新進気鋭の服屋
次はドワーフとの交渉に臨む事を計画しているオルライト。
一方で先に服をどうにかしようと考えベルに勧められた相手に会いに来ていた。
相手は新進気鋭の服飾ブランドのヴィクトリエル。
服飾関係の施設をマグルと大工達に建築を頼んだ上で交渉にやってきた。
「ここね、ベルの言っていたヴィクトリエルドレッサーって」
「新しいブランドとは聞いてるけど、それなりにいい建物ね」
「さて、行くわよ!」
ヴィクトリエルドレッサー、新進気鋭の服飾ブランドの本店。
新進気鋭とは言うが今の店舗は本店のみのそこまで大きくない規模でもある。
「お待ちしていました、オルライト様」
「あなたがオーナーでよろしいかしら」
「いえ、私は主に営業を担当している副オーナーです」
「副オーナー、分かりました、では用件はすでに伝わっていますね?」
「はい、あなたが領主代行をしている村の産業に出来ないか、という事ですね」
事前の連絡で簡単には伝わっている。
その上で改めてその目的と理由を話す。
もちろんヴィクトリエル側もなめてかかるのならすぐに断るつもりでいる。
「村の産業にしたいという事でしたが、まず店舗や作業所は用意していただけるのですよね?」
「もちろんです、必要とあらば増築も含めて近いうちに完成する予定です」
「ほう?それはなかなか強気に出ますね」
「村の周辺はまだ開拓の余地があります、開拓次第ではそれらを増やす事も出来ます」
「ふむ、店舗と作業所を一軒だけに留めず必要ならばさらに建ててくれると」
店舗や作業所は開拓次第ではさらに増やす事も出来る。
その上でいくらほど出せるかという話になる。
新進気鋭とは言うものの安い金でこき使われるのならば破談になる。
「ここの者達はみな自分の作るものに自信を持っている、見合ったものは用意出来ますか?」
「正直相場にそこまで詳しいわけではありません、ですがこれぐらいなら出せます」
「ふむ、本当に相場に詳しくない人の提示する金額ですね」
「安すぎましたか?もっと出した方がよかったでしょうか」
「はははっ、そうではなく我々をここまで高く買ってくれたという事ですよ」
オルライトは職人や技術者の相場についてはそこまで詳しくない。
なので自分に出せる精一杯の金額を提示する。
それは寧ろ相場よりも高い金額が普通に出てきてしまうのだ。
「いいでしょう、そのお話を引き受けさせていただきます」
「本当ですか?では交渉は成立という事でよろしいですね?」
「はい、出せるのはチーフを一人と職人を29人といったところになりますね」
「そんなに貸していただけるのですか」
「これでも我々は学院時代の同好の士の集まり、そしてそこに集まった者も決して少なくない」
ヴィクトリエルドレッサーは学院時代の同好の士の集まりなのだという。
そこに立ち上げに当たって集まった人達もかなりいる。
それは自分達のやりたい事を実現出来るとして集った者達だ。
「それに我々は自分達の持っているものを安売りする気はありませんからね」
「そこは仮にも自分達の作るものに自信を持っているという事ですね」
「当然です、それと明日にはそちらに派遣する人達を合流させますので」
「分かりました、あと作業所などで困った点があれば陳情を出していただければ」
「そうですね、まずその作業所を見た上で足りないものはリクエストさせていただきます」
他の職人や作業をする人もそうだが、まずは最低限揃えた上でそこから改善していく。
いきなり大規模な施設を建てられるほど開拓はまだ進んでいないからだ。
土地が広がれば建物の増築も楽になるし、そこで働く人も増やせるのだから。
「とりあえずまずはしっかりと働ける環境があればそれでいい、充実は後回しですね」
「ええ、使える土地は確保しているもののいきなり立派なものは建てられませんから」
「しかしオルライト様とはいいお付き合いが出来そうです、これは楽しみだ」
「その時はスポンサーになる事も考えていますので」
「ははっ、ならよろしくお願いしますよ」
そうして交渉はまとまった。
挨拶をしてオルライトは店を出る。
その上で一日滞在し、明日選んでくれた人達と合流する事に。
「さて、話はまとまったし次の予定を決めなきゃ」
「ドワーフやハイランダーとの交渉、それと村の開拓も進めないと」
「一年目が終わるまでまだあるし、とにかくスケジュール詰めなきゃね」
今後の予定も考えつつ今回の交渉の成果は出たと思える。
建物は近いうちに建つであろうから、すぐに動ける。
量産体制が整ったらそこから作れる数を増やしていく方向にシフトする。
まずは使える土地をもっと増やす必要も忘れてはいけない。




