使える土地の残り
三年目が始まりさらに村の生産などを拡大する事を計画するオルライト。
まずそのためには工場の建設を進める事となる。
工場の建設のために必要なのはまずは土地の確保だ。
使える土地がどの程度なのか、それについても調べてもらっていた様子。
「報告ありがとうね」
「いえ、まだまだ村を大きくするとの事ですから」
「ええ、それにしても土地もかなり開拓したものよねぇ」
報告を持ってきたのはベルーゴ、マリアナは他にも調査を継続している。
村の土地は元々かなり余ってはいたものの、今は開拓もかなりしたのである。
「それにしても流石は国の機関の人間ね、優秀だわ」
「いえ、まあ管理局から来ているのは二人なのでなかなかに過酷ですよ」
「結構広い土地を二人で調べてるのは正直凄いと思うわよ」
「そう言ってもらえると励みになりますね」
「流石は国の機関だけあって優秀な人がいるって思ったわよ」
ちなみにマリアナもベルーゴも管理局に入ってから数年目の新人である。
最初にベルが連れてきた時は入ってから二年目の新人だった。
管理局側もいい経験になるのではと踏んだのか、オルライトに託したところもあるのか。
「それにしてもあなた達みたいな新人にはいい経験になってるんじゃない」
「ええ、僕達みたいな新人に開拓の手伝いが出来るのは光栄至極ですよ」
「でも海沿いとはいえ領地の端っこのさらにさらに小領地なのはどう思ったの」
「そうですね、国の端、辺境や海沿いはそれこそエリートの証だと思います」
「まあ辺境伯ってそれこそ国境を任されるから、信用のある人にしか任せられないものね」
海沿いや辺境というのはそれこそ敵が攻めてくる最前線でもある。
なので辺境伯というのは信用のある人に任せるのがどこの国でも共通なのだ。
突然隣国などが攻めてくるとしたらまずは辺境や海沿いが最初の戦場になるからだ。
「私も辺境の領地の大切は分かってるから責任重大よねぇ」
「ここは海沿いですからね、隣国が攻めてくる可能性に加え海賊の存在もありますし」
「ついでに陸地には山が多いから山賊や盗賊も警戒しなきゃいけないしね」
「海と山が多い土地の村はそれだけどこから敵が来るか分かりませんからね」
「盗賊や海賊は労働力として引き込んだけど、他にも盗賊や海賊はいるものね」
村の土地が開拓され今はかなり豊かになった。
山賊や盗賊、海賊などは本人達にその意思があるなら受け入れる覚悟はある。
実際今村に引き込んだ盗賊と海賊達は労働力だけでなく知識も役に立っている。
「それにしても使える土地は思ってるよりも使ったと思ってたけど」
「元々土地自体はあるんですが、持ち主が村から出ていったりとかはあったんですよ」
「つまり持ち主不明になっている土地が多かったのよね」
「ええ、しかし開拓のためとはいえ全部私財で買い叩いた時は驚きましたよ」
「私もここに来る前からいろいろやってて、個人資産だけでも相当持ってるもの」
オルライトは個人資産だけでもそこらの貴族の何百倍は持っている。
なぜそんなに個人資産があるのかというと、そうした勉強はしっかりしていたからである。
幼い頃に多少の元手を運用し、大人になった今ではその運用額が何千倍にもなったのだ。
「まさか子供の時にやってみろって言われた資産運用のお金が今役に立つなんてね」
「資産運用は貴族は基本的にやっていますからね、特に商家なんかは必ずですし」
「貴族は子供の時にお金について学ぶから、そこで投資や運用をやってみる事はあるのよ」
「しかしオルライト様、どれだけ増やしたんですか?」
「子供の時に元手を100万で始めたから、そこから今は数千倍ってところかしら」
子供の時から資産運用をする貴族社会の生存戦略。
貴族の子供でも投資や運用を学び、実際に始める人はそれなりにいる。
なので増え幅はともかくとしても、貴族の子供の多くはかなりの資産持ちである。
「投資や資産運営の勉強は受けていてよかったと思ったわね」
「野生児とまで言われるオルライト様でもそれをしていたというのも意外でした」
「貴族としてはきちんと勉強はしてるのよ、だから個人資産があるのよ」
「ちなみにオルライト様の家の爵位ってなんなんですか」
「私の家?確か侯爵ね、デュークではなくマーキスの方のだけど」
公爵と侯爵の違いは前者が一番上のデューク、後者が二番目のマーキスだ。
公爵の方が貴族としての階級は上であり、オルライトの家は二番目の侯爵だという。
ちなみに基本的には父親がそれになるので、今のオルライトはあくまでもその娘だ。
「とりあえず報告ありがとうね、工場を建てる土地の開拓も考えるわ」
「はい、四年目にその後が決まるまではついていきますから」
「ええ、そう言ってくれると嬉しいわ」
とりあえずは工場を建てるのに必要な土地は確保出来そうだ。
住民はこれからも増える予定なので、その居住の土地も確保せねばならない。
土地を確保し、工場や新たな施設なども建てていく。
生産の最大効率化はここからが本番である。




