適応力の高さ
春の陽気も気持ちよく仕事をしていると眠くなる季節。
そんな中でも村の産業は少しずつ発展していく。
オルライトの婚約破棄のためにも目標に向けて少しずつ進んでいく。
村の巡回も忘れずにしておくのが領主としての日課である。
「あら、野菜なんかは順調に育っているのね」
「これはオルライト様、ええ、春野菜が美味しい季節ですよ」
「野菜は苦手だけど、美味しい野菜っていいわよね」
そんな野菜を見ているとエルフは菜食な種族だと感じ取る。
その一方でエルフの食文化についても少し気になっていた様子。
「そういえばエルフって基本的には菜食主義でいいのかしら」
「基本的にはですね、エルフは適応力の高い種族ですから」
「つまり動物性のものも食べられないっていうわけではないのね」
「はい、外の世界に出るとその環境に適応していくのもエルフですから」
「適応力が高い種族だったのね、エルフって」
エルフは環境に適応して生きていく種族。
なので外の世界に出れば動物性のものも食べられるようになる。
という事もあり、村のエルフは肉も卵も乳も食べられるようになっている。
「つまり今は村のエルフ達も動物性のものは食べられるの?」
「食べられますね、美味しくいただいていますよ」
「へぇ、エルフの適応力って凄いのねぇ」
「エルフはそもそも弓を得意とするので筋肉がそれなりに付いていない始まらないんです」
「その筋肉をつけるためにタンパク質が必要って事なのね」
エルフは弓を得意とするのでそれなりに筋肉が必要なのだ。
タンパク質は菜食主義のエルフは大豆から摂っている。
外に適応したエルフはしっかりと肉から摂るようだが。
「エルフの意外な生態を知った気分だわ」
「エルフが菜食というのは別に間違いでもないんですけどね」
「ポイントなのは環境に適応して動物性のものも食べられるようになるという事なのね」
「ええ、そういう事です、そこは勘違いもされやすいんですけどね」
「まあそうよね、ステレオタイプのイメージってどうしてもあるもの」
エルフに対して人間が抱いているのもステレオタイプのイメージでしかない。
実際はそんな事もなく、環境に適応していくという事なのだ。
エルフという種族にも複雑なな何かがあるという事ではある。
「そういえばエルフが肉を食べてるのも見たわね、そういう事だったのね」
「はい、ダークエルフが育てている牛や豚は美味しいんですよね」
「そういえばエルフとダークエルフって仲が悪かったりするの?」
「そんな事はないと思いますよ、ただ考え方は真逆ですが」
「ふーん、そういう関係についてはそこまで悪くもなかったのね」
エルフとダークエルフは不仲というわけではない。
そうでもなければ同じ領地に隣り合って暮らしてはいないだろう。
だからこそお互いにその得意な分野で協力してくれているのかもしれない。
「でもエルフの育ててる野菜類が美味しいのも納得だわ、菜食主義だからこそなのね」
「そうですね、そういえばフユ殿から聞いた根菜類なんかも今はやっていますよ」
「根菜類?それって根の部分を食べる野菜って事かしら」
「はい、人参や大根も根菜類らしいですが、ごぼうというのを今は試しています」
「ごぼう?それも根菜なのかしら」
こっちの世界ではごぼうというのはそれこそ食べないものなのだとか。
冬夕から話を聞いて、実際にやってみようという事になったらしい。
ごぼうは木の根にしか見えないという事もあり、エルフも最初は驚いたという。
「でも根菜ね、私は野菜ってどうにも苦手なのよね」
「野菜というのは鮮度が大切ですし、美味しい食べ頃というのもありますから」
「へぇ、そんなものなのね」
「根菜類は汁物にすると美味しいと聞いたので」
「ふーん、根菜は汁物、美味しいならなんでもいいわ」
オルライトも野菜は苦手ではあるが、食べられないという事ではない。
なので美味しく調理すればきちんと食べてくれるレ。
なおグリーンピースだけはどう調理しても無理らしい。
「でもいろんな料理が試せるのはいいものね」
「フユ殿の教えてくれるレシピはどれも美味しいから助かってますよ」
「確かに美味しいわよね、異世界の料理ってあんなに美味しいのよね」
「調理法や調味料の使い方がそもそも違うのかもしれませんね」
「なるほど、そういう理由だとしたら納得かしら」
冬夕が教えてくれる料理の美味しさ。
それはそもそも調理法や調味料の使い方がまず違うのか。
そうした理由だとしたら料理は奥深いものである。
「とりあえず何かあったら遠慮なく言いに来ていいわよ」
「はい、収穫物なども何かあれば報告しますね」
「それじゃ私は仕事に戻るわね」
オルライトも野菜は苦手だが食べられはする。
そんなエルフの作る野菜類はどれも美味なものである。
美味しい野菜というのはきちんとした食べ頃に食べるからこそ。
エルフは外の世界に適応する事で動物性のものも食べられるようになるのだ。




