冷たい地下水
すっかり夏の暑さが本格化し夏本番となった様子。
それに伴い冷たい水の需要も増えてきたようではある。
夏は冷たい水が必要になる事も多く、涼む方法は何かとある。
だからこそ冷たい水や氷が何かと必要になる季節でもある。
「ここの地下水は冷たくて癒やされるわねぇ」
「海が近いのもあって水は質がいいんですよね、この辺りは」
「でも上下水道がこんな領地の端まで整備されてるのは先人のおかげよねぇ」
村の地下水は冷たくて美味しいとオルライトも太鼓判を押す。
その一方で上下水道が整備されているのも国の尽力があったからこそとも言える。
「それにしても上下水道の整備は領主の力もあるけど、国の力の方が大きいのよね」
「そうですねぇ、インフラ整備なんかは国がまとめ上げて領主に許可を得るやり方ですから」
「その辺りは前の領主様もしっかりと受け入れていたのね」
「まあ水道や街道の整備などはよほどの理由がないのなら断る理由もないですしね」
「それもそうなのよね、この冷たい地下水も水道というものがあるからこそなのよ」
インフラ整備に関しては国がそれを立案し各地の領主に了承を取り付けるもの。
その了承を得てから水道や街道の整備などが行われる。
なお今進んでいる温泉なんかは領主であるオルライトが独自に進めている計画でもある。
「でも地下水ってなんでこんなに美味しいのかしらね」
「地下水に関しては都市部より地方の領地の方が美味しいって聞きますよ」
「そうなの？でも確かにここの水は王都で飲んだ水より美味しくは感じるわね」
「そういう水の美味しさは地方の領地の最大の武器なんでしょうね」
「地方の領地の方が水が美味しい、それって武器になりそうな話ね」
実際地方には整備された都市部に比べて自然も多く残っている。
それにより水も都市部に比べて綺麗なのだという。
なので水が美味しいというのは自然が残っている地方の特権なのかもしれない。
「でも水の話は初耳だったわね、バルカはそういうのに詳しいのかしら」
「詳しいってほどじゃないですね、ただ観光客なんかも水が美味しいってよく言ってますよ」
「なるほど、そういうものなのね」
「ええ、実際都市部から来る旅行客なんかは水が美味しいとよく言ってますので」
「水質とかはよく分からないけど、水が美味しいのも立派な武器なのね」
バルカ曰く観光客や旅行客なんかも地方の領地の水は美味しいと言うそうな。
それにより他の領地でも地方は水が美味しかったと聞いたらしい。
都市部の水が決して不味いという事ではなく、都市部に比べて美味しいという事のようだ。
「夏はこの美味しい地下水が本当に喉に染みるわね」
「この水で冷たいお茶とか淹れられたりしませんかね」
「冷たいお茶ね、そういえばフユの世界だと冷たいお茶は一般的らしいけど」
「冷たいコーヒーの研究は進んでましたよね？ならお茶も一緒にやってみたらどうです？」
「いいわねそれ、夏は冷たいお茶が美味しい季節になるもの」
以前冬夕に聞いていたアイスコーヒー。
それは今は研究中なので、実用にはもう少しかかりそうだ。
その一方で冷たいお茶、そもそもお茶もコーヒーもお湯で淹れるものというのは常識なのだ。
「冷たいお茶とかアイスコーヒーってどう淹れるべきなのかしらね」
「茶葉やコーヒーの粉は水だと美味しくならないですしねぇ」
「だとしたらあらかじめ温かく淹れたものに冷水や氷でも入れるべきなのかしら」
「それか温かく淹れたお茶やコーヒーを冷蔵庫に入れて冷やすとかでしょうか」
「冷蔵庫もこの村では割と普及してきたし、それが無難なのかしらね」
冷たいお茶やコーヒーに関しては茶葉や粉末が水では美味しくないというのが壁の様子。
なので温かく淹れたものをあとから冷やすというのが最適解なのかもしれない。
その辺はいろいろ研究の余地があるという事なのだろう。
「水が美味しいんだから、飲水を使って何か産業とか興せないものかしら」
「冷たいお茶やコーヒーは研究が必要ですしね」
「今は研究するしかなさそうね、もっと大量に作れるようになるのが前提かしら」
「それはあるんじゃないかなと思いますよ」
「うーん、美味しい水を使った産業ねぇ」
美味しい水を使った産業も考えるオルライト。
とはいえ冷たいお茶やコーヒーはまだ研究中だ。
その辺はまだこれからという事なのだろう。
「美味しい水っていいものね」
「これが飲めるだけでも地方民の特権ですしね」
「美味しい水は地方民の特権、そこは難しいものね」
そんな美味しい水で何か出来ないかと考える。
とはいえ水は輸送なども面倒なものである。
バルカの言う美味しい地下水は地方民の特権という事。
オルライトもそれは感じているようである。
