注文と生産
春も本番となりオルライトの領主代行も三年目に突入した。
二年目までに村に様々な誘致などをした生産拠点達が本格的に稼働を始める。
それにより外から村への受注がどれぐらい入ってくるかも見る事に。
営業や広報達が国内や隣国などにも徹底的に売り込んだ結果は出るのか。
「あら、また新しい服の研究かしら」
「これはオルライト様、ええ、服というのは流行させるものですので」
「流行させるもの、だから研究して開発して売り込むわけね」
ヴィクトリエルの方も服というのは流行らせるものだと考えている様子。
そして売り込もうとしているのはどうやらスウェットらしい。
「これってもしかしてスウェットっていうやつ?」
「はい、フユ殿から聞いてイメージで作ってみたんですが」
「現物がないから言葉から想像して作るという事ね」
「はい、部屋着としてとても優秀で価格も安く売り出せると聞きましたから」
「そういえばヴィクトリエルは庶民とか平民向けの服も売ってたんだったわね」
冬夕から聞いた話を元にイメージで作ったというスウェット。
確かに言葉の通りの再現はほぼ出来ている様子。
それを再現出来てしまうのも大概ではあるが。
「でもスウェットって売れるのかしら」
「部屋着としてとても優秀とは聞いていますから、外に出ても問題ないそうですし」
「まあそうなんだけど、実際注文とかあったの」
「今のところはぼちぼちですね、とはいえ想像よりは注文いただいていますよ」
「ふーん、平民向けのブランドも展開してるだけはあるのね」
ディミトリアス曰く思っているよりは注文も入っているという。
設備などを整えたからというのは大きいのだろう。
また三年目は工場の建設にも着手し生産効率と速度をさらに上げていくという。
「それはそうと工場も建てようと思うんだけど、ディミトリアスは賛成かしら」
「工場ですか?私は賛成ですよ、生産と販売を別の建物にすれば設備を有効に使えますしね」
「なるほど、そう考えているのね」
「はい、工場があれば今の店舗を大きく使って服を飾ったり出来ますので」
「分かったわ、なら工場は建てさせてもらうわね」
工場の建設はディミトリアスは賛成とのこと。
また注文に関しては貴族向けの方もかなり注文が増えたという。
そこは営業や広報が駆け回った結果なのかもしれない。
「そういえば貴族向けの方はどうなの」
「そちらも注文はかなり増えましたね、営業や広報の血と汗の賜物ですよ」
「なるほどねぇ大したものだわ」
「それにこんな辺境の村だからこそ使えるものに今まで気づかなかったものもありますしね」
「新しい道具とかの発見でもしたのかしら」
ディミトリアス曰く村で使っていた糸や染料に注目したという。
そこには王都では見た事がなかったものもいくつかあったとか。
それについて村の人達に聞き込みをしてそれらを使った服を作る事を決めたという。
「今までは知られてなかったような村で作られてる糸や染料があったのよね」
「はい、特に染料、それを使った染め物はここに来てはじめて見たものでした」
「流石に外に知られてないという事はないと思うけど、村の人があまり遠出しないからかしら」
「その染料を使った染め物を売り込んでみたところ、意外と好評だったそうですから」
「なるほど、試作品を作ってそれを売り込んだという事なのね」
ディミトリアスが言うにはその染め物は村では昔からあるものなのだとか。
ただ村で作る人は昔に比べると減っているのも事実だという。
それを作れる人達が村にはまだある程度は残っているので、そこから教わったとか。
「でもそういう村の伝統みたいなものって残ってるものなのねぇ」
「うちの職人達にそれを覚えさせれば生産も増やせますしね」
「そして営業や広報が駆け回った結果想像以上の注文が入ったと」
「はい、社員達も嬉しい悲鳴を上げていますよ」
「村に昔から伝わる染め物、貴族はお金もあるしそういうのにはポンとお金を出せるものね」
そういう事もあり村で教わった染め物はヴィクトリエルの目玉商品になるかもという。
ディミトリアスもそれを見た時にその美しさに魅入られたのだから。
作り方を知っている人達は多くは高齢である事から、聞けるうちに聞いておくつもりらしい。
「とりあえず生産の効率と数を増やすためにいろいろやらせてもらうわね」
「ええ、工場が出来ればそこで多くの人を雇用出来ますしね」
「なら夏までにはなんとかするから、待っててね」
そうして服飾については工場の建設は決まった。
他の製造などに関しても意見を聞き、多くは工場の建設に賛成だという。
工場が出来れば生産数と効率が大きく上がる。
三年目の本番は工場が建つ事からスタートする。




