謎の高貴そうな人
春の暖かさが眠気を誘う穏やかな季節。
そんな中でもオルライトは村の発展に必要な計画書などをまとめている。
いつものように街を見に行くと見かけない女の人を見つける。
旅人か何かかなと思い声をかけてみる事に。
「あの、村の住民じゃないみたいだけど、旅人か何かかしら」
「この街、村?の貴族様か?」
「ええ、領主代行のオルライトよ」
見た目は高貴そうなのにやけにガラの悪いその女性。
とはいえ悪い人には見えないのはどこか既視感がある気はした。
「旅人でいいのかしら?」
「旅人っつーか旅が趣味の貴族様だよ、今回も書き置き残して旅してんだ」
「書き置きって、家の方はいいのかしら」
「まああたしは女だし、それも三女だからな」
「あー、だから自由はある方なのね」
そのガラと口の悪い女性は本人曰く貴族の三女らしい。
旅が趣味らしく、たまに書き置きを残して数ヶ月ふらっと旅に出るという。
そして今回はこの村の話題を聞いて面白そうだと思いやってきたとか。
「えっと、念のために聞くけどスパイとかではないわよね?」
「んなわけねーだろ、なら調べるか?それともマッパになればいいか?」
「…スパイではなさそうね」
「それより何か食い物とかの店はないか」
「食べ物ね、ここは海沿いの村だから魚が美味しいわよ、食堂があっちの区画に」
それを聞いたその女性はそのまま食堂に爆走していった。
オルライトもそのパワフルさに呆れ顔だが、ブーメランになるので言わない事にした。
ちょっと気になったのでそのまま様子を見に行く事にした。
「あなた、そんなに食べるの?」
「なんだよ、あたしの事が気になって見に来たのか?」
「まあなんとなくよ、なんとなく」
「ここの飯うめぇな、家でもこんな美味い飯食った事ないぜ」
「そう言ってくれると嬉しいけど」
その謎の女性はこの村は凄いと感じていた。
多種族が様々な産業をやっており、村の開発という事に対して本気だなとも。
そのまま豪快に食事を片付け、そのまま他にも見て回る事にした様子。
「気に入ってくれたかしら」
「ああ、見た事がねぇもんがこんなに溢れてるなんておどろ木ももの木さんしょの木だぜ」
「…見た目と中身が一致しないわね、中身がおじさん臭いというか」
「それで他には何か珍しいもんとかないのか」
「珍しいもの…装飾品とか、服とか、薬とか?」
そういうものにも興味を示したようで、せっかくだから案内してくれという。
時間はあるので、とりあえず案内する事にした。
村のいろんな店などを案内したあとに甘いものでもいただく事にした。
「美味しいかしら」
「この村って甘いものがこんな安く食えるのかよ、砂糖なんて貴族のもんだろ」
「砂糖は確かに高いんだけど、村で作ってる分安く供給出来るのよね」
「マジかよ、砂糖を自分達で作ってんのか」
「ええ、小麦とかも作ってるから、お土産用のお菓子なんかも作ってるわよ」
この村の事については驚きの連続な様子。
特に砂糖やスパイスを村の中で生産しているので安く手に入る事に驚いているようだ。
貴族の三女でありながらこの村でやっている事の規模に驚いているようである。
「いろいろ見てみてどうだったかしら」
「そりゃ驚きばっかだぜ、村っていうより街だしな」
「でも住民の数が街の条件を満たしてないから国の定める定義ではまだ村なのよ」
「そんなもんなんだな、でもここはマジですげぇ、面白さだけでもダントツだわ」
「そう言ってくれると嬉しい限りの話ね」
その女性も村の事は気に入ったようであり、いろいろと興味深そうに見ている。
それはまるで純粋無垢な子供のように目を輝かせている。
オルライトも旅人の評価を聞いてとりあえずは安堵しているようである。
「それにしても貴族なのにずいぶんと自由なのね」
「まあ貴族といっても三女なんて政略結婚の道具にしかならねぇしな」
「その辺はある程度の諦めがあったりするのかしら」
「どうだろうな、あんたは女なのに領主代行なんてめっちゃすげぇと思うよ」
「私は結婚したくないから、ここで結果を残せば婚約の話がなくなるからやってるのよ」
その話にその女性も腹を抱えて笑っていた。
そんな理由で領主代行をしている上に、ここまでの発展を実現させた。
それはただ結婚が嫌なだけなら出来ない事なのだと。
「でも満足してくれてるならやっぱり嬉しいわ」
「ああ、あたしは数日ここに滞在するから、時間のある時にでもまた案内してくれよ」
「ええ、時間があればね」
そのガラも口も悪い彼女ではあるが、態度は素直で真面目な様子。
オルライトの事を凄い人という評価をしたのも、男社会の貴族の世界だからこそだ。
しかも結婚したくないからやってるという事に笑っていた。
それはどこか眩しく見えたからなのかもしれない。




