技術の進んだ世界
こっちの世界はそろそろ夏になるため、夏服などに変わり始めた。
そんな中先日またそれなりに大きな地震があった様子。
新しい建材を使って建てた建物も増えた事で被害はほぼなかったとの事。
その一方でオルライトはどうやら不思議な経験をしているようで。
「…ここどこかしら?」
「確か、着替えて仕事に向かおうとしてドアをくぐったはず…」
「とりあえず動いてみるしかないのかしら」
どこかで見た光景を経験している様子のオルライト。
街と思われる場所を歩いていると聞いた事のある声がした。
「あれは…フユ!フユよね!」
「ん?げっ、オルライト!?なんでここにいるんだよ!」
「よかった、ここはどこなの?気がついたらここにいたんだけど」
「ちょっと待て、いいからこっちに来い」
「ちょっ、どうしたのよ」
そのまま冬夕に引っ張られてどこかへ連れて行かれるオルライト。
そこはどうやら冬夕が暮らしている家らしい。
ちなみに冬夕は田舎から出てきている都会暮らしで、一人暮らしである。
「ここはもしかしてフユの家なのかしら」
「そうだよ、とりあえずこれに着替えろ」
「これはもしかしてフユの私服?いいの?」
「いいからさっさと着替えろ、いいな」
「ええ、そう言うならそうするけど」
そのまま冬夕の私服に着替えるオルライト。
仮にもアイドルをしているという事もあり、センスはそれなりにいい。
どうやら今日は休日らしく、冬夕も仕事は休みの日らしい。
「それでなんだけど、もしかしてここはフユの世界なのかしら」
「オルライトが飛ばされてきたって事はそういう事だろ」
「ふーん、確かに知らない建物や乗り物があったり、美味しそうな匂いとかもするはずね」
「でもなんでオルライトがこっちに来てんだよ、なんかあったのか」
「何か…そういえば先日大きめの地震があったわね」
冬夕がオルライトの世界に迷い込んだ時も少し前に大きな地震があった。
もしかしてその地震のせいで異世界に迷い込んでいるのか。
帰る方法は分からないので、しばらくこっちの世界で様子を見る事にした。
「そういえばお腹が空いたわね、朝食を食べ損ねてたから」
「はぁ、ならなんか食いに行くか、自炊で作ったもんを食わせるわけにもいかないし」
「フユって自炊する人なの?偉いわね」
「別にいいだろ、なんか食いたいもんがあるなら言え」
「何があるか分からないから、フユに任せるわ、本当になんでもいいから」
とりあえずそのまま家を出て近所の飲食店を見て回る。
そこで入ったのは牛丼チェーンだった。
注文のしかたなどを説明して好きなものを食べる事にした。
「美味しいわね、こっちの世界だとこれが標準なの?」
「世界基準で見るとこの国が異質なだけみたいな話は聞くけどな」
「ふーん、でもこんな美味しいものが普通に食べられるなんて凄いわね」
「にしてもオルライト、お前結構食うんだな」
「しっかり食べないと仕事にならないもの」
オルライトは普通に大盛りを頼んでいてそれを綺麗さっぱり平らげている。
領主代行とはいえ、結構な仕事量だからなのか。
なお冬夕と一緒にいるとオルライトに視線が集まってくるのは言うまでもない。
「さて、元の世界への帰り方も分からないしどうしたものかしら」
「あたしのスマホに仕込んだ転送魔法みたいなのはこっちではどうにもならないしな」
「またドアをくぐったら元の世界にいるとかないのかしら」
「そんな都合のいい話があるかよ、それってつまり転送ポイントが出来てるって事だろ」
「そうなのよね、どうしたものかしら」
帰る方法は分からないままである。
魔法みたいなものは当然ないので、技術でどうにかするのも難しい。
冬夕は不規則にオルライト側の世界に転送されるが、オルライトはどうなるのか。
「とりあえず帰る方法が分かるまでお世話になっていい?」
「そう言われても、アタシも学校や仕事があるしな、常に一緒にはいられないぞ?」
「なら一人で街を見て回ったりしてもいい?」
「そう言われてもなぁ、金の問題とかどうするんだよ」
「お金は確かにないわね、フユからもらうにしても限界はありそうだし」
こっちで帰る方法を探すにしても、冬夕は常に一緒にいられるわけではない。
学校や仕事があるし、友人との付き合いなどもある。
オルライトにお金などを渡して好きにさせるのもそれはそれで不安が大きいのだ。
「ん?待って、クローゼットが何か光ってない?」
「マジだな、とりあえず開けてみるか」
「…これもしかして世界を移動するゲート的なものかしら」
「入ってみるか?」
「一応元の服に着替えてからね」
元の服に着替えてクローゼットの中に発生した光の中に飛び込んでみる。
気がつくとそこはオルライトの私室だった。
どうやら元の世界に戻ってきたようである。
「…ここは私の私室?クローゼットも特に変わりはないわね」
「あれは夢だった…という事もなさそうね」
「とりあえず少し個人的に調べてみましょう、今は仕事が先だわ」
そうして元の世界には帰ってこられたオルライト。
冬夕がオルライト側の世界に迷い込んだ理由、オルライトが冬夕側の世界に迷い込んだ理由。
つまり双方がそれぞれの世界に行けるようになったとの事なのか。
オルライトはその世界移動について個人的に調べてみる事にしたようだ。




