魚の試食
服屋の人達の一部が村に移ってきてから数日。
店舗兼工房は問題なく稼働しているようで、設備もきちんと揃えてくれた様子。
建物だけ作っても設備がなければ稼働する事は出来ない。
設備は全てオルライトのポケットマネーであり、建築費だけが村持ちだ。
「オルライト様、以前のバルカ様よりの依頼の魚が届いています」
「分かったわ、とりあえず出来る調理法はなるべく試してくれる」
「かしこまりました、では少々お待ちください」
先日のバルカから頼まれていた海側の人達からの頼み。
それは網にかかるが市場に出回らない魚をどうにか出来ないかというもの。
「お待たせしました、大体は試してみたので試食をお願いします」
「ええ、それじゃいただくわ」
「どうでしょうか」
「うーん、味は悪くないけど調理して食べるにしては結構淡白な味ね」
「なるほど、他にも食べてみてください」
一通り食べてみた感想はどれも不味くはないが、淡白な感じの味という事。
つまり味が薄い感じなので、そのまま食べても味を感じにくいという事か。
なので他の使い方を考えなければならないという事になる。
「それで何かに活用したり出来そうですかね」
「うーん、少なくとも煮たり焼いたりして食べるには味が淡白すぎるわ」
「つまり他の使い方を考えてそれが出来れば可能性はあると」
「ええ、とりあえずしばらく保留にしておくように伝えてくれる」
「かしこまりました」
とりあえず解決策は今は出ないまま保留という事になった。
オルライトは今日の執務は終えているのでそのまま村の様子を見に行く事に。
魚についても一応今の状況を報告しておく事にする。
「バルカ、例の魚の件なんだけど」
「何か解決策とかは出ましたかね」
「とりあえず試食はしたんだけど、あれは煮たり焼いたりする以外の使い方が必要ね」
「つまり普通の魚と同じように食べても美味しくはならないという事ですか」
「ええ、だからもうしばらく保留にさせてもらってもいいかしら」
魚の件はしばらく保留にしたいというのが現時点での答え。
そのまま食べても美味しくないという事は干物などにしても美味しさは期待出来ないという事。
なので加工するにしてもまた別の加工法を探さねばならないのだ。
「とりあえず今は現状維持だと伝えておいて、解決策が出来たらまた言うから」
「分かりました、ではそう伝えておきます」
「あと魚が必要になったらその時はまた用意してね」
「はい、そう伝えておきます」
「それじゃ私は他を見に行くから」
そのまま他の今の住民たちの様子を見に行く。
移住してきた住民達も今は不満もなく暮らしているようではある。
とりあえずは村の環境をよくしていく事も考えねばならない。
「設備や工房の方はどう?問題ないかしら」
「ええ、特に問題なく稼働しています、村で作られる繊維もなかなかにいいものですし」
「そう、ならとりあえずはよかったかしらね」
「はい、なので今はしばらくこのままで問題はないかと」
「分かったわ、開拓が進んで必要なら増築や新設もするから、その時は陳情してね」
今は村の規模からしてもこれ以上の増設や新設はしない方がいい。
とりあえずまたしばらく村の住人を増やし、開拓を進める事が先だ。
そして同時にドワーフやハイランダーとの交渉にも行かなければならない。
「あら、ベルーゴ、何か新しい調査結果でも出たかしら」
「あ、はい、この辺りの湿地なんですが、乾燥させてしまえば開拓が可能なようです」
「湿地を乾燥させるって、そんな事…いえ、出来るかもしれないわね」
「湿地ではありますが地質は悪くないので、水辺や水源としても使えそうですね」
「分かったわ、そっちは相談してみるから」
その話を聞いて何かを閃いた様子のオルライト。
そのままダークエルフ工房に向かう。
そこで一つ相談を持ちかける。
「湿地を乾燥させられるぐらいの熱を発する魔法の道具ですか?」
「ええ、出来るかしら」
「出来なくはないと思います、ただ材料の確保と製作期間で最低でも二ヶ月はいただかないと」
「分かったわ、なら村の人達に材料を用意させるわ、揃い次第製作を開始して」
「分かりました、では用意が出来次第始めさせていただきますね」
とりあえず開拓に必要な道具の製作を依頼しておく。
今の設備などはどこも問題なく稼働している様子。
その流れで新たな住居の建築も依頼しておいた。
「オルライト様、移住を希望する約1000人ほどが書簡を送ってきましたが」
「1000人とはまた一気に来たわね、とりあえずすぐには無理とだけ返してくれる」
「かしこまりました、では住居などの確保が出来次第移住を認めると返しておきます」
新たな移住希望者が1000人来たという報告。
その人達は住居などの確保が出来次第移住を許可する事となる。
またドワーフやハイランダーとの交渉にも行く予定も組む。
魔法の道具はもう少し先になりそうだ。




