオルライトの運命が決まる日がやってくる。


「そういえば条件ってもう達成は目の前なのね」


「それってオルライトが婚約を解消してもらえる条件だっけか」


「そう、今の村の住民の数は約9700人、税金の納税額も約980万になったから」


今のオルライトの目標達成条件はほぼゴールは見えてきている。


とはいえあと少しになったところから突然数字の伸びが遅くなる事はありえる話だ。


「そういえばフユの世界も春は近づいてきてるのよね」


「ああ、来月にはもう季節の上では春になるよ、すぐに暖かくはならないけどな」


「春の味覚とか何かあったりするのかしら?」


「春の味覚ねぇ、春キャベツとかたけのこなんかは春の味覚では定番だな」


「キャベツは分かるけど、たけのこってなんなの?」


こっちの世界にも竹という植物はある。

もっともこの近辺には生えていないので、見る機会は少ない。


そもそも竹林が珍しいので、オルライトも図鑑で見た事がある程度だ。


「たけのこっていうのは竹っていう植物の事でいいの?」


「ああ、竹が成長する前、だから竹の子ってわけだな」


「なるほど、たけのこって美味しいの?」


「水煮にしたり、米と一緒に炊いて食べたりしても美味しいな」


「ふーん、つまり柔らかくして食べる食べ物っていう事でいいのかしら」


たけのこは基本的に柔らかくして食べる食べ物ではある。

なので煮たり炊いたりなどで食べる事が多い。


なおたけのこは若いうちに掘り起こさないと成長してしまうが。


「でも竹って食べられたのね、この世の中は意外と食べられる植物って多いのかしら」


「ラーメンによく入ってるメンマなんかもシナチクだしな」


「竹は成長したら食べられないけど、若いうちなら食べられるっていう事なのね」


「こっちの世界にも竹ってあるのか?」


「あるわよ、まあこの近くに生えてる場所はないけど」


竹は存在しているが、この近辺に生えている場所はない。

春になるとたけのこが出てくるのでそれを掘って食べるのが日本でもある。


一年を通して食べられるものにも旬というものは存在するのだ。


「でも春になったら四年目なのね、もう四年目と考えるべきなのか」


「四年目の終わりまでに親父さんから出された条件をクリアしろって話だろ」


「そうよ、どっちか片方クリアすればいいっていう話ではあるんだけど」


「貴族っていうのは大変なんだな、そんなに結婚したくないのか」


「私の我儘なのよ、だからこの仕事の結果次第っていう条件だけでも温情なのよね」


オルライトの父親も婚約解消をするには何かとすべき事は多いという事なのか。

貴族同士の話には何かと難しいものもある。


なので話をまとめている間に実績を積んでみせろという事なのかもしれない。


「でもフユも学校の卒業が近いんじゃないの?」


「アタシは大学二年だから、来年もあるっての、進級だよ」


「フユって大学生だったの!?」


「言ってなかったか?まさか高校生だと思ってたのか?」


「学生としか聞いてないわよ、それに制服着てるから高校生だとばかり」


冬夕はこれで大学生である。

学生服を普段から着ているのはただの趣味という話らしい。


高校の時の制服を今も着続けているという趣味の話なのだとか。


「まさかフユが大学生だったなんて驚きだわ」


「そんな驚くような話かよ、まあ制服を今でも着てるアタシが悪いのか」


「でもフユの世界だと新年度は春からなのよね?」


「そうだよ、こっちだと基本的には秋からなんだっけか?」


「ええ、学校や会社なんかは多くは秋から新年度ね」


こっちの世界では多くは秋に新年度が始まる。

ちなみに領主などの統治の仕事については例外もある。


統治の仕事は就任した日がそのまま一年の新年度となる。


「それにしてももう四年目の始まりが目の前に迫ってきてるのねぇ」


「もし条件をクリア出来たらその時はどうするつもりなんだ」


「今は決めてないけど、必要とされるなら正式にこの村の領主になるかもね」


「オルライトは村人にも好かれてるっぽいしな」


「前の領主様も今でも村人に心配される程度には人気だったみたいだけどね」


オルライト曰く前の領主様も人柄はよく、今でも村人に心配されているとか。

とはいえ持病の悪化により今は療養中であり、領主の座を下りる事はほぼ確定だという。


その時にオルライトが正式にこの村の領主になるかどうかという事なのだと。


「春が来てまた新しい一年が始まるのね」


「アタシもこの村に来るようになって三年目か」


「なんだかんだでいい友人よね、私達」


オルライトが冬夕に興味を示すのは好奇心とまた異世界という事は大きい。

そもそもオルライト自身が仕事で平民の生活などを直接見た経験もある。


それもあり冬夕のような立場の人にも特に偏見はない。


人というのは経験から来るものは大きいという事なのだろう。

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